サービス取組み事例紹介
高齢者福祉

社会福祉法人北海長正会

住民同士の支えあいを再構築し、安心して暮らし続けられる地域づくりに取り組む  北広島団地地域サポートセンターともに

社会福祉法人北海長正会は、少子高齢化が進む地域において、住民同士が互いに支えあうことのできる拠点づくりを進めている。平成26年4月には、廃校となった小学校を利活用した「北広島団地地域サポートセンターともに」を開設。地域包括ケアの拠点として、さまざまな生活課題を抱える地域住民のニーズに応えている。その取り組みを取材した。

※ この記事は月刊誌「WAM」平成26年11月号に掲載された記事を一部更新して掲載しています。

社会福祉法人の使命として地域の生活課題に取り組む


 昭和51年に設立された北海道北広島市にある社会福祉法人北海長正会は、地域の福祉サービスの拠点として「一人ひとりが生きがいを持ち、心豊かに安心した生活が送れるよう、生活の質の充実に努める」ことを理念に掲げ、障害者支援施設としてスタートした。平成7年に高齢者介護の特養部を立ち上げ、特別養護老人ホームをはじめ、通所介護、訪問介護、訪問看護など在宅サービスを展開。高齢化が進行する市内の北広島団地を中心に、地域に根ざしたケアを提供してきた法人である。
 北広島団地は、JR北広島駅の南西に広がる集合住宅を中心とした住宅地域。隣接する札幌市のベッドタウンとして昭和44年から開発が進められ、同地域の人口は北広島市全体の4分の1にあたる約1万60000人にのぼる。同地域では急速な少子高齢化が進行しており、平成26年7月末現在の高齢化率は39.3%、市全体の高齢者の約4割が同地域に生活している。
 北広島団地の現状について、同法人常務理事・総合施設長の三瓶徹氏は次のように語る。
 「北広島団地では一人暮らしや夫婦のみの高齢者世帯、認知症の人が急増しています。老老介護や認知症の人の徘徊・行方不明、虐待、孤立、無縁死などの生活課題が浮き彫りになるとともに、地域住民のつながりも希薄化しています。このような制度だけでは対応することのできない地域の課題に取り組むことは、社会福祉法人の大切な使命であると考え、世代間を超えた共生の理念のもと、積極的な交流を行うことで孤立感を軽減し、互いに支えあうことのできる地域のコミュニケーションの拠点として、平成22年に『北広島団地地域交流ホームふれて』を開設しました。一人ひとりの地域住民の尊厳を保ち、安心して生活することができる地域の実現に向けて取り組んでいます」。


▲ 平成22 年に開設した「北広島団地地域交流ホームふれて」の外観

 住民主体の活動を行う「地域交流ホームふれて」を開設


 開設にあたり、地域住民が主体となり自らの力で安心して暮らし続けられる地域をつくることが重要であるという考えから、開設前に地域住民による運営検討委員会を立ち上げ、拠点となるために必要なことや、どのような場にしていきたいかについて検討を重ねたという。
 団地中心部の廃業した民間の入浴施設を改修した「北広島団地地域交流ホームふれて」は、1階に地域交流スペースと地域包括支援センター(北広島市委託事業)、2階に通所介護事業所の「デイホームかたる」が入る。地域交流スペースには喫茶コーナーやキッズコーナーを設けており、高齢者のみならず、子どもや子育て世代といったさまざまな世代が集う空間となっている。月1回開催するイベント型サロン「地域のお茶の間」では、さまざまなジャンルのコンサートなどを無料で開き、毎回80 人ほどの参加がある。

                
 ▲ 「ふれて」の1 階にある交流スペースでは、喫茶コーナーやキッズコーナーを設置。さまざまなイベントを開催し、子どもから高齢者までが集う ▲ 「ふれて」内の通所介護事業所で行う介護予防体操。利用者と一緒に地域住民が身体を動かすことも日常的にある。

 「ふれて」の活動について、同法人管理課長の向山篤氏は、「当施設では、『地域のお茶の間』や、子育て世代同士の情報交換の場となる『ふれて・プレママカフェ』『まーぶるひろば』など多くのイベントを開催しています。また、喫茶コーナーやイベントの企画・運営は開設後に新たに結成した『ふれて市民スタッフの会』が行っていることが特徴です。スタッフ間で上下関係はつくらず、それぞれの趣味・特技を生かして活動に参加してもらっており、現在スタッフ数は61 人にまで増えています。施設ボランティアといった奉仕の精神というよりも、自分たちの力で地域を楽しく盛りあげることにやりがいを感じてくれている方が多いことは、私たちの目指す住民主体の活動につながっています」と語る。

