サービス取組み事例紹介
障害者福祉

福井県 社会福祉法人コミュニティーネットワークふくい

最先端の学校給食事業で安全な食の提供と働きやすい職場創出を実現 C・ネットふくい丸岡

企業との連携や、ユニークな事業を取り上げ、他にはない先進的な事業を展開する事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)




調理から配膳まで。驚きのランチタイム!


ランチルーム

 平成19年開校の福井県坂井市立丸岡南中学校は、給食を社会福祉法人C・ネットふくいが担うという全国でも珍しい取り組みでスタートしました。受託したのは、知的障害者33名が勤務する就労継続A型事業所です。時間厳守、一度に多くの食事提供、食材・費用の厳しいチェックなど制約の多い学校給食への挑戦。普通なら二の足を踏んでしまう事業にあえて取り組んだ背景には、前丸岡町長林田氏の給食に対する思い入れと福祉への造詣の深さがあります。
 「楽しく食事ができること・選択できること」にこだわり、設計して作ったランチルームは、全校生400名が一同に会する吹き抜けの空間。そこで提供される給食は、なんと2種類のメニューから選択できるシステムです。
 給食業者に求められる仕事は、日々2種類の献立を用意し、カフェテリア方式のランチルームで配膳まで行うこと。町長は、各地を視察する中、たまたま浜松の病院で給食事業に従事している知的障害者を目にし、真空調理を使った給食設備と、それを使いこなす知的障害者。「これだ」と確信し、C・ネットふくいに白羽の矢を立てたのです。

 4時間目の授業が終わると、生徒たちが続々ランチルームにやってきます。「こんにちは」「いらっしゃいませ」。カウンターで配膳を行う障害者従業員と生徒たちがごく自然にあいさつを交わし、事前に希望メニューを登録したカードを機械にかざすとAメニューかBメニューかが電光表示される仕組み。間違えることなく、生徒たちが自分の食事を取っていきます。今日はどうやらBの麺メニューが人気の様子。うどんの配膳は6秒で1食配膳しないと時間内に間に合わないので、他のスタッフも応援にまわります。そんな仕事を皆さん全く慌てずパーフェクトな仕事ぶり。圧巻のランチタイム風景でした。


1日600食超の昼食提供を無理なくできる調理システム


大なべを洗浄する従業員

 丸岡南中事業所は、中学校の向かい側にあります。セントラルキッチンとしての事業所とサテライトキッチンの中学校内給食室が隣接していることで、効率よく作業を進めることができる設計です。
 400食の学校給食に加え、弁当も作っているとなれば、さぞ朝早くから調理に入っているのかと思いきや、勤務時間は8:30〜17:10。特別早く出る必要はないとのこと。秘密は、前日調理を可能にした「クックチル方式」にあります。これは、食材を加熱処理後、一定温度まで急速冷却し、細菌の繁殖を抑えて保存、提供直前に再加熱する調理方法で、美味しく、安全に食事を提供できるシステムとして外食産業等で採用されているものです。肉・魚・野菜それぞれ下処理後、加熱処理をしてから急速冷却。前日にここまで行い、0〜3℃で冷蔵保管すれば、翌日は、再加熱して盛り付けるだけでOK。前日調理を事業所、当日調理を中学校内給食室で行っていますので、学校で再加熱・盛付が次々に行われている同じ時間帯に、事業所内厨房では、翌日の給食に備えて下処理、加熱調理が進んでいるというわけです。セントラルキッチン内は、材料の検収・下処理室、加熱処理室、冷却室、盛付・仕分室、器具洗浄室、カート・容器洗浄室など作業工程ごとに仕切られ、高度な衛生管理体制が整えられています。その管理体制はHACCP(ハサップ=危害分析重要管理点)を採用したもので、万全の体制で安心・安全を実現しています。
 キッチン内を歩くと、食の安全が守られている設備・体制づくりが、実は安全で働きやすい快適な職場づくりにもつながっていることに気づかされます。決まった場所(機材や調理員の立ち位置)、マニュアルに沿った作業工程、注意事項の表示等々ルールがあらかじめ定められているので、判断に迷うことなく作業に従事することができます。調理器具の洗浄ひとつとっても細かな手順が定められているので、忠実にそれを行うことが最も重要なのです。障害者従業員もそれぞれの持ち場で、自分の役割を果たし、力を発揮していることが、自信あふれる表情・動作からうかがえました。


緊張感・誇り・プロ意識


給食開始直前スタンバイ

 先進事例にふさわしい設備と仕事ぶり。全国各地から見学が絶えないというのもうなずけます。が、最初から全てうまくいったわけではありません。事業所は、給食開始の1年前からプロジェクトチームを結成し、従業員は設備導入前から衛生管理や調理の訓練を繰り返し行ったとのこと。障害者従業員の多くは地域の授産施設等に通っており、調理経験などない方ばかり。1年がかりで勉強し、仕事を覚えていったとの事。カフェテリア方式への対応も初体験で、最初は、時間内に配膳できず、午後の授業に影響が出たこともありました。それらに対して、時間差で食べる提案など、生徒会の発案で改善され、学校側の協力を得て今のスタイルが確立しました。完璧な安全性、時間との戦い・・・どんな事業でもそうですが、学校給食には特に高いプロ意識が求められます。「完全な給食サービス」を遂行している現場は、緊張の連続です。給食開始30分前、10分前と迫る時間に合わせて着々と準備を進め、開始5分前にはカウンター前でスタンバイ。最初の生徒が来て、30分ほどで配膳完了。バックでは、すでに片付け開始。この間、無駄な会話はいっさいありません。

