サービス取組み事例紹介
高齢者福祉

社会福祉法人暁会

高齢者の「健康づくり」、「生きがいづくり」を担う医療・福祉の複合施設 メディカルケアタウン東大島

平成26年4月に開設した「メディカルケアタウン東大島」は、健康増進・地域交流サロンを併設し、地域の高齢者の「健康づくり」や「生きがいづくり」を行うとともに、元気なうちから地域ぐるみ・施設ぐるみの関係性をつくり、高齢者が地域で孤立しないための地域づくりを進めている。その取り組みを取材した。

※ この記事は月刊誌「WAM」平成27年3月号に掲載されたものです。

医療・福祉の複合施設「メディカルケアタウン東大島」を開設


 東京都江東区にある「メディカルケアタウン東大島」は、特別養護老人ホームやクリニック等のほか、高齢者の「健康づくり」や「生きがいづくり」を担う健康増進・地域交流サロンを併設した医療・福祉の複合施設として、平成26年4月に開設された。同施設は、江東区の小学校跡地を活用した高齢者福祉施設の整備・運営事業の公募の採択を受けた社会福祉法人暁会と、関連法人となる特定医療法人茜会との合築施設となっている。


▲ メディカルケアタウン東大島

 平成8年に設立された社会福祉法人暁会は、山口県下関市を拠点に高齢者福祉・障害者福祉・児童福祉に取り組み、施設・在宅サービスを総合的に展開。関連法人の特定医療法人茜会は、同市の地域医療を担う療養型病院である昭和病院(398床)を中心に、3つのクリニックと在宅サービスを運営し、地域に密着した医療・福祉サービスを提供してきた法人である。
 小学校跡地に建てられた「メディカルケアタウン東大島」の敷地面積は5000平米。都営地下鉄新宿線「東大島」駅から徒歩5分に位置し、近隣に大型ショッピングセンターや商店街のほか、公園が隣接するなど交通アクセスと生活の利便性を兼ね備えた好立地にある。
 南棟、北棟の2棟からなる地上6階建てで、南棟の1階にショートステイ、2〜6階に特別養護老人ホームが入る。北棟の1階はクリニック、通所リハビリテーション、健康増進・地域交流サロンを併設し、2階に都市型軽費老人ホーム、3〜4階に介護専用型ケアハウスが入っている。

                
 ▲ 特養の各ユニットにある共同生活室 ▲ 特養の居室。施設内にクリニックがあることで、健康管理が行いやすく安心して暮らせる環境を整備

  要介護度の段階によって入居先の選択が可能


 同施設のコンセプトについて、「メディカルケアタウン東大島」事務長の森永康則氏は、次のように語る。
 「当施設は『地域』、『利用者』、『施設』の3者が相互に作用しあう三位一体型地域密着事業所を目指すことを運営理念に掲げています。公募の整備内容は特別養護老人ホーム、都市型軽費老人ホーム、地域交流・健康増進スペースの開設でしたが、関連法人となる特定医療法人のクリニックと介護専用型ケアハウス、通所リハビリテーションを併設することで、より利用者に安心して生活していただける環境としました」。
 入居施設の特別養護老人ホームと介護専用型ケアハウスは、ともにユニットケアを導入しており、特養は10人×10ユニットの定員100人、介護専用型ケアハウスは8人×4ユニットの定員32人、地価が高い都市部で整備が進むよう、従来の軽費老人ホームの居室面積・職員配置の基準を緩和し、所得の低い高齢者でも入居可能な料金設定となる都市型軽費老人ホームの定員は20人となっている。
 「入居施設ごとの平均要介護度は特養が3.9、ケアハウスが2.3で、都市型軽費老人ホームの利用者は基本的に自立の方になりますので、要介護度の段階によって入居先の選択が可能になっています。開設から9カ月が経ちますが、いずれもほぼ満室で、とくにケアハウスの入居希望者が多く、現在43人の方に入居待ちしていただいている状況です」と森永事務長は語る。
 また、施設内にクリニックがあることで、入居者の健康管理が行いやすく、医療相談も気軽にできるため、安心して生活してもらうことにつながっている。なお、クリニックでは地域に向けての一般外来や、通院が困難な人に対しての往診・訪問診療も行っている。


