7.モニタリング−ケアプランの実施と効果について
介護

 ここでは、見直されたケアプランがどのように実施され、目標に向かって効果を上げているかを確認するモニタリングを考えてみたいと思います。

【著者:吉田光子(郡山ソーシャルワーカーズオフィス)】

何を見ればよいのか

吉田:今日は新たに決定したKさんのケアプランのモニタリングについて一緒に考えてみましょう。
鈴木:はい、よろしくお願いします。あの、実のところ、モニタリングは実施していますし記録も書いているのですが、「これでいいのかな?」と迷うことが多いので、是非きちんと理解したいです。
吉田:鈴木さんは、どんな点で迷うことが多いのですか?
鈴木:サービスをきちんと利用しているかどうかや、どんなお気持ちかといった点に関してのモニタリングはできていると思います。しかし、目標が達成されているのかとか、いつ見直したらいいのかといったことに関しては自信がありません。毎月のモニタリング記録のほか、なんとなくこれまでは、更新の時期や3か月、6か月といった節目に、こんな感じかなぁとまとめたものでしかなかったように思います。
吉田:それはモニタリングの際に、確認できることとはっきりつかめないものがあるということですか?
鈴木:うーん、つかめないというより、何を見ていいかわからないという方が、近いような気がします。
吉田:観察の焦点が定まらないといった感じでしょうか?
鈴木:(得心した様子で)そうです。
吉田:モニタリングの目的について、鈴木さんはどのように考えていますか?
鈴木:ええと、まずはきちんとサービスがプランどおりに行われているかを確認する。もし実施されていない場合は、その理由と対応を考える。あれ、違いますね。対応を考えるてがかりを探すかな。
吉田:そうですね。対応を考えるまでいくと、プランの見直しという場合もありますものね。
鈴木:(笑顔で)そうですよね。それから、サービスを利用しての感想も聞きます。
吉田:どうしてお聞きになるのですか?
鈴木:(考えながら)喜んでいただければいいけれど、嫌なことがあったり、不都合があったら、利用そのものを止めてしまうかもしれないからです。あっ、これって、実はプランに直結しているんですね。ここをちゃんとしておかないと、効果があったかどうかもわからないんだ。
吉田:(うなずく)
鈴木:あとは、サービスの利用が、目標に対して効果が上がっているかを見て、サービスの継続を判断する材料にします。うーん・・・。(考え込む)
吉田:どうされました?
鈴木:私ここが一番わからないんだって、気がついちゃいました。(苦笑)
吉田:何がわからないかに気がつくことは、とても大切なことです。では、そこを整理しましょう。
鈴木:お願いします。
吉田:目標に対して効果があったかを見る。これはいいですね。しかし何をもってして効果があったかと判断する具体的な指標やエピソードがあれば、モニタリングは非常にわかりやすくなります。また、指標をサービス事業者、利用者本人、家族などで共有できれば、かかわっている人すべてが気がつくことができます。また、その指標は何もケアマネジャー一人で作る必要はありません。サービス事業者の専門性を利用することも大事ですよ。例えば、医療の分野だったら訪問看護師の力を借りるなどです。
 また、マイナスの効果すなわち目標に対して効果がない、場合によっては悪影響が生じることも考えておかなければなりません。すなわちリスク管理です。これも具体的な状態やサインをサービス事業者などと共有しておくことで、早めに対応することができます。
鈴木:そうですね。何を見ればよいかを決めておくということですね。
吉田:そのとおりです。


ケアプランからモニタリング項目を明らかにする

吉田:では早速、Kさんのプランをもとにモニタリングのポイントを考えていきましょう。
鈴木:はい。第2表を作る際に短期目標を具体的にしたので、それもモニタリング項目のひとつと考えることができますよね?
吉田:そうですね。また、目標達成の過程のなかでの小さいゴールを考えることもできると思いますよ。では、第2表の一番上の短期目標から見ていきましょう。
鈴木:「撮りためた写真の整理ができる」ですが、こちらは、訪問の際に見せていただいています。皆さんがどのようにかかわっているかも連絡をいただいて把握できています。
吉田:こちらの目標は具体的に確認ができているということですね。では、次の項目はどうでしょう。
鈴木:はい。次は、「シャワーの他に浴槽に入る」なので、まず入ることができたか、その頻度や訪問リハビリでの様子、用具の導入に関してどのくらいポイントを絞れているかを見てこようと思います。購入となれば、更に手続きが必要なこともお話ししてきます。
吉田:具体性があれば、自信をもってモニタリングすることができますよね。では、マイナスの効果として考えられることはありますか?
鈴木:思うように身体が動かせずに、諦めてしまったり、場合によっては頑張りすぎて疲れたりケガをするかもしれません。
吉田:具体的な様子を考えることができると、どんな話が出てもそこから考えていけるでしょう。
鈴木:はい、お会いするのが楽しみになってきました。
吉田:では次の目標に関しては、どうですか?
鈴木:「杖をついて歩ける範囲を広げる」ですから、どこをどんなふうに歩いていらっしゃるのかお聞きして、できれば歩く様子を見せてもらおうと思います。
吉田:どうしてですか?
鈴木:歩くことがしっかりできていらっしゃれば、それを確認するだけでなく、一緒に喜ぶことができますし、長期目標との関連で何か具体的な希望が聞けるかもしれないからです。
吉田:それはいい点に気がつきましたね。短期目標は長期目標に到達するためのものだということを、Kさんや奥さまと再確認できますね。
鈴木:はい。それから、リスクとしてこれから寒くなっていくことを考えて、屋外のどこで練習するのがよいかも考えておきたいと思います。
吉田:現在はどこで練習なさっているのですか?
鈴木:お庭や近所の散歩をしていらっしゃいますが、秋から冬になれば、よほど暖かい日でないと身体にもよくないかもしれません。
吉田:なるほど、そういう可能性を考えておかれるのはいいですね。でもどのようにお話ししますか?
鈴木:そうですね・・・。具合が悪くなってしまうかも、なんて言えないですよね。
吉田:ひとつの案ですが、例えば、建物の中で歩くというような提案はいかがですか? デパートでのショッピングや、お好きなら本屋さんへ行くなど、暖かくて平らで、まずは歩きやすそうなところでKさんが行ってみたいようなところを一緒に探してみるのはどうでしょうか。
鈴木:はい、相談してみます。
(ほかの目標についても同様に具体的なポイントを絞っていった)


モニタリングにはいろいろな目的がある

 ケアプランの短期目標に沿ってモニタリング項目を具体的に見てきましたが、いかがでしたか? 経験が浅いうちは、鈴木さんのようにモニタリングで何を見てきたらいいのか、聞いてきたらいいのかがわからないこともあるのではないでしょうか。鈴木さんとともに検討してきたように、目標毎にどんな点に着目すればいいのか、何ができたら目標達成と言えるか、どんなリスクが考えられるかなどをケアチームや利用者・家族と一緒に検討しておくとよいでしょう。そのうえでモニタリングを行えば、自分が何のためにモニタリングを行うのかのイメージができますし、会話の中のヒントをキャッチするのも容易になります。
 ケアプランの実施状況に関しては、特別に取り上げませんでしたが、こちらは実績の確認の際や、翌月のサービスの確認時などに話題にしていく方法もありますね。
 ただし、モニタリングとはケアマネジャーの知識、感性、視点など総合力が問われるものであり、目標と照らし合わせるだけでは重大な変化を見逃してしまうこともあります。ケアプランの実施状況とは直結関係しない、環境の変化のモニタリングを行うことも重要です(詳しくは「8.モニタリング−環境について」を参照)