 さまざまな交流から住民同士の支えあいが生まれる


 そのほかにも、ミニ講座や地域の生活課題を解決するワークショップを定期的に開催。ミニ講座では介護予防や認知症の理解を深めるといった介護に関するテーマのほか、実際に同市で発生した消費者トラブルの対策など、地域で暮らし続けていくために必要な情報提供を行っている。
 ワークショップでは、市民スタッフを中心に、市内にある道都大学の教授や学生も参加し、地域の生活課題の解決について考える場としている。北海道では冬場の除雪も大きな生活課題となる。学生の発案により希望のある高齢者宅の除雪を行う「雪かき交流まつり」の活動が始まるなど、さまざまな交流から地域住民の支えあいがいくつも生まれているという。
 「毎年開催する『ふれてフェスティバル』には、1000人を超える地域住民の参加があり、大変盛りあがります。ちなみに喫茶コーナーや祭りなどの収益は当法人に入れるのではなく、市民スタッフの会が話しあい、地域に必要なことに使用しています。取り組みの一つとして、地域の養護学校が製作するベンチを購入し、高齢者が休めるように団地内のバス停に設置する活動を行っています」(三瓶常務理事)。
 開設から4年が経ち、同施設の年間延べ利用者数は1万人にのぼるなど、地域になくてはならないつながりの場として浸透している。


 廃校となった小学校を利活用し、地域包括ケアの拠点に


 さらに同法人は、平成26 年4月に少子化に伴う統合により廃校となった小学校を利活用し、「北広島団地地域サポートセンターともに」を開設している。
 小学校を改修した「ともに」は、2階建てで延べ床面積は5568 平米。同法人では新規事業となるサービス付き高齢者向け住宅、複合型サービス、グループホームに加えて、既存事業である訪問看護事業所、訪問介護事業所、居宅介護支援事業所を法人本部から移転し、地域交流スペースを加えた7事業を展開している。日常生活圏域として最も利便性が高い小学校を地域包括ケアシステムの拠点とし、さまざまな生活課題を抱える地域住民のニーズに対応して、「だれもが健やかに安心して暮らせるまちづくり」を目指している。

                
 ▲ 平成26年に開設した「北広島団地地域サポートセンターともに」の外観。 ▲ 「ともに」の玄関ホール。小学校を改修したため、施設全体が広々とした設計になっている。

 なお、小学校を利活用した経緯については、北広島市の小学校跡施設利活用事業の採択を受けたもので、土地・建物は市からの無償貸与だという。
 「北広島団地地域サポートセンターともに」について、同センター施設長の中川浩一氏は次のように語る。
 「当センターは、住まいとして自由度のあるサービス付き高齢者向け住宅を用意し、訪問介護やグループホームのほかに、『通い』や『泊まり』、『訪問介護・看護』を一体的に提供する複合型サービスを併設しています。要介護度が重度で医療ニーズの高い高齢者にも対応することで、可能な限り地域で生活を続けていただける環境をつくっています。また、『ふれて』と同様に地域交流スペースを設置するとともに、『ともに市民スタッフの会』を発足し、当センターをどのようなセンターにしていきたいかを一緒に考えています」。
 サービス付き高齢者向け住宅は全31 室で、居室面積は26 .40平米〜 34 .00 平米と広々とした4タイプの居室を用意。グループホームは9 人2ユニットの定員18 人となるが、いずれも開設前に定員に達したという。複合型サービスの登録は25 人で、1日の定員は「通い」が15 人、「泊まり」が6人となっている。なお、サ高住ではセンター内の体育館を利用して、入居者と介護予防体操を行う活動を始めている。

                
 ▲ 「通い」や「泊まり」、「訪問介護・看護」を一体的に提供する複合型サービスは、毎回なじみの介護・看護職員が関わることで安心感がある。 ▲ 体育館は地域住民のサークル活動や子ども、障害者スポーツなどに利用されるほか、サ高住の入居者が介護予防体操の場としている。

 地域交流スペースについては、喫茶コーナーやキッズコーナー、学校ならではの体育館やグラウンドのほか、町内会の会合や住民のサークル活動といったさまざまなイベントに利用できる活動室を5 つ設けた。活動室と体育館は市の条例に基づき、有料での貸し出しとなるが、高齢者の健康・介護予防につながる活動や子ども、障害者に対しては無料開放となる。体育館やグラウンドでは、地域のスポーツ少年団や障害者スポーツ団体などの利用があり、活動室に宿泊も可能なため、合宿が行われることもある。


