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児童福祉

【京都府】

進学や就労に負の連鎖 児童養護施設、退所後の支援必要

京都新聞 2017年12月18日(月)
児童養護施設退所者の困り事
児童養護施設退所者の困り事

 京都市がまとめた児童養護施設退所者の実態調査結果からは、経済基盤の弱さが進学や就労に悪い影響を与える負の連鎖が見えてくる。退所後の家探しや家事負担をはじめ、親との関係改善といった難しい課題を抱えているケースも多い。施設は退所後の有効な支援の在り方を模索するが、道半ばだ。

 4月から市内の食品企業で働く女性(23)は「大学院に行きたかったけど、お金がなくて諦めました」と後悔の念をにじませる。

 高校3年まで6年間過ごした児童養護施設を出て、京都府内の大学に通った。施設には、親の不在や虐待の被害などの問題を抱えて入る子どもが多いため、退所後も家族の支援は期待しにくい。この女性は奨学金を受けていたが生活費が足りず、アルバイトを掛け持ちする日々を送った。だが3年生の時に体を壊し、バイトを減らさざるを得なくなったため、指導を受けていた教授から勧められた大学院進学を断念した。

 市の調査では、進学したかったができなかったという退所者は14・3%に上り、全員が経済面を理由に挙げた。経済的な基盤が弱いため進学できず、その結果、比較的収入が高い正規社員にもなれない現実が浮かび上がる。

 このため、退所者を資金面から支える動きが広がりつつある。京都市北区の児童養護施設「京都聖嬰会」は、企業や個人の協力を得て退所者のサポートにつなげている。退所者4人がそれぞれ企業から月7万円の生活費を受けているほか、就職準備などの臨時支出に寄付金を利用している。

 退所して大学などに進むには、学費と生活費がそれぞれ年約100万円必要になるという。杉野義人施設長(54)は「返済義務のない奨学金は狭き門で、数百万を借金して進学するのは厳しい」と指摘する。社会的な支援制度が不十分な中では、企業や個人の善意に頼らざるを得ないのが実情だ。

 生活面のケアも模索する。20歳未満は賃貸契約に保護者らの同意が必要だが、家族の支援を受けられない退所者のために施設長が連帯保証人となって社会に送り出すケースも多い。

 退所者の支援を巡っては、施設職員から「組織的・体系的なアフターケアができてない」という悩みも漏れる。政府は2015年度に児童養護施設の職員定数を増やしたが、宿直があり、勤務時間も不規則な職場だけに人手不足は深刻だ。杉野さんは「退所者の育ちをよく知り、入所中から信頼を積み上げている職員が要る」と訴える。

 行政の取り組みが、当事者に十分届いていない実態もある。市は11月中旬、南区の南青少年活動センターで退所者同士の交流会を初めて催し、9人が参加した。市は7カ所の青少年活動センターを退所者の相談・支援の拠点にする構えだが、認知度の向上が課題として横たわる。

 市の調査に関わった佛教大の長瀬正子講師(社会福祉学)は「退所者が当たり前のように社会生活を送れるようにするために入所中を含む中長期的な支援が必要。当事者もアクセスしやすい仕組みを作ってほしい」と話している。具体策として、退所後の支援を手掛ける専門職の設置をはじめ、青少年活動センターや児童相談所、福祉事務所などの連携を提案している。