サービス取組み事例紹介
児童福祉

社会福祉法人さわらび福祉会

保護者のニーズにあわせた保育所の開設〜千葉県で初めての認可夜間保育所〜

千葉県松戸市にある社会福祉法人さわらび福祉会は、千葉県で初となる認可の夜間保育所や駅前型の小規模保育所を開設するなど、地域の保育ニーズに対応した事業を展開するとともに、不足する保育士の定着に向けた環境づくりを進めている。その取り組みを取材した。

※ この記事は月刊誌「WAM」平成27年10月号に掲載されたものです。

地域の保育ニーズに対応した事業を展開


 千葉県松戸市にある社会福祉法人さわらび福祉会は、理事長が昭和43年に乳児保育の先駆けとして同市の保育ママ制度に第1号で登録し、昭和45年に乳児保育所の「さわらび保育園」を開設したことにはじまる。その後、地域の保育ニーズに対応した事業展開を進め、「野菊野保育園」(0〜5歳児、定員140人)、「はなみずき保育園」(0〜5歳児、120人)、「若芝保育園」(0〜2歳児、定員30人)などの保育所を運営している。
 保育所以外にも、子育て支援センターや放課後児童クラブ、卒園児を対象とした学童クラブを運営するほか、法人本部のある「野菊野保育園」では、高齢者とのふれあいが子どもの成長につながるという考えから、介護サービスのデイサービスセンターや居宅介護支援事業所を併設し、さまざまな交流が行われている。

 ▲ 「さわらび保育園」の外観

県内初の認可夜間保育所を開設


 同法人は、平成26年4月に千葉県で初となる認可の夜間保育所「さわらびドリーム保育園」を開設している。同施設は老朽化により移転新築した「さわらび保育園」との併設となっており、「さわらび保育園」は移転新築にあたり、0〜2歳児・定員30人の乳児保育所から0〜5歳児・定員90人の保育所に事業規模を拡大している(両園とも、WAM福祉貸付事業利用)。

 ▲ 「さわらび保育園・さわらびドリーム保育園」の園庭

 夜間保育所を開設した経緯について、同法人副理事長の和田泰彦氏は次のように語る。「きっかけとなったのは、当法人の保育所の利用者のなかに保育時間が終わった後、ベビーホテルなどの別の施設に預ける”二重保育“をしている子どもがいることが判明したことです。運営時間と保護者の預けたい時間のニーズにアンバランスがあることに気づき、保護者が子どものために安心して働ける環境をサポートしたいという想いから夜間保育所を開設しました。開設にあたり市や市議会が非常に好意的に捉えてくれたため、満場一致で予算化していただくことができました」。
 「さわらびドリーム保育園」の定員は30 人で、開所時間は国の基準と同様に11:00〜22:00である。7:00〜11:00までの前延長、22:00〜24:00 の後延長を設定しているため、最大で7:00〜24:00まで預けることが可能となっている。
 夜間保育所の開設にあたっては、ただでさえ保育士が不足する状況にあるなか、夜間帯に勤務する保育士の確保の困難が予想されたが、それぞれの生活スタイルのなかで夜間に働くことを希望する保育士がいたこともあり、日中から夜間に移ってもらった職員を含めて、想定していたよりも苦労することなく人材を集めることができたという。
 開設時の利用者は7人であったが、夜間保育所が認知されるにしたがって増えていき、平成27年8月時点で31人に達している。利用者31人のうち、両親のいる家庭の子どもは19人、母子・父子家庭の子どもは12人となっており、外国人の利用者も多い。夜勤のある医療従事者をはじめ、親の職種はさまざまだという。
 「夜間保育所を通常の保育所に併設したメリットもあります。保護者は子どものために働いているわけですが、多少なりとも夜間保育所に預けることへのためらいがあることを想定しました。そのため、保育所の入口・玄関は共同にするとともに、日中は混合の保育をして、夕方以降は夜間保育所の保育室で家庭的な保育を提供しています」(和田副理事長)。

                
 ▲ 「さわらび保育園・さわらびドリーム保育園」の玄関。共同玄関にすることで、昼間・夜間の利用者をフラット化させることにねらいを定めた ▲ 「さわらび保育園」の保育室。日中は夜間保育の子どもと混合保育を実施

夜遅くまで働く保護者の負担軽減を図る


 そのほかにも、夜間保育所では、帰宅後に親子のスキンシップや会話の時間をつくってもらいたいという考えから、食事を昼と夜の2回提供するほか、希望があれば入浴も済ませることで、遅い時間まで働く保護者の負担軽減を図っている。