▲ 5 室ある活動室は、さまざまな広さが用意され、利用目的により選択が可能。

 多様なサービスを組みあわせ、その人にあったニーズに応える


 このように同センターでは、生活する高齢者だけでなく、さまざまな地域住民が集まり、人と人がふれあえる環境にあるため、常に活気にあふれている。それは地域の生活様式が丸ごと建物のなかに入っている感覚で、生活する高齢者にとってもよい刺激となっている。
 また、学校を利活用したことで、施設の閉鎖的なイメージがないといった声が寄せられ、入居者の家族からの訪問が多いことも特徴だという。
 「入居者のなかには、ご主人はサ高住、奥さんはグループホームに入所している夫婦もいます。当初、奥さんが別のグループホームへの入所が決まり、一人暮らしとなるご主人のサ高住への入居相談に来たのですが、奥さんも当センターのグループホームに入ることでいつでも会えると提案したものです。歳をとってからの施設入所などで、夫婦が別々に暮らすことが当たり前になっていることもあるので、それが実現したときはご本人・家族には大変喜んでいただけました。サ高住の入居者はレストランで食事をするのですが、その夫婦はグループホームで一緒に食事しています。サ高住は住まいなので、そういった自由度がありますし、『ともに』のもつ多様なサービスを組みあわせ、その人にあったニーズに応えられることは大きなメリットになっています」(向山氏)。
 今後の課題については、「ともに」の運営を安定させることをあげている。法人の発想だけでなく、地域住民の意向を取り入れているため、資金などを理由に地域貢献を縮小させるようなことがあってはならないとしており、そのためには複合型サービスを軌道にのせることがポイントだと中川施設長は話す。
 「複合型サービスは地域で暮らし続けるために必要なサービスですが、人員配置基準が厳しいことや、まだ利用者に認知されていない面があります。しっかり理解してもらうための働きかけが課題になります」。
 現在、社会福祉法人には地域貢献の取り組みが求められている。高齢化が進む地域で住民同士の支えあいを再構築し、地域包括ケアの拠点づくりを進める同法人の取り組みは参考となるだろう。


住民と一緒に住みやすい地域をつくる
社会福祉法人北海長正会 北広島団地地域サポートセンターともに 施設長 中川 浩一氏

 当センターは、「だれもが健やかに安心して暮らせるまちづくり」をコンセプトにしていますが、ここに生活している方にとっては、さまざまな世代の方と交流が図れることに、他ではない面白み、可能性を感じていただいています。
 地域交流を進めるためには、私たちがあまり前面に出てしまうと、押しつけになり継続しませんので、地域住民の自発的な活動を促すことが重要です。我々はコーディネーター役となり、地域の課題に気づいてもらえるように情報発信や仕掛けをつくることが大切となります。
 このような地域住民が主体となる取り組みは、確実に地域の力となり、人と人とをつないでいますが、それは地域包括ケアの重要な部分だと思っています。
 これからも住民と一緒に、今よりも少しでも住みやすくなったと思われるような地域をつくっていきたいと考えています。

情報発信や啓発活動は社会福祉法人の使命
社会福祉法人北海長正会 常務理事・総合施設長 三瓶 徹氏

 当法人では「ふれて」や「ともに」を地域交流の拠点として開設していますが、ただ「施設をつくりましたので、来てください」というのでは、うまくいかないでしょう。私たち自身が積極的に地域に出向いて、法人の事業や考え方を理解していただくことを大切にしてきましたが、そのような信頼関係があって成り立っています。拠点とは施設がなるのではなく、相談すれば何でも対応してくれるという信頼を築いていくことが拠点の本当の意味だと思います。
 また、国では地域包括ケアを推進しているところですが、いくら行政・事業者が取り組みを進めたとしても、地域住民の理解がなければシステム自体は機能しません。当法人ではミニ講座やワークショップを開催していますが、地域が抱えている課題などをしっかり情報発信するとともに、「自分たちの生活は自分たちで守っていく」という考え方につながるような啓発をしていくことは社会福祉法人の使命だと考えています。このような啓発活動は、さらに積極的に行っていきたいと思っています

<< 法人概要 >>
法人名 社会福祉法人北海長正会
理事長 長澤 邦雄 氏 総合施設長 三瓶 徹 氏
施設開設 平成26年4月 職員数 106人(法人全体375人)
法人施設 北広島リハビリセンター特養部四恩園(介護老人福祉施設、短期入所生活介護、通所介護)/北広島リハビリセンター更生部(障害者支援施設)/北広島リハビリセンター療護部(障害者支援施設)/北広島リハビリセンター診療部(附属診療所)/障害者生活支援センターみらい(障害児相談支援事業)/デイホームさとみ(認知症対応型通所介護)/北広島団地地域交流ホームふれて(地域交流事業)/デイホームかたる(通所介護)/北広島市みなみ高齢者支援センター(地域包括支援センター:委託事業)
併設施設 サ―ビス付き高齢者住宅(31室)/グループホーム(定員18人)/複合型サービス(登録25人)/訪問看護事業所/訪問介護事業所/居宅介護支援事業所/地域交流スペース
電話 011−373−7007 FAX 011−373−7227
URL http://www.shionen.or.jp/


※ この記事は月刊誌「WAM」平成26年11月号に掲載された記事を一部更新して掲載しています。
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