 スタッフが昼食をとるのは片づけが一段落してからの14時前後。プロ集団の仕事ぶりに脱帽です。
 「以前は施設で箱折をしていた方が、ここまでできるようになった。」本人もそれを支える職員も、誇りを持てる職場なのだと実感しました。教育の現場で障害者が働く姿を日常的に目にする環境が作られている。本当にすばらしいことです。


それでも採算をとるのは厳しい業界。弁当増産で利益確保


事業所厨房での弁当製造

 すばらしい学校給食事業ですが、経営的にみると、そう甘いものではありません。公立中学の給食ですから給食費収入は決して多くはなく、そのうち食材費として使わなければいけない額も定められ、自ずととれる粗利額が決まってしまいます。経費を考えると「400食ではとても合わない」のが実態です。給食室の設備は市の整備ですが、事業所のセントラルキッチンには相当な設備投資をしており、借入金の返済もしていかなければいけません。給食だけでは採算がとれないことは当初から想定され、法人内給食、外部への弁当販売も並行して行い、現在のところ、法人内給食で1日約160〜170食、県庁、民間企業等への弁当販売で100食ほどを製造しています。配達時間を見込んで作業を進めるとなると、クックチル方式とはいえ、午前中の厨房はかなりの忙しさです。事業所に設けられた盛付室の広さはそれほど大きくないため、一度にまとめて作るには工程を工夫し、できたものから順次出荷していく仕組みが作られています。配達先別に目標時間が定められ、計画的に作業が進められます。給食同様こちらも緊張の現場です。最近では土日の行楽弁当なども引き受けながら売上確保に努めているとのこと。味・価格を評価されて注文は増えていますが、作って配達となるとそう簡単なことではないと考えます。
 事業開始から2年が経過し、事業全体が軌道には乗っているものの、ますますの事業拡大が求められ、挑戦は続きます。


C・ネットふくい全体で地域の食を守る取り組み


配膳風景

 C・ネットふくいは福井県内に11の事業所を有し、そのいくつかの事業所では本格的な農業に取り組んでいます。あわら事業所で収穫した米は丸岡事業所内の低温貯蔵庫で保管され、必要分を適宜精米して使用しています。生徒たちが口にするごはんは県内産100%、精米仕立ての美味しいごはんです。野菜は美山事業所が地元農家と連携して提供する旬の野菜がふんだんに使われています。梅、柿、梨など地域の特産品も豊富にそろい、食材から一貫しての安全・安心が保障されているのです。「地産地消」や「食育」が、表面的なものでなく、地に足のついた取り組みとしてここまで実践されている点も特筆すべきことといえるでしょう。

 農業という生産活動から給食・弁当事業という消費者への商品・サービス提供まで、地域の食を担う事業を法人全体で一体的に取り組む中で、障害者がやりがいを持って働ける雇用の場を創出しているという今回の先進事例。できることなら真似をしたいと考える福祉事業者も多いのではないでしょうか。「言うは易し、行うは難し」であることはここまで見てきたとおり。「容易ではないけれど、やると決めたからにはやる。やりきるからできる」。丸岡中学校の生徒をはじめとする地元の多くの人々の期待、全国の障害福祉関係者の期待を背負い、丸岡南中事業所、そしてC・ネットふくいは前進を続けます。


取材日 : 平成20年10月

今回のポイント


@ クックチル方式、HACCPを導入し、安全性が高く、しかも働きやすい給食事業の職場を創出している。
A 毎日選択食の献立、カフェテリア方式で配膳まで実施という最先端の学校給食事業で地域に貢献するとともに、障害者理解という教育的効果をもたらしている。
B 法人内複数の事業所が連携し、高齢化の進む地域農業を支援しながら地域の食に関わる多様な事業を展開し、「食育」「地産地消」に貢献している。


中小企業診断士 稲山 由美子

施設概要


施設名 C・ネットふくい
丸岡(南中)事業所
設置者名 社会福祉法人コミュニティーネットワークふくい
所在地 福井県坂井市丸岡町高瀬15-11-1
電話番号 0776-68-0761
代表者 管理者 吉川 幸一 氏
施設種類 就労継続支援A型事業
障害種別 知的障害
開所時期 平成18年4月
障害者従業員数 34名
健常従業員数 21名(常勤11名、非常勤10名)
FAX 0776-68-0769
連絡担当者 近者 篤 氏
事業内容 学校給食事業、弁当製造販売、バイオディーゼル燃料事業
給料 71,146円
(時給換算526円)
URL http://www.c-net.or.jp


平成22年1月現在

事業所コメント


平成18年4月に、地元自治体と連携し、全国初のクックチル方式を採用し、学校給食の提供や配達弁当を行っている。
また、平成20年3月には、福井県版HACCP(食品衛生管理プログラム)の認証を取得し、安全・安心な食品の提供に努めています。