サービス取組み事例紹介
障害者福祉

福井県 社会福祉法人コミュニティーネットワークふくい

地元農家を助け、担い手になることで地域に貢献 C・ネットふくい あわら

企業との連携や、ユニークな事業を取り上げ、他にはない先進的な事業を展開する事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)




事業目標は「地域産業の担い手になること」


従業員の描いた農作業の様子

 社会福祉法人コミュニティーネットワークふくい(略称:C・ネットふくい)は、福井県内の11市町で就労継続A型、就労移行、生活介護、生活訓練、ケアホーム、通勤寮の各事業を展開し、地域の障害者を支援しています。今回取材の「あわら事業所」は、法人最初の通所授産施設で、県北部にあり、障害をもつ人たちに働く場の提供と地域農業の担い手になることを目標にしています。
 C・ネットふくいの取り組みは、農業作業だけにとどまらず、「地域農業の担い手になる」ことを目指している点で、やり方、仕組みづくり、目標とする事業規模が、地方の福祉サービス事業所とではまったく異なります。何がどのように異なるのか、ひとつひとつ見ていくことにしましょう。


農業生産法人の設立


農業生産法人シーネット坂井外観

 通所授産として農業を始めた頃は、個人の土地を借りて米や野菜作り。
 地区の柿や梨畑が高齢化の進む中で担い手が減り、収穫の手伝いや草刈りの依頼に応えているうちに梨園・柿畑の全体管理となり、米、野菜、果樹それぞれに対応した機械設備を整えてきました。しかし、農地は農業の専従者しか借りられず、平成13年、農業生産法人「有限会社シーネット坂井」を設立。「認定農業者」として、本格的な農業を目指すことにしました。そして、農地の借用や農業用設備の導入は農業生産法人が行い、農業生産法人の下請けとして、あわら事業所が農作業を担っています。
 また、農業生産法人の経営は、北陸農政局のOBをスタッフに招き、専門性の高い人材配置等ハード、ソフト両面で農業のプロ化を進めています。


「地域農業の担い手」だからこその設備投資


精米作業を行う従業員

 農業生産法人との連携による、本格的な事業展開では、水田面積2800aの内、米の作付面積1600a、転作(麦・大豆・そば)約1000a。素人の筆者にはどの程度の規模かよくわかりませんでしたが、車で案内の道中、道の両側見渡す限りの田んぼ、田んぼ。「このあたり一帯全部。」と言われ、道に立てられている看板には「福井県特別栽培農産物 認証生産圃場」と書かれています。収穫した米は、低温貯蔵庫で保管され、使用分を順次精米プラントに移して精米するなど「付加価値の高い農産物」を出荷します。
 平成16年、米の販売規制緩和に伴い、「米の取り扱い業者」として、個人のお客様、飲食店、スーパー、県内外の福祉事業所等に販売しています。県内産の複数のブランド米を、お客様の要望に合わせて適時・適量お届けする仕組みと品質管理の高さが支持される理由です。米の登録検査機関としての認定も受けており、JAS法に基づく産地・品種・銘柄表示も万全の体制がとれています。果樹栽培も、生産者としての健全経営者事業モデルとしており、農家からの依頼を受けても、土地の良し悪し、栽培状況、管理状況を判断のうえ、採算の取れる畑のみ引き受けています。特産品の刀根柿、平種無柿を専用の脱渋する装置で2昼夜熟成させ、利益確保を目指しています。


