9.ケアプランを変更する時−その1
介護

ここでは、モニタリングを受けて、ケアプランの変更が必要になった際にどのように作成していくかを考えてみたいと思います。
 本人や家族から申し出があった場合や、サービス担当者会議の場で検討してのプランの変更ではなく、ここではケアマネジャー自身が気づいたり必要性を感じたことを、どうプランに落とし込んでいくのかにしぼって考えていきます。

【著者:吉田光子(郡山ソーシャルワーカーズオフィス)】

ケアマネジャーがプランの変更を希望する時

吉田:今日はプランの変更について考えていきましょう。
鈴木:はい。モニタリングの時に考えたようなことでしょうか?
吉田:そうとも言えますが、特に鈴木さんだけが必要性を感じている時のことを考えたいと思っています。Kさんや奥さんから「〜したいです」って、言われて変更する場合は、そんなに悩まないでしょう。必要かどうか、調整可能かどうかを検討するくらいでスムーズに変更していますでしょう。
鈴木:そうですね、まだKさんの場合はありませんが、ほかの方のプランの変更の時には、少なくともその希望に沿って、プラン変更の必要性や、実際にサービス提供が可能かなどを検討してから、ほぼそのとおりに変更しています。
吉田:そうでしょう。ですから、それよりもちょっと鈴木さんが困るんじゃないかなぁという場合のことを想定して考えたいと思ったのです。
鈴木:困ることを想定して、ですか?
吉田:おかしな表現になってしまいましたが、鈴木さんはこのままのプランじゃいけない、変更したいと思っているが、利用者やご家族はその必要性を感じていない場合のことです。
 そんなときに、どうやって変更を切り出してよいか、困るのではないですか?
鈴木:まだそういう場面は経験がないのでわかりませんが、困りそうですね。(笑)
吉田:モニタリングして「あれ?」って気づき、しかもリスクの可能性が高いとしたら、そのままにしてはおけませんよね。それが利用者側との共通認識ならば話は簡単ですが、そうでない場合もあるのではないでしょうか?
鈴木:う〜ん、例えばどんな場合でしょう?
吉田:Kさんの場合であれば、例えば訪問介護のプランです。今はよい関係でかかわってくださっていますが、この先いつまで必要なサービスなのでしょうか? 今後新たなニーズが見つかればわかりませんが、当初の目的は果たして、サービス内容も変化しましたよね。こうした場合に、いつサービスを打ち切るかに関しては、あまり意識なさっていないのではないでしょうか。
鈴木:そうですね、私がヘルパー出身ということもあって、サービスに導入しやすいのですが、止めることを考えたことはなかったかもしれません。確かにこの前のサービス担当者会議で見直してみて、サービス内容がずいぶん変化して来ていました。その時々の報告ももらっていて、Kさんができていることが多くなっていることはわかっていましたが、それで終わっていました。サービスが必要なくなるというか、打ち切るという発想がなかったかもしれません。
吉田:Kさんの場合であれば、サービスの必要がなくなってきたことをモニタリングし、その結果を共通認識できれば、割合スムーズに撤退できる可能性が高いです。
 ただ、そう簡単にいかないこともあります。ヘルパーさんが好意で介助しすぎる場合や本人が依存的になって頼りすぎる場合などです。モニタリングの結果ケアプランの変更が必要と判断したとしても、それをどう伝えていくか、本人やサービス提供者に理解してもらうには難しい場合もあります。特に訪問介護の場合は1対1の関係でのサービス提供なので、心理的にも結びつきが強くなり、分離不安に近い感情を持たれてしまう可能性もあります。
鈴木:ある方との結びつきが強くなってしまうということですね。私も現場にいる時に、どうしても気になってしまう利用者の方がいました。実際今の職場に異動する時も、お別れがつらかったです。
 そうかぁ、ヘルパー側にもこんな感情があるように、利用者の方にもあるってことですね。それが甘えや依存になったり、お節介や過剰なサービスにつながってしまう危険があって、それに気づいたら介入する必要があるわけですね。
吉田:そういうことです。鈴木さんは経験されたことから考えていただけたので、ご理解いただけたと思います。ケアマネジャーは、利用者本人やご家族が満足なさっていても、本来の目標に対して効果が上がらなかったり、かえって問題になりそうだという判断ができた場合は、黙っていてはいけないのです。
鈴木:でも、黙っていたほうが文句を言われないような気もします(苦笑)。
吉田:そうなんですよね。だからさっき言ったように「困ることを想定した」というわけです。上手にプランの変更ができるようになりたいですよね!
鈴木:はい!