                
 ▲ 仕事で時間に追われる母親への配慮として、トイレには身だしなみを整えるために化粧台を設置 ▲ 迎えに来た保護者が読み聞かせができるように、保育室の前に絵本コーナーを設置

 夜間保育所を利用する保護者への対応について、「さわらびドリーム保育園」副主任の西林由紀氏は、次のように語る。
 「夜間保育では、仕事に追われて余裕のない保護者の方もいますので、話を聞いて寄り添うことが必要になります。迎えに来る時間帯はすでに寝ている子どもも多いため、ゆっくりと会話する時間をつくりやすい面もあります。私たちはただ子どもを預かるだけでなく、育てる責任もありますので、育児の状況を聞いてアドバイスしていくことも大切な役割だと考えています」。
 利用する保護者からは、「夜間保育所がなければ仕事を続けられず、生活や子育てをしていくことができなかった」と、多くの感謝の声が寄せられるという。また、保育サービスの質の向上への取り組みや保護者への情報提供など、サービスを選択する際の目安ともなる福祉サービス第三者評価を、松戸市の保育所として初めて受検しており、高い評価を受けている。
 「第三者評価では利用者アンケートを実施していますが、一番多かった要望は日曜・祝日も開園してほしいというものでした。しかし、それを行うと親の預けっぱなしを認めてしまうことになり、子どもにとってよいことではありません。保護者のニーズに応えつつも便利過ぎる保育所が必ずしもよいとは思っていませんので、中長期的な課題として実践を積み重ねながら、判断していかなければならないと考えています」(和田副理事長)。


利便性に特化した駅前型の小規模保育所を開設


 さらに、同法人は待機児童問題の解消に向けて、平成27年4月に小規模保育所となる「馬橋ルーム」、「北松戸ルーム」、「八柱ルーム」の3カ所を同時に開設している。小規模保育所は、今年4月からスタートした子ども・子育て支援新制度のなかで、市町村の認可事業として創設され、対象を0〜2歳児、定員を6〜 19 人とし家庭に近い雰囲気のもと、きめ細かな保育を行う保育所である。
 3カ所とも駅から徒歩1分以内の好立地にあり、「馬橋ルーム」はJR常磐線・馬橋駅の駅ビル1階に入っている。

          
 ▲ 平成27年4 月開設の小規模保育所「さわらびドリーム保育園馬橋ルーム」。駅ビル内にあるため利便性が高い

 駅前型とした理由は、都心への通勤圏である松戸市では、子育て世帯は駅周辺のマンション・アパートに住む人が多いのに対し、保育所の大半は郊外にあるため、子どもを預けにくい状況がある。
 子どもの保育環境においては、広い園庭があることが望ましいが、0〜2歳児であれば、集団的な遊びより家庭的な保育が必要であることから、利便性に特化した駅前型の小規模保育所の開設に踏み切ったという。
 「もうひとつは、待機児童対策として保育所の整備が進められていますが、いずれ子どもの数は減少していきます。そうなったときに利便性の悪い郊外の保育所は利用されなくなる可能性があると考えました。現在、計画中の取り組みとしては、利便性の高い駅前の小規模保育所で子どもを預かり、日中は広い園庭や保護者の選んだ幼稚園や保育所に送迎バスで送り、あわせて保育需給の地域偏在の解消に寄与したいと思っています」(和田副理事長)。


働きやすい職場づくりと給与体系の見直しを実施


 近年、待機児童対策として、保育所の整備が進められていることで、保育士の確保が追いついていない現状がある。同法人は職員の確保・定着に向けた取り組みを進めており、働きやすい職場環境をつくるとともに、給与体系の見直しを実施している。
 保育士の初任給は一般的に20 万円を下回ることが多いなか、保育士や管理栄養士などの有資格者に月額1万2000円の資格手当を創設することで、短大卒の初任給は20万円を超えることを実現。有資格のパート職員の時給も近隣のスーパーに比べ、100円以上高い1100円に設定している。
 また、同法人の役職のステップには、副主任、主任、園長代行、副園長、園長があり、主任以上が管理職となる。管理職手当を引き上げるとともに、年功だけでなく実力で抜てきすることで職員のやる気やモチベーションを高めている。
 「保育所を運営する法人の約6割が1法人1施設なのですが、当法人はたくさんの保育所を運営しているので、例えば、職場での人間関係がうまくいない場合に異動することや、多くのポストをつくることが可能となっています。また、『あと何年働けば、どの役職に就けるか』というキャリアアップモデルを示すことで、職員が自分の将来展望を描くことができるようにしていることも、職員に働き続けてもらうためには重要なことだと思っています」(和田副理事長)。
 なお、処遇改善により人件費がアップした分の財源については、食材の一括購入や施設のすべての照明をLED化したことによる経費削減のほか、経年で積み立てている修繕積立金の減額、給与の公定価格アップ分の完全反映などにより捻出している。
 休暇制度では、誕生日休暇を創設し、土・日曜日を加えて4連休、夏季休暇は5連休を取得できる仕組みをつくった。
 そのほかの人材確保の取り組みとしては、毎年夏に開催しているサマースクールがある。市内の高校生に保育士体験をしてもらうもので、毎年3〜4人の参加がある。体験後に専門学校で資格を取得し、入職した保育士も多い。また、短大や専門学校に採用情報の提供に訪問する際に、卒業生の保育士を同行させる工夫をしており、効果があるという。


