サービス取組み事例紹介
障害者福祉

千葉県 特定非営利活動法人自立サポートネット流山

地元生産の野菜を地元の人に提供し地域と就労をつなげるいろいろやハーモニー

取材日:平成20年5月
地域住民を巻き込んだ事業スタイルや、自治体との連携をした事業、地域の特産品を活かした事業等、地域と連携をしながら発展する事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)




地産地消 旬の野菜を売る農産物直売所


 いろいろやハーモニーは千葉県流山市にある心身障害者小規模福祉作業所です。主な事業は野菜の販売。旬の農産物直売所として、地元で収穫された野菜を地元の人々に提供する地産地消のお店です。また旬の野菜をふんだんに取り入れた個数限定のハーモニー弁当も健康志向の多くの方々から高評を得ています。
 店内には、見ているだけで身体の内側から健康になれそうな野菜がずらり。ふっくらと質感のある大根、つやつやと透明感のある新たまねぎ、ふさふさとした緑葉付きの人参、新緑の季節をいっそう鮮やかに彩る葉物野菜の数々。毎日の食卓に並ぶ、気取らない野菜ばかりが総数にして約800から900束。これらは全て地元流山の農家から直接入荷します。
 そして、このいろいろやハーモニーでは障害者11名(精神、身体、知的、中途障害)と職員、ボランティアの皆さんがお客様とのふれあいを楽しみながら働いています。ここでは障害者を利用者ではなく従業員と呼んでいます。


地元農家30軒と連携 野菜は毎日ほぼ完売状態


葉のたくさんついたニンジン

 いろいろやハーモニーは平成14年に設立。そろそろ6年を迎えようとしています。当初、事業のひとつとして、地域の人とのちょっとした関わりの中から始まった野菜販売ですが、年々取扱量が増え、今では総収入の約65%を占めるまでとなりました。「ここ2、3年ようやく地域に定着してきたなと思います」と話すのは店長の大島健一さん。
 農産物直売所という名の通り、ここは農家が直に野菜を売る場所です。地元の農家と消費者をつなぐ場所として販売スペースを提供し、販売業務を行なって、その取扱手数料を受け取る仕組みになっています。いろいろやハーモニーは、独自で仕入れをしません。万一販売に至らなかった野菜は農家が引き取ってくれるので「在庫を抱えるリスクがないのが経営の安定性に大きく寄与している」と大島さんはいいます。野菜を提供する農家は約30軒。「野菜の種類、量、値段は全て農家の自主判断で行なっているため、品目はその日の朝になって見ないとわからない。旬の時期には同じ野菜がたくさん並び過ぎて売り切るのにとても苦労することもありますよ(笑)」。
 品目の調整なしに売り切るのは大変なのではという心配をよそに、野菜は毎日ほぼ完売状態。返品はほとんどないそうです。“持ち込まれた野菜は売り切ろう!”という方針のもと従業員が一丸となって働く店の雰囲気に、「いろいろやハーモニーに持っていけば売ってくれる」という認識が農家に生まれ、一軒あたりの持ち込み量が少しずつ増えて、野菜部門の業績が拡大してきたといいます。


開店前からお客様の列


レジの様子1

 店の開店時間は午前11時。従業員は10時に出勤して朝礼を始めます。接客商売なので明るく元気良くが基本。毎朝、みんなでラジオ体操をします。朝礼では従業員のかけ声のもと「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」の唱和も欠かしません。その後は開店準備に大忙し。農家の方々が車で入れ替わり今日の野菜を搬入して来ます。それらを受け取り、検品し、お客様が手に取りやすいように短時間で陳列していきます。店の清掃、レジの準備、のぼりや看板のチェック、価格表の記入なども従業員の仕事です。これらを職員の指導のもと、全員が役割分担しておこないます。一日に数人の従業員が出勤するそうですが、それぞれが担当場所で率先して動く姿に、皆が仕事に愛着を持ち、作業内容がすっかり定着している様子がうかがえます。
 開店時には店前にお客様が列を成します。「早く来ないと売り切れちゃうから、開店と同時に来るのよ」というのは週2回自転車で買いに来る年配の女性。旬の野菜はあっというまに売れてしまうのを常連のお客様たちは良く知っています。来店客数は一日約200人前後。多い時には300人にもなりますが、そのうち約8割のお客様が開店から約2時間のあいだに来店するといいます。その間、店内は大忙し。従業員はどのお客様にも「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と明るく声をかけ、レジでは袋に入らない野菜を半分に切ったり、葉を落としたりと心を配る様子が見られます。お客様の流れは入店から支払いまでスムーズで、障害者が運営しているお店だと特別意識する人は少ないのではないかという印象を受けました。


店の雰囲気づくりが収益向上に


レジの様子2

 野菜の販売が事業の柱として大きく成長したのはなぜでしょうか。
 大島さんと代表者の松本さんは「野菜は生活必需品であること。そして食の安全が声高に言われる中で、うちは生産者の顔が見える食材を