サービス取組み事例紹介
障害者福祉

鹿児島県 社会福祉法人 白鳩会

法人内連携で付加価値を高める 花の木冷菓堂

企業との連携や、ユニークな事業を取り上げ、他にはない先進的な事業を展開する事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)




循環型農業から生まれた地元生まれのジェラート


 鹿児島県肝属郡南大隅町の地域に溶け込み、根をおろしている「花の木農場」。社会福祉法人「白鳩会」と、農事組合法人「根占生産組合」から構成され、安心・安全な食の提供と、障害者が生き生きと働く場を提供する施設の総称です。「花の木農場」では循環型農業の実践や、トレーサビリティのとれた食品を提供しており、茶や大豆、花卉(かき)、野菜、養豚と多様な農産物・畜産物の生産をおこなっています。その南大隅の広大な農地で生産した大豆を、法人内施設「花の木大豆工房」で豆乳に加工をして、さらにその豆乳からつくった地元生まれのジェラートを、鹿児島市内で製造・販売している施設があります。それが今回ご紹介する「花の木冷菓堂」です。花の木冷菓堂のジェラートは、豆乳ベース、ミルクベース、シャーベットベースの3種類。素材に合ったベースを用いて、多種多様な季節の味をお届けしています。



「イタリア仕込の技×地元産の旬の素材」でどこにも負けない商品づくり


東寛人氏
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 「私たちは、今までにないジェラート作りを目指しています」花の木冷菓堂で販売・総務のリーダーをしている東寛人氏は語ってくれました。
 ジェラートといえば、イタリア人にとっては欠かせないデザートで、映画「ローマの休日」でオードリー・へプバーンがジェラートを食べるシーンは有名です。そのイタリア仕込みのジェラートを専門に製造・販売する店舗が、鹿児島で話題となっています。鹿児島市鴨池町の団地に囲まれるように立地する「花の木冷菓堂」です。



ジェラート作りの風景
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 主なお客様は、団地に住む主婦や子供ですが、最近ではクチコミで評判になっていることもあり、女子大生もわざわざ花の木冷菓堂のジェラートを食べるために足を運んできます。今回は、その人気の秘密について、伺いました。



ジェラートは利用者が作業をしやすい最適な商品


ジェラートの設備
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 「私たちは冷菓の業界でも後発になるので、独自性の高い商品を出すことで、お客様に喜んでいただきたいと思っています」と東寛人氏は語ります。
 花の木冷菓堂の中村祥子・施設長が、イタリアにパティシエとして留学しているときにジェラートの製造を知って、これなら私たちでもできるかもしれないと思ったことがきっかけでした。ジェラートは専用の設備で丹念にかき混ぜながら作っていくため、アイスよりも空気を含んでふんわりと触感が良く、味にコクがあります。



カップ詰め
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 製造機は、イタリアから取り寄せた特殊な設備を導入しています。この設備を使うことで、製造自体はソフトクリームなどと同様にほぼ自動なので、原料投入などの前準備と製造後のカップ詰めなどに利用者は作業を集中することができます。それらの手作業はマニュアル化しやすく、自閉傾向が強い利用者も充分にこなせます。
 重度の利用者も戦力として活躍できると確信し、このジェラート事業で仕事を覚え、働く喜びを感じてもらうことを目指しました。



市場で競争できる商品を開発する


接客の様子
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 花の木冷菓堂では様々なブランド育成の取り組みをおこなっています。
【商品開発】
 その一つは、トレンドに合わせた商品開発です。最近の、野菜を使ったデザートブームにもいち早く対応し、消費者のヘルシー志向に対応して、トマト、ホウレンソウ、ルッコラ、カボチャ、にんじんなど、「これがアイスになるの?」と思うような野菜を美味しく仕立てた新商品を次々発売しました。秋には栗、かぼちゃ、ピスタチオなどで季節感を出したところ話題性が高まり、テレビなどのマスコミに取り上げられました。大きな宣伝効果が得られることで、売上アップにつながっていきます。
 自分たちの商品知識や経営資源だけでは限界があるため、地元の農家に野菜の特性や加工方法のアドバイスをもらっています。また、販売先企業の意見を取り入れたPB(プライベートブランド)商品の開発もおこなっています。ある中華レストランからは「ココナッツアイス」が欲しいという要望を受け、共同で商品を開発しました。
【人材育成】
 設立当初は、ジェラートアドバイザーと契約して、開発や製造、管理にいたる技術指導を受けてきました。そのアドバイスをもとに、2時間に1回は店頭のジェラートを混ぜて空気を入れることにより、美味しく食べられるよう工夫しています。職員で現場のリーダー・水之浦チーフは神戸に1週間修業に出て、実地研修を受けてスキルアップをするなど、人材育成にも力を注いでいます。
【販売計画】
 季節ごとに新商品を発売して、お客様が選べる楽しさを演出しています。秋にはかぼちゃやマロン、柿などの旬の商材を使った新商品を開発して売っています。冬場の需要はどうしても落ち込んでいくので、アイスケーキなどの開発も進めています。クリスマスケーキの土台部分にジェラートを何層も重ねることにより、今までにない食感のケーキにしました。
【市場調査】
 さらに、他にない商品を目指して現在研究中なのが、「品種別のさつまいもデザート」。鹿児島と言えばさつまいもの生産量が日本一で、県民にもおなじみの食材です。さつまいもにもいろいろな種類があります。そのさつまいもの品種別の特徴も生かして、味や風味に変化をつけたさつまいもデザートを是非出したい、と開発に力を注いでいます。おいしいお店があれば試食をしに行ってメンバー間で情報交換をするなど、常に商品開発の参考になるものはないかと、アンテナを高くして活動しています。
 ブランド育成のためのさまざまな努力を行う中、一番の課題は商品開発のスピードです。福祉施設がやっているジェラートショップということで注目をされていることも否めませんが、福祉ではなくホンモノの商品力・ブランド力で市場の競争に勝てるお店づくりを今後も追求したいと思っています。