気づきから判断まで

吉田:ではもう一度、プロセスに沿って考えていきましょう。
鈴木:よろしくお願いします。
吉田:せっかくですから、今の、訪問介護が逆効果になってしまっている場合を考えてみましょう。
鈴木:はい。でも、抽象的で考えにくいのですが。
吉田:では、Kさんの設定をお借りして、違った場面を考えてみるというのはどうですか? 具体的な様子を考えやすいでしょう?
鈴木:はい、それなら考えられそうです。
吉田:Kさんの代わりに仮にAさんとしますね。Aさんが同じような身体状況で退院してきて、初回の鈴木さんのプランでサービスを利用していたことにしましょう。Aさんは退院後もずっと車いすを押してもらって通院をしており、家の中でもほとんど歩いていないとします。鈴木さんはモニタリング時にどんなことを確認したいと思いますか? また、その理由はどのようなものですか。
鈴木:Aさんの歩かない理由を知りたいです。それから実際に歩行に関する機能がどうなっているのかを訪問リハビリに確認します。もし、歩けるのに歩かない場合は、なおのこと理由が知りたいです。Aさんの行動(自分で歩かない)の背景にあるものによって対応を変えなくてはならないからです。例えば、歩きたいと思っているけれども、もし転んだら奥さん一人では起こせないと思って我慢しているのか、転んでケガをするよりも安心だから歩かずにいるのでは、話の仕方もずいぶん違ってくると思います。
吉田:そうですね。Aさんの行動だけではなくその背景に着目するというのはとても大切な視点だと思います。では、Aさんがこんなふうにおっしゃったとしたら、どうしますか?
 「ヘルパーさんからも「転ぶと大変だから、私たちがお手伝いしているんですよ」と言われるし、私も自分で歩くのは疲れるから、訓練の先生がいる時しか歩いていないよ」
鈴木:ヘルパーはAさんのやる気を奪っていると思います。不安にさせたり、親切を押しつけているような感じがします。
吉田:「感じがした」というのは、鈴木さんが気づいたことですね。それだけで、ヘルパーさんやAさんに何かお伝えできますか?
鈴木:多分何も言えません。でもそのままにしておいてはいけないと思うんです。どうしたらよいのでしょうか・・・(考え込む)。
吉田:「言えない」とおっしゃった内容はどんなことですか?
鈴木:えっ、「そんなことは言わないでほしい」って。でもそう言っても何を言っているかわからないだろうし・・・。
吉田:まだ、気づいただけだからでしょう。根拠もないし想像でものを言えない、って感じていらっしゃるのではないでしょうか?
鈴木:(うなずく)
吉田:では、根拠を持ちましょうよ!
鈴木:どうすればよいのでしょうか?
吉田:Aさんに聞いてみましょう。本当にやる気が奪われているのか、それとも自分の不利にならないように、言葉を選んでいるのか。また、ヘルパーさんに聞いてみる方法もありますよね。「車いすで通院介助していると聞いたが、それはヘルパーの判断か本人の希望か? 一部でも歩行することは難しいのか」と。
鈴木:根拠があれば止めてって言いやすいですよね。しかし、Aさんにそのままは聞けないですよね。どう言ったらいいのかなぁ。


ケアプラン作成の責任はケアマネジャーにある

 ここでは、気づいたことに介入するには根拠が必要というところでいったん終了します。次は根拠を持つための具体的な方法を考え、それに基づいてプランをどう変更するのか、またその同意をどう得ていくのかについて考えていきたいと思います。
 ケアプランを作成する専門職であるケアマネジャーは、その内容に関して常に関心を持ち、効果に関しても吟味していく必要があります。「家族が希望したから」とか「本人がそれでよいと言うから」という理由で、ケアプランを見直さなかったり、効果のないプランをいつまでも継続していくことは許されないのです。ましてや、サービスの利用が目標になってしまっては、何のためのケアプランかわかりません。
 あくまでもケアプランは利用者の自立支援に帰するものであって、家族の都合や、ましてや事業所の利益や都合を優先すべきものではありません。だからこそ、専門職として報酬を得てケアプランの作成を任せられているのです。