 女性のライフステージに寄り添った切れ目ない声かけ


 「保育士を確保していくためには、採用よりも離職させない努力が必要となります。保育の仕事は女性中心の職場になりますので、結婚や出産、育児などで仕事から離れてしまう機会がどうしても出てきます。経営者は、女性ならではのライフステージに寄り添った切れ目のないアプローチ・声かけをしていき、復職を働きかけていくことが重要だと考えています」(和田副理事長)。
 同法人では、直近2年間で小規模保育所を含む、多くの保育所を開設しているが、このような取り組みにより、30人以上の保育士を採用することができた。保育士の定着率も高く、平均勤続年数は10年を超えており、30年以上勤めている職員も少なくないという。
 地域の保育ニーズに対応した事業を展開するとともに、職員が働きやすい環境づくりを進める、同法人の取り組みが今後も注目される。

利用者に選択してもらえる保育所を目指す
社会福祉法人さわらび福祉会 副理事長 和田 泰彦氏

当法人は開設以来、多くの保育所を運営してきましたが、今後子どもの数が減少していくなかで利用者に選択してもらえる保育所を目指していかなくてはなりません。そのためにも、地域の保育ニーズをつかむ感性を研ぎ澄まし、保護者の想いに耳を傾けていくことが重要だと考えています。
 新たな取り組みとしては、今年の10 月にJR 松戸駅西口に「松戸ルーム」の開設を予定していますが、それと同時に松戸市から委託を受けて「保育送迎ステーション事業」をスタートします。
 同事業は、駅前に送迎ステーションを設置し、そこから郊外にある利用しにくい保育所や幼稚園に送迎するもので、保護者が駅前で子どもの送り迎えができるようにすることで負担軽減につなげるほか、地域の保育需給の偏在を解消することを目的にしています。
 今後も地域の保育ニーズに対応し、社会的使命を果たしていくとともに、職員の幸福につながる組織風土を醸成していきたいと考えています。


さまざまな視点のアプローチ
社会福祉法人さわらび福祉会 さわらび保育園 園長代行 彦惣 久美子氏

 保育は女性が中心の職場になりますが、当法人では普段から職員同士のコミュニケーションがとれているので、困ったことがあれば、何でも助けあえる土壌があります。また、新卒からベテランの人まで幅広い年齢層の保育士がいるのですが、さまざまな視点のアプローチができることは、子どもにとってもよい環境にあると思っています。私自身も3 人の子どもの育児をしていますが、学校行事がある際には快く送り出してくれるので、とても助かっています。
 また、保育士の仕事では、保護者の方への対応がとても大切になります。同じ内容のことを伝えても保護者の方によって受け止め方は違うので、誤解を招いてしまうこともあります。常日頃からたくさんの会話をして信頼関係を築くことはもちろんですが、一人ひとりにあった対応していくことを心がけています。




<< 法人概要 >>
法人名 社会福祉法人さわらび福祉会 理事長 和田 幸子 氏
法人設立 昭和44年 職員数 184 人(非常勤含む)
開設施設 野菊野保育園(0 〜 5 歳児・定員140人、デイサービスセンター、居宅介護支援事業、子育て支援センター)/さわらび保育園・さわらびドリーム保育園(0 〜 5 歳児・定員90 人/夜間保育0 〜 5 歳児・定員30 人)/若芝保育園(0 〜 2 歳児・定員30 人)/はなみずき保育園(0 〜 5 歳児・定員120 人)/小規模保育所(さわらびドリーム保育園馬橋ルーム、さわらび保育園北松戸ルーム、はなみずき保育園八柱ルーム)/和名ヶ谷放課後児童クラブ/放課後KIDS ルーム和名ヶ谷
電話 047−365 −8385 FAX 047−367 −5829
URL http://sawarabi-fukusikai.or.jp/


■ この記事は月刊誌「WAM」平成27年10月号に掲載されたものを掲載しています。
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