サービス取組み事例紹介
児童福祉

千葉県船橋市・学校法人船橋橋学園 認定こども園不二幼稚園

幼稚園から認定こども園にリニューアル 地域の待機児童解消へ

 福祉医療機構では、地域の福祉医療基盤の整備を支援するため、有利な条件での融資を行っています。今回は、その融資制度を利用された千葉県船橋市にある不二幼稚園を取りあげます。同園は、地域の待機児童解消に向け、施設の全面建て替えに伴い、認定こども園としてリニューアルしました。移行した経緯や実践する幼児教育について取材しました。

※この記事は月刊誌「WAM」平成29年1月号に掲載されたものです。


認定こども園は4001施設に


 認定こども園は保護者の就労の有無等に関わらず、就学前の子どもを対象に教育・保育を一体的に提供し、幼稚園と保育所のよさを併せもつ施設として、平成18年10月に制度がスタートした。少子化などの影響により定員割れする幼稚園と都市部では待機児童が出るほど定員不足の保育所の両方の問題を解消することが期待されている。
 平成28年4月1日現在における全国の認定こども園数(平成28年4月1日時点)は、前年度から1165施設増加の4001施設となっており、今後もさらなる増加が見込まれている。
 千葉県船橋市にある学校法人船橋橋学園は、地域住民から寄せられた幼児教育に対するニーズに応えるため、昭和40年4月に不二幼稚園(定員300人)を開設し、一人ひとりの子どもの個性を尊重する教育方針のもと、創造性や情操を豊かにする幼児教育を実践してきた。そのほかにも、平成27年4月に小規模保育所「パルパステル保育園」(定員19人)を開設している。

幼稚園からの移行は船橋市で第1号


 現在、全国で認定こども園の新設・移行が進められているなか、不二幼稚園は施設の全面建て替えに伴い、平成28年4月に認定こども園へ移行した。船橋市では幼稚園からの移行は第1号となっている。
 認定こども園に移行した経緯について、同法人理事長・園長の橋晴美氏は次のように語る。
 「一昨年、当園は創立50周年を迎えるにあたり、老朽化した園舎の全面建て替えを計画していましたが、幼稚園を利用する園児は年々減少し、当園でも定員300人のうち270人前後で推移していました。今後の経営を考えると幼稚園だけの募集では厳しくなると感じていたこと、また認定こども園に移行することで地域の保育所の待機児童問題に少しでも寄与したいと考えたことがきっかけです。また、国の推進する認定こども園へ移行することで補助金を受けられることや、福祉医療機構の融資が幼保連携型認定こども園の場合は学校法人でも受けられるようになったことも決断する後押しになりました」(以下、「 」内は橋理事長の説明)。
 移行に向け、幼稚園を利用する保護者への説明会では、保育料が上がるのではないかという不安の声や、保育所化して教育がしっかりと受けられなくなるのではないかという質問が多く寄せられたが、保護者に対して繰り返し説明を行い、認定こども園への理解を深めてもらうことに努めたという。


施設デザインは幅広い層に人気の「ミッフィー」とコラボ


 施設の建て替えでは、同園の敷地面積が5646uと広大であることから、先に園庭部分に新しい園舎をつくり、完成後に移ることで比較的スムーズに建て替えを実施することができたという。着工から竣工まで約1年の期間を経て、平成28年4月に新園舎が完成し、認定こども園としてリニューアルしている。
 幼保連携型の認定こども園となる同園は、鉄骨造2階建てで園舎面積は1986u。定員は1号認定(就学前の満3歳以上)が180人、2号認定(保育を必要とする満3歳以上)が90人、3号認定(保育を必要とする満3歳未満)が48人の計318人となっている。
 新園舎の施設設計では、直線を多用しながら曲線と組みあわせた設計にすることにこだわったと橋理事長は説明する。
 「最近の傾向として、曲線を用いたやわらかいイメージのある施設が主流となっていますが、昔ながらの直線が多い小学校のような園舎をつくりたいという想いがありました。その理由は曲線より直線のほうが広いスペースや長い廊下がとれること、各部屋の仕切りも均等にできることから、子どもたちがより広い空間で過ごすことが可能となるからです。一方、玄関やエントランス部分には曲線を用いることで、やさしい雰囲気もつくっています」。