▲ 併設のクリニックは入居者だけでなく、一般外来のほか、往診・訪問診療も行う

 地域交流スペースでさまざまなイベントを開催


 また、同施設の大きな特徴として、健康増進・地域交流サロンを併設し、地域住民に開放していることがあげられる。健康増進・地域交流サロンは、ふれあいラウンジ、健康増進スペース、キッズコーナー、情報コーナーを設けており、江東区民であれば初回利用時に登録することで自由に利用することができる。
 ふれあいラウンジは、約40人がくつろげる広さがあり、趣味や教養の講座、カラオケ、演奏会など、多くのイベントを定期的に開催している。イベント開催時以外でも、お茶やコーヒーなどの飲み物を無料で提供しており、友人同士で会話を楽しんだり、地域の情報交換をするなど、コミュニティの場として、常に笑い声が絶えない賑やかな雰囲気となっている。


▲ 地域住民の集いの場である「ふれあいラウンジ」では、趣味や教養の講座、カラオケ・演奏会など、さまざまなイベントを開催

 「イベントなどを通じて、新たな人との関わりをもつことや、趣味をみつけてもらうことは、『生きがいづくり』や『地域づくり』を進めていくうえで大切になります。地域のなかには工作や演奏など、趣味や得意な分野をもつ方が多くいらっしゃいます。そのような人に中心となってもらうイベントを企画・開催していることも、生きがいづくりにつながっていると考えています」(森永事務長)。地域交流サロンでは、入居者が一緒に参加できるイベントも開催し、地域住民と交流する場面がつくられている。
 未就学児と保護者を対象にしたキッズコーナーでは、絵本や遊具を用意し自由に遊ぶことができる。絵本の読み聞かせ会や親子ヨガなど親子で楽しめるイベントも行うほか、保護者同士の情報交換の場にもなっている。


▲ 地域交流サロンにあるキッズコーナー。絵本の読み聞かせ会や親子ヨガなど、親子で楽しめるイベントを開催

 健康増進スペースで介護予防プログラムを実施


 健康増進スペースでは、おおむね60 歳以上の人を対象に、トレーニングマシンと歩行プールを使った介護予防や生活習慣病の予防を目指し、江東区の独自事業である「介護予防元気生き生き事業」を実施している。
 健康増進スペースでの取り組みについて、同法人特別養護老人ホーム・都市型軽費老人ホームあかつき苑施設長の長尾朋絵氏は次のように語る。
 「健康増進スペースには作業療法士、健康運動指導士を配置し、スタッフが利用者一人ひとりにあった継続可能な運動プログラムを作成しています。1回30 分のプログラムを10 人ずつで行うのですが、最初に作業療法士による集団トレーニングのほか、マシンやプールを使った個別メニューを実施します。さらに日常生活のアドバイス等も行っています」。

    
 ▲ 健康増進スペースでは、トレーニングマシンと歩行プールを使用した介護予防を実施。作業療法士が利用者一人ひとりにあった継続可能な運動プログラムを作成している

 利用料は1回100円( 30 分) とリーズナブルな料金設定で、利用者が多いことから予約制にしている。1日に9回行っているが、常に予約で埋まっている状況だという。
 なお、平成27 年1月現在の健康増進・地域交流サロンの登録者数は1909人で、1日の平均利用者数は150〜200人にのぼる。
 健康増進・地域交流サロンが多くの地域住民に利用されている理由について、森永事務長は「地域が求めているニーズにあっていたというのが一番だと思います。とくに健康増進スペースは大変評判がよく、ほぼ無料に近い料金で介護予防の運動ができるという話が口コミで広がり、それに付随して地域交流サロンも認知されていった印象があります。もうひとつは、開設にあたり住民説明会を何度も開催しましたが、もともと地域交流サロンに対しては高い関心がありました。そこでサロンをどのような場所にしていきたいかについて、地域住民と一緒になって話しあいを行ってきたことも大きいのではないでしょうか」と語る。
 さらに、地域交流サロンでは、地域住民に楽しんでもらうイベントだけでなく、クリニックの医師や作業療法士による健康づくりや生活習慣病予防策などの医療・介護に関する講習会を定期的に実施している。今後必要となる情報提供や啓発活動を行うことは、社会福祉法人や医療法人に求められる大きな役割といえるだろう。


