ニュース
介護

【高知県】

ノーリフト介護で腰痛減少 高知で普及「全国トップの取り組み」

高知新聞 2018年10月9日(火)
介護リフトの使い方を確認する施設職員(高知市本町3丁目)
介護リフトの使い方を確認する施設職員(高知市本町3丁目)

 福祉機器を適切に使うなどして介護の負担を減らす「ノーリフティングケア」が高知県内の介護現場に広がり、施設職員の腰痛発症件数が数年前から減少傾向にあることが、滋賀医科大学の垰田(たおだ)和史准教授の調査で分かった。全国的に福祉現場での腰痛が増加する中、「高知の取り組みは全国のトップを走っている」と評価している。 

 ノーリフティングケアとは、要介護者の体を人力で持ち上げたり、抱え上げたり、ベッド上で引きずって移動させない介護のこと。約20年前にオーストラリアの看護連盟が提唱したとされる。

 リフトや滑りやすい素材でできたシートやグローブなどを活用し、腰痛防止のために中腰姿勢を続けないこともポイントになる。

 高知県は2014年度に福祉機器の導入に対する補助金を創設。日本ノーリフト協会高知支部(高知市本町3丁目)に委託した研修会も開いており、2017年3月には全国初の「ノーリフティングケア宣言」を行った。

 「職員と利用者双方の負担が軽くなる」などと評判が広がり、補助金の申請数は年々増加。2015年度の15件から本年度は10月1日時点で49件に増え、介護施設を中心に取り組みが広がっている。

 ◇   ◇ 
 垰田准教授は、腰痛など職業性疾患の予防が専門で、県のノーリフティングケアの研修にも携わる。

 福祉・医療分野における労災申請数は全国で約1700件(2016年時点)で、うち約8割が腰痛という。「高齢化社会のキーパーソンとなる人材が腰痛に苦しんでいる。低賃金などの問題以外に、職員が体を壊している現状がある」と話す。

 垰田准教授は、高齢者や障害者らが利用する社会福祉施設において、職員の死傷病災害件数を都道府県ごとに把握して分析。2007年を100とした場合、全国平均は職員数の増加などに伴って右肩上がりで推移し、2016年は191と9年前のおよそ2倍に増えている。

 一方で、高知県は2013年ごろから減少傾向に転じ、2016年は9年前と同水準にとどまっている=グラフ参照。職員千人当たりの数値でも同様の傾向を示しているという。

 垰田准教授は「全国的に右肩上がりの中、減少傾向は高知だけ。高知は腰痛の発症に歯止めをかけているのではないか。ノーリフティングケアの普及以外に原因が考えられない」と強調する。

 県内のある施設では、リフトを導入したことで「(立ち上がりの介助で)利用者に抱きつかれるなどのセクハラがなくなった」との声もあるという。「若い職員らにすれば利用者に向かってセクハラとは言えない。リフトを使うことが安心して働ける職場につながっている」

 日本ノーリフト協会高知支部事務局長の下元佳子さん(55)は「働く人を守るという視点で取り組みを進めたい。介護の現場が変わってきていることを知ってもらい、人材確保につながれば」と話している。(山本仁)