11.ケアプランの正解
介護

これまで鈴木さんと一緒にケアプランについて考えてきました。作成にあたって鈴木さんがいろいろ悩まれたように、ケアプラン作成には苦労が伴うものです。最後に皆さんと考えたいのが、「ケアプランの正解(最良のケアプラン)はひとつか?」ということです。
 結論から言ってしまえば、私はひとつではないと考えています。なぜなら、人の意識と生活は常に変化するものだからです。つまり、今日、あるケアマネと利用者・家族のなかで最良のプランだと感じられたとしても、別のケアマネがもっと違った見方や生活の提案をすれば、それもまた最良のプランになる可能性があるからです。
「何がなんだか、わからないぞ!」という声が聞こえてきそうですね。具体的に説明してみましょう。

【著者:吉田光子(郡山ソーシャルワーカーズオフィス)】

ケアプランとは何のために作られるものか

 今さらながらの質問ですが、上の質問に皆さんはどう答えますか? 簡潔に述べることは、結構難しいと思います。介護保険法をみると第8条第23項で、居宅サービス計画とは「日常生活を営むために必要な保健医療サービス又は福祉サービスの適切な利用等をすることができるよう、当該居宅要介護者の依頼を受けて、その心身の状況、その置かれている環境、当該居宅要介護者及びその家族の希望等を勘案し、利用する指定居宅サービス等の種類及び内容、これを担当する者その他厚生労働省令で定める事項を定めた計画」と書かれています。
 条文には、「適切な利用」とあります。しかし、何をもって適切と判断するのでしょうか。例えば、入浴できないで困っている方にとっての適切なサービスは、「訪問入浴介護」でしょうか? それとも「デイサービスでの入浴介助」でしょうか?または「自宅浴室でのヘルパーによる入浴介助」でしょうか。一概には言うことはできませんよね。
 ですから、「心身の状況」「環境」「希望」を「勘案」していくわけです。
 つまり、同じような身体の状態で、家族構成も環境も似通っていても、その人に最適のプランとは、何を望んでいるか(目標)によって異なってくるはずなのです。しかも人が望むものは変化していきます。脳卒中で倒れた直後は、命が助かれば、と思いますが、危険な状態が過ぎれば、口から食事ができるようになりたい、起きて座っていたい、立って歩きたい、などさまざまなことを望むようになります。
 すなわちケアプランとは、その方の「今」の「希望」に沿って「その方の自立支援」を実行するために作成されるものなのです。


アセスメントにより計画は変わる

 そうなると、私たちケアマネジャーが状況や環境をどう見積もるか(アセスメントするか)によっても、計画の中身が変化していく可能性があります。例えば、入浴できない理由を「装具なしで立位や座位を保持できない」とし、浴室を「リフト等を設置する充分な広さがない」としたら、まずは「入浴の機会を確保し、清潔を保つ」ためにプランを考えるでしょう。しかし、その後をどう見積もるかで、プランの内容は大きく変化します。
 身体状況が好転する可能性があると見積もれば、そのために必要なリハビリテーションの確保により、入浴に必要な機能の獲得を目指します。そうなると入浴はデイケアで、と考えるでしょう。そして身体状況が好転した後、あらためて自宅浴室での入浴の可能性を検討していくでしょう。しかし、「今後は現状維持がやっとであり、長時間の座位も負担が大きい」と判断すれば、自宅で訪問入浴介護を考え、浴室周りの住宅改修は検討されないと思います。


生活の変化に沿って変わっていくプランを

 私は、ケアプランには正解がたくさんあると考えています。これまで述べてきたように、その時期によって、あるいは希望によって変化していくものと考えているからです。ですから絶対に避けなければならないのが、一度作ったものを見直さないことです。これは、ケアプランをよりよいものにしていくための努力を怠るのと同じことです。
 皆さんが、担当している利用者の「今」とその時の「望み」を理解しようと心がければ、自ずとケアプランは変化していくはずです。利用者の一瞬だけを切り取ったプランではなく、その方の生活に沿って柔軟に変化させていきましょう。それこそがきっとケアプランの正解、すなわち、その方のその時の最良のプランになるのですから。