▲玄関とエントランス部分は、曲線を用いたやさしさが感じられる造りとなっている ▲1階の2歳児クラス(3号認定)の保育室

 また、子どもたちに伸び伸びと過ごしてもらえる環境づくりのため、広い園庭のほか、安全面に配慮して芝生を敷いた0〜2歳児専用の園庭も整備した。
 園舎内の設計は、幼児から大人まで幅広い層に人気の高いキャラクター「ミッフィー」で知られるディック・ブルーナ氏の監修を受け、絵本のコンセプトをもとにデザインした。赤・青・黄・緑・灰・茶の6色を基本に絵本の世界観そのままの配色を施し、子どもたちが楽しく過ごせる空間をつくるとともに、全体に木の温もりを感じられる造りとなっている。

▲園舎内は木の温もりや、絵本の世界観そのままの配色を施し、子どもたちが明るく楽しく過ごせる空間をつくった

 現在の利用状況は、今年4月の開設であることから4〜5歳児(2号認定)のクラスで多少の空きがあるものの、0〜2歳児(3号認定)は開設後すぐに定員に達したという。そのため、クラス編成では4〜5歳児は1号と2号の混合クラスとし、そのほかの年齢のクラスは認定ごとに分け、3歳児は1号が2クラス、2号は1クラスで運営している。
 また、食事の提供では、1号の子どもには外部委託した弁当形式の食事を提供しているが、2〜3号については自園調理による給食を提供する必要があり、混合クラスとなる4〜5歳児には異なる食事を提供することになるため、2号の子どもはランチルームに移動して、食事をするかたちとなっている。
 「現時点では4〜5歳の園児が少なく混合クラスになっているため、このような形式になっていますが、いずれ0〜2歳児の年齢が上がり、4〜5歳児も増えていきますので、認定ごとのクラスをつくって、それぞれのクラスで食事ができるようにしていきたいと考えています」。

▲施設の入り口には、ディック・ブルーナ監修の認証プレートを掲示 ▲調理室に隣接したランチルームで、現在は4〜5歳児(2号認定)が食事に利用

▲施設内には至るところに「ミッフィー」がデザインされ、子どもたちには探す楽しみがある

日本語の習得や情操を豊かにする幼児教育を実践


 認定こども園のメリットは、利用するすべての子どもたちが教育を受けられることである。英語教育などを行う施設が多いなか、同園では日本語の習得や情操を豊かにする幼児教育に力を入れている。正しい言葉遣いや文字の書き方などを小さいうちに習得させていくとともに、自分の考えをしっかりと相手に伝えられる子どもに育てることを大切にしている。また、人の話を聞くときは相手の顔を見ることを徹底し、オンとオフをしっかり見分けながらスイッチが切り替えられる教育を実践している。
 さらに、卒園後はスムーズに小学校生活になじめるよう、幼小連携として年長児は地域の小学校を訪問し、交流を深める活動を行っている。
 そのほかのメリットとして、橋理事長は異年齢の関わりができることをあげている。
 「最近は少子化の影響により兄弟姉妹のいない家庭が増えて、自分より年下の子どもに接する機会が少なくなっていますが、0〜5歳の子どもたちの間で異年齢の関わりができることも認定こども園の大きなメリットだと感じています。一緒に生活して互いに共感したり、小さい子どもを思いやることのできる子どもに成長しています」。
 保護者にとっても、就労状況によって転園することなく継続して利用することができ、1号と2号間の移行なども可能で、実際に年度途中で移ったケースもあるという。