 職員の募集活動を開設1年半前から開始


 また、同施設の開設にあたっては多くの介護職員を確保する必要があり、都市部で介護人材が不足しているなか、開設の1年半前から募集活動を始めたという。新卒を確保するための学校訪問にはじまり、江東区の区報や開設前にホームページを作成し募集したほか、施設の沿線である都営地下鉄新宿線に中吊り広告を6カ月にわたり掲載したという。
 「中吊り広告は、新しい施設ということで『自分たちで作り上げていくことができる』という内容を強調しました。毎月、掲載内容を変えて広告を出したため費用はかかりましたが、面接を行った際には、広告内容に魅力を感じてくれた応募者が予想以上に多くいました。また、少しでも印象に残るようにスタッフのことを”キャスト“と呼びかけました」(森永事務長)。
 これらの募集活動により、山口県にある法人本部から異動してきた職員のほか、110人の職員を確保することができたという。現在の人員体制については十分に確保できているというが、東京都の人件費が高いことや、山口県から異動してきた職員とのバランスが難しいとしている。現在の課題については、クリニックと通所リハビリテーションの稼働率を高めることをあげる。
 「クリニックでは一般外来や訪問診療も行っていますが、現在は入居者の方を診ることが中心になっており、地域の患者はあまり多くないのが現状です。理由として、高齢者の方はすでにかかりつけ医をもっていることが多く、利用者を増やしていくのはすぐには難しいというのが正直なところです。しかし、まだ私たちのアピール不足の面もありますので、地域の皆さんにもっと使っていただける働きかけをしていきたいと考えています」(森永事務長)。


 さらに地域のニーズに対応した施設を目指す


 今後の展望については、開設から間もないこともあり、これまで同法人が培ってきた手法でサービス提供を行ってきたが、さらに地域のニーズにあった取り組みを進めていきたいとしている。
 「当施設は立地条件がよいこともあると思いますが、面会が非常に多いことが特徴で、ご利用者のご家族には大変ご協力いただけています。また、地域交流サロンを通じて地域の方との関係づくりができていますので、今後さらにご利用者・ご家族の意見をお聞きするとともに、地域の方との交流を深めて、地域が求めているニーズに対応した施設にしていきたいと考えています」と長尾施設長は語る。
 地域住民の「健康づくり」や「生きがいづくり」を行うとともに、元気なうちから地域ぐるみ・施設ぐるみの関係性をつくり、高齢者が地域で孤立しないための地域づくりを進める、同施設の取り組みが今後も注目される。


地域に頼りにされる施設を目指す
社会福祉法人暁会/特定医療法人茜会 メディカルケアタウン東大島 事務長  森永 康則氏

 当施設は医療・福祉の複合施設として、特別養護老人ホームをはじめ多様な入居施設を用意し、利用者にとって最適なサービスを選択できるとともに、併設するクリニックで健康管理を行うことで安心して暮らしていただける環境を整備しています。
 また、健康増進・地域交流サロンを併設し、地域に向けて開放していることが、当施設の大きな特徴となります。このような地域貢献に対する取り組みは、慈善事業ではありませんが運営のうえでは負担になります。実際に健康増進・地域交流サロンには1 日150 〜 200 人の利用がありますので、無料提供している飲み物代だけでもかなりの費用がかかります。
 しかし、地域のコミュニティの場として、元気なうちから地域や施設との関わりをもっていただくことが地域づくりとなり、利用者の生きがいづくりや介護予防に確実につながっていますので、健康増進・地域交流に力を入れている施設として、果たしていかなくてはならない重要な役割だと考えています。
 今後も地域の求めるニーズに対応し、頼りにしていただける施設を目指していきたいと思います。

<< 法人概要 >>
法人名 社会福祉法人暁会
理事長 社会福祉法人暁会 吉水 千賀子 氏    特定医療法人茜会 吉水 一郎 氏
施設開設 平成26年4月 職員数 139人(平成27年2月現在)
併設施設 特別養護老人ホームあかつき苑(定員100人)/短期入所生活介護あかつき苑(定員10人)/都市型軽費老人ホームあかつき苑(定員20人)/あかねクリニック(内科・リハビリテーション科)/介護専用型ケアハウスあかね(定員32人)/通所リハビリテーションあかねデイケアセンター/健康増進・地域交流サロン
電話 03−5875−5255 FAX 03−5875−5202
URL http://m-caretown.com/


※ この記事は月刊誌「WAM」平成27年3月号に掲載されたものです。
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