喜ばれる仕事で活躍する障害者従業員


梨の収穫を行う従業員

 あわら事業所の勤務時間は8:30〜17:10.1日7時間半の労働が基本です。職場には、法人理念、重点課題、部門別の目標売上等が明示されているほか、5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)の意識が徹底しており、道具の設置場所などが種別ごとの色分けできちんと表示されており、誰もが迷うことなく、効率よく作業のできる環境が整えられています。作業開始時、終了時、休憩時それぞれに音楽とメッセージで合図が出されるなど1日の流れにメリハリをつける工夫もされていて、心地よい緊張感のある職場という印象を受けました。
 精米の担当は、几帳面で米粒1つもムダにしない、きれい好きな方。草取りや収穫作業は繰り返しの作業に強い体力のある方など個性を生かして仕事ができるよう支援しています。その成果もあって、農家の人の指名で仕事の依頼が来るなど、事業所も従業員も地域から厚い信頼を得ている様子がうかがえます。
 大型の農業機械、精米機、脱渋設備など高品質の農産物を生み出す機械設備により、生産性の向上を図る一方で、人の手を必要とする細やかな作業は、障害者従業員の活躍分野ととらえ、両者の組み合わせで強みを発揮しています。摘果、花粉とり、花粉つけ、袋掛け、収穫など梨の栽培には年間を通じてたくさんの手作業が発生する他、干し柿、かきもちの生産も手間のかかる仕事です。


C・ネットふくい全体で地域の食を守る取り組み


果樹園前に設置されている看板

 米、野菜、果樹の地元スーパーへの出荷、消費者への直販などが浸透し、「C・ネットの農産物」は地域で高い認知を得ています。梨や柿の季節には、お客様から注文の問い合わせが入るなど、お客様との良好な関係も作られています。食の安全が叫ばれる中、あわら事業所の取り組みは地域で根づき、評価されているのです。しかも、C・ネットふくい全体を見渡せば、法人内の他の事業所でも農業に取り組んでいるところがいくつかあり、これらとの連携・協力のもと、ダイナミックな取り組みが行われています。美山事業所では、地元農家と連携し、事業所と農家で多様な農産物を個人客に届ける「会員制野菜宅配システム」を今期スタートさせました。梨や柿の季節にはあわらの商品も入ります。梅産地の若狭事業所では、梅の生産を行っていますが、繁忙期には、あわらからも泊りがけで応援に入るとのことです。
 丸岡南中事業所では、中学校の給食事業を実施。食材には、限りなく美山やあわらの農産物が使われるなど、地産地消のモデル給食が実践されています。
 「農作業は、利用者の適性に合う」「休耕田を活用した仕事づくり」など地域にある資源を障害者の働く職場にする」という目標を設定して取り組んだ姿です。「妥協せず、できるまでやる。どうすればできるかを考えて実行する。」ことを教えてくれる先進事例です。


取材日 : 平成20年10月

今回のポイント


@ 農業を本格的に実践するため、農業生産法人を設立し、福祉事業所と連携しながら事業拡大できる体制を整えている。
A 高品質の農産物を生産するのに必要な設備を整える一方、手間のかかる作業を障害者従業員が担当することで強みを発揮している。
B 法人内複数の事業所が連携し、高齢化の進む地域農業を支援しながら地域の食に関わる多様な事業を展開し、県内外の消費者から支持を得ている。


中小企業診断士 稲山 由美子

施設概要


施設名 C・ネットふくい あわら事業所
設置者名 社会福祉法人コミュニティーネットワークふくい
所在地 福井県あわら市山室72-98
電話番号 0776-73-1040
代表者 管理者 坂崎 公則 氏
施設種類 就労継続支援A型事業
就労移行支援事業
生活介護事業
障害種別 知的障害
開所時期 平成3年4月
障害者従業員数 26名
健常従業員数 11名(常勤10名、非常勤1名)
FAX 0776-73-1013
連絡担当者 近者 篤 氏
事業内容 農業(米、野菜、柿、梨等)
手袋製造
リサイクル(空缶、ペットボトル、ウエス、もみがら燃料・製造)
給料 59,248円
(時給換算374円)
URL http://www.c-net.or.jp


平成22年1月現在

事業所コメント


あわら市や隣接の坂井市の家庭や事業所から出る、空缶やペットボトルのリサイクル事業と農業生産法人と連携で取組む農業など、地域との繋がりを大切にし、社会貢献に努めています。