▲子どもたちが伸び伸びと過ごせる環境として、広い園庭と0〜2歳児専用の園庭を整備した

運営上の苦労はスタッフの調整と事務負担


 一方、認定こども園への移行や運営するうえでの苦労については、子どもを預かる時間が増えることや会計などの事務負担が大きいことをあげる。
 「一つの施設で幼稚園と保育所を一緒に運営することは、やはり難しい面があります。幼稚園の子どもは1日4時間の教育時間でよいものが、保育所の子どもはお預かりする時間も長くなりますので、スタッフを確保することや勤務体系の調整が必要になります。保育の方はシフトを組んで上手く回すことができますが、幼稚園はなかなかシフトというわけにはいきませんので、そのあたりの苦労はあります」。
 また、事務負担では、平成27年4月から幼保連携型の認定こども園については、改正認定こども園法に基づく単一の認可となり、指導監督、財政措置が一本化し、以前より移行や運営をしやすくなったが、会計面では幼稚園と保育所部分を分ける必要があり、書類の作成など事務負担は依然として大きいという。


保育士、幼稚園教諭とも人材確保は困難な状況


 スタッフの確保については、認定こども園の配置基準として、平成31年度末までの経過措置※があるものの、幼稚園教諭と保育士の両方の資格をもつ保育教諭の配置が必要となるが、新卒に関しては大学だけでなく短大でも両方の資格を取れるため、両方の資格をもつ職員も多く、同園でも24人のスタッフのうち半数以上が保育教諭の資格を満たしているという。
 「今回の開設にあたり、多くの保育士を確保する必要がありましたが、ありがたいことに幼稚園に通う保護者のつながりから紹介していただくことで確保することができました。また、近年は保育士不足がクローズアップされていますが、幼稚園教諭の確保も非常に厳しい状況となっています。例えば、保育では何人かのスタッフでクラスを運営することができますが、幼稚園教諭は30人の子どもに対して担任が1人で責任をもたなければならないこともあり、それが大きな負担となり、両方の資格をもつ人が保育士として働いている傾向があります」。
 今後は片方の資格をもつスタッフに対し、両方の資格を取得してもらえるよう、業務の調整を行いながら支援体制をつくりたいとしている。
 今後の構想については、認定こども園の運営を安定させていくとともに、保護者の子育て支援にも力を入れることをあげている。
「これまでも子育て支援室を設置し、保護者の相談を受けてきましたが、最近は子どもを出産しても育てる自信がなかったり、うつ状態になってしまったという例も少なくありません。子育てなどの悩みや相談に対して、解決策を一緒に考えながら保護者のケアをしていくことが必要だと感じています」。
 認定こども園に移行し、待機児童の解消など地域の保育・教育ニーズに対応している同園の取り組みが今後も注目される。
※…経過措置期間中(平成27年4月1日〜平成32年3月31日)は、幼稚園教諭免許状または保育士資格のどちらか一方の免許・資格を有していれば、保育教諭等になることができる。

地域から愛される園を目指す
学校法人船橋橋学園 認定こども園不二幼稚園

理事長・園長
橋 晴美氏
 昨年4月に認定こども園としてリニューアルしましたが、幼稚園から幼保連携型の認定こども園へ移行するハードルが高いことは事実だと思います。しかし、実際に運営してみると、子どもや保護者にとって大きなメリットがありますし、苦労も多くありますがやりがいを感じています。
 また、幼稚園よりも子どもを長時間お預かりすることになりますので、スタッフが働きやすい職場環境として、休暇を取りやすくし、残業をなくすことに取り組んでいます。なかには保護者への対応が精神的な負担となるスタッフもいますので、担任にしかわからないことを除き、保護者からの意見や要望をいただいた際には、私や事務長が対応することでスタッフの負担軽減を図っています。
 今後の目標としては、子どもたちや保護者が笑顔になれる場所にするとともに、地域から愛される園になることを目指していきたいと考えています。



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施設の概要 学校法人船橋橋学園
認定こども園不二幼稚園
施設開設 平成28年4月
理事長/園長 橋 晴美氏
職員数 24人(平成28年10月末現在)
事業内容 認定こども園不二幼稚園(定員318人(1号認定:180人、2号認定:90人、3号認定:48人))
法人施設 小規模保育所「パルパステル保育園」(0〜2歳児・定員19人)
住所 〒274-0822 千葉県船橋市飯山満町2-666
電話 047-466-2925 FAX 047-466-2989


■ この記事は月刊誌「WAM」平成29年1月号に掲載されたものを掲載しています。
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