10.ケアプランを変更する時−その2
介護

 引き続き、ケアマネジャーがケアプランの変更の必要性に気づいた際に、どのように変更していったらよいかを考えていきます。現実ではさまざまな場面が考えられますので、あくまでも一つの例として考えてください。さて、鈴木さんはどうするのでしょうか?

【著者:吉田光子(郡山ソーシャルワーカーズオフィス)】

判断に根拠を持つ

(「9.ケアプランを変更する時−その1」からの続き)
吉田:Aさんには、どう聞いたらいいでしょうね。先ほど、鈴木さんがおっしゃっていたことを、素直に聞いてみてはどうですか?
鈴木:聞いていいのですか?
吉田:鈴木さんがこう思ったということをはっきり伝えることと、そこに何らかの決めつけを持ち込まなければ大丈夫ですよ。
鈴木:決めつけ、ですか?
吉田:「歩けるのに歩かないのは悪い、あるいは甘えている」といった、自分の価値観を持ち込んでAさんの行動に文句をつけるようなことをしなければ、ということです。まだ本当のところはわからないのですから。鈴木さんがモニタリングの目的をきちんと持ち続けていれば、素直な気持ちを出したほうが聞きやすいと思うんです。
 先ほど鈴木さんは「聞けない」とおっしゃいましたが、それは何か「こうじゃないか」という先入観があって、それをそのまま質問できないという意味に取れましたよ。
鈴木:はっきりと意識してはいませんでしたが、そう言われると、「自分で歩くと疲れるから」という言葉から歩く気がないと判断して、それを聞くのは失礼じゃないかと思ってしまいました。
(考え込むように)つまりこういうことですか? Aさんに確かめずに私が歩く気がないと判断したのが「決めつけ」で、「それはどういうことですか」と聞いた返事が「歩きたくないんだ」なら根拠がある判断になるということ。
吉田:そのとおりです。さまざまな情報をもとに分析し予測していくことはできますが、根拠がなければ、それはまったく見当違いかもしれないのです。常に根拠を持てるとは限りませんが、自分の予測を過信せずに、根拠を探していく習慣を持ちましょう。それに、予測が当たっていますかと聞くより、素直にわからないところを聞いたほうが、聞きやすいでしょう(笑)。
鈴木:そうですね。それなら、Aさんにもヘルパーさんにも聞けるし、聞けばさっきの私のように考えることで、無意識に行動していることに気づいてくださるかもしれません。


判断したことからプランの変更へ

吉田:では、状況を整理して確認してみましょう。ヘルパーさんは好意で車いすによる介助をしており、またそれは最初からの個別プラン内容だったために、変更の必要性を感じていなかったことがわかりました。転倒の危険だけを避ければいいと考えていたようです。Aさんも天気のよい日などは自分で歩いてもいいかなと考えていましたが、歩こうとするたびに「危ないから」とか「転んでケガでもしたら大変ですよ」と言われ、もし転倒したらと怖くて、自宅内でも一人で歩くことをしなくなっていたことがわかりました。訪問リハビリからは、歩行は安定しており独歩も可能だが、筋力がなかなかつかないため、誰かがそばで見ているほうが安心だろうという情報が寄せられています。
 さて鈴木さんは、ケアマネジャーとしてプランの変更の必要性を感じますか? もし変更するとしたら、どんな内容にしますか?
鈴木:プランの変更は必要だと思います。こうしてしまった原因の一つは私のプランにもあったと気づきました。訪問介護で通院介助を入れたのは受診だけが目的で、その間に移動に関する機能を獲得することを考えられず提案できませんでした。最初からそこに気づいて、歩行の状態をたずねたり、本人の希望やリハビリの評価結果を共有できていれば、こんなことにならなかったかもしれないと思いました。しかし前のことを悔やんでも仕方ないので、これからどうしていくかを考えたいと思います。
吉田:すごいですね。ずいぶん、いろいろなことに気づかれましたね。
鈴木:はい、Kさんの場合は、本当にKさんに助けられて、今の状態になったということを感じました。Aさんという例を考えることで、Kさんとの違いがはっきり認識できました。
吉田:さて、ではもう一度Aさんのケアプランに戻って考えましょう。何をどうしたいですか?
鈴木:まず、Aさんのできている部分をきちんと皆で評価し、また「歩きたい」という意欲を大切にしていこうと提案したいと思います。しかし一方で、リスクを避けて一人では歩かないという判断についても支持したいと思います。そうすると、サービス提供回数等は変更せずに、その目標と内容を明確にしたいと思います。


同意を得るために

吉田:ケアプランの変更について、しっかりと考えることができました。では最後にそのプランに同意していただかなければなりません。そこはどのようにしますか?
鈴木:ここまで考えてきて、あらためて気づいたことがあるんです。
吉田:それは何ですか?
鈴木:私、これまでは自分でケアプランを作ってサービス利用票にまとめ、それにサインをもらうことが同意だと思っていました。でもそれでは、心から同意しているのではないんじゃないかということです。今、Aさんのプランの変更のために考えてきたように、本人の思いや状況、関係者のかかわり方などを、一緒に検討し、目標を共通理解しなければいけないんだと。同じ目標を持ち、それをまとめたものがサービス利用票だなって感じていただいたうえで、サインしてもらうのが、本当に同意してもらうことなんだと思います。
吉田:(うなずく)
鈴木:プランの変更に同意していただくには、変更が必要だとケアマネジャーとして感じたことをお伝えし、それが間違いでないかを一緒に検討し、そのうえでどうしていきたいかをお伝えしていかなければならないんですね。


プランの変更にあたって

 さて、皆さんはどのように鈴木さんの言葉を受けとめましたか? 困る場合を想定して考え始めたこのテーマですが、いかがだったでしょうか? 実は困っているのは、ケアマネジャーがうまく自分の考えや状況を伝えられないとともに、自分の価値判断に基づいて行動しようとしているためでした。
 気づかなければ何も始まりませんが、気づいた後は利用者・家族とアセスメントを共有し、同じ目標を持つことを普通に行えばよいだけのようです。しかし、この「普通」が難しいのかもしれません。
 もう一度、モニタリングからプランの変更までを考えてみてください。ケアプランは何のために誰のために作成するものかを考えてみてください。なぜケアマネジャーがいるのかを考えてみてください。