おいしさだけではなく、安心安全を消費者に届ける


ジェラート売り場
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 花の木冷菓堂のジェラートはおいしいだけではありません。安心・安全な原料を使うことにも気を配っています。豆乳ジェラートは同じ経営母体である農事組合「根占生産組合」で生産した大豆を、同じく同法人の「花の木大豆工房」で豆乳に加工しています。花の木冷菓堂では、その豆乳を原料として、ジェラートを作っています。
 日本の大豆の輸入品の割合は約95%と、ほとんどを海外品に頼っている状況です。しかし、花の木冷菓堂は同じ県内産でトレーサビリティがとれている安心・安全な大豆を使うことで、お客様に安心して食べていただけるよう、原料には格別にこだわっています。
 添加物を最小限に減らしていることも大きな特徴です。今はアトピー性皮膚炎などで、アイスクリームを食べられない子供も増えています。花の木冷菓堂のジェラートは卵を使っていないため、今までアイスを食べられなかった子供にも食べてもらえます。
 また、店舗のレイアウトにもこだわっています。製造現場を店頭からお客様に見ていただけるようにガラス張りにすることで、その場で手作りをして新鮮なものを提供していることをわかりやすく伝えています。



積極的な販路開拓


 「営業は大変ですが、やりがいも大きいです」と東氏は語ってくれました。花の木冷菓堂のジェラートは、市内4か所のレストランでも販売しています。地産地消を進める地元の有名ホテルは、原料から一貫して製造している生産システムを評価してくれています。ジェラートの販売先へ法人内で扱っているお茶や豚肉、餃子などの商品をお勧めして取り扱っていただくなど、販売面での相乗効果も発揮できています。
 今後は、お店をよりいっそう認知してもらうことが最優先課題です。道路沿いへの看板の設置や、地元情報誌での紹介などにより認知促進を図っていますが、今後はインターネット販売の拡大や移動販売、ギフト需要の掘り起こしなど、店舗外での販売により、さらなる販売促進を図っていくことも検討しています。



一般就労を見据えた支援


 花の木冷菓堂では、人それぞれの長所に合った作業を割り当てています。全員で全ての作業をできるようにしていますが、それぞれ得意とする作業のリーダーを利用者が担っています。これにより、各自が責任感を持って作業に取り組むことができています。
 工賃は高い利用者で25,000円、平均では11,000円となっています。工賃はカップ詰めを1分間で何個できるか、などの客観的な基準を作って納得感を高めるようにしています。
 ここで働く利用者から、2009年8月に1名が一般企業に就職しました。就労先はジェラート作りではなく、ほとんどの利用者が異業種の仕事に就くことを考えると、自立して生活や仕事をしていくためにどんな支援が必要かを、じっくりと時間をかけて話し合うように気をつけています。職員は利用者の表情の変化に気をかけて、声かけをすることを大切にしています。日々の話し合いの中で、その日に気を付けることを確認して、その日のうちに課題をクリアしていくようにしています。
 ブランド力をつけてお客様に喜んで買ってもらえる商品を提供しつづけること、地元の取引先や専門家と連携して常に業務をブラッシュアップしていくこと、常に就労を見すえて日々の活動をおこなっていくこと、これらの活動を通じて育んだことが、工賃アップや就労支援につながっていくことを、花の木冷菓堂の事業を通してかいま見ることができました。




取材日 : 平成21年10月

今回のポイント


@ 法人内の商品、販路の活用、差別性のあるブランド開発により、市場競争力のある事業をおこなっている
A 地元の農家や取引先、専門家と連携した事業展開を図っている
B 常に一般就労を見すえて日々の活動の計画・実行・修正のサイクルを回している


中小企業診断士 堀切 研一

施設概要


施設名 花の木冷菓堂
開所時期 平成19年7月
(施設は平成20年1月)
設置者名 社会福祉法人 白鳩会
利用者数 就労移行利用者6名
(施設全体は14名)
所在地 鹿児島県鹿児島市鴨池新町28-2
職員数 常勤2名、非常勤6名
電話番号 099-251-1192
FAX 099-251-1181
代表者 理事長 中村 隆重 氏
連絡担当者 中村 祥子 施設長、
東 寛人 氏
施設種別 就労移行支援、自立訓練(生活訓練型)、生活介護
事業内容 ジェラート製造販売
障害種別 知的、身体(内部障害)
平均工賃 11,000円/月
URL http://www.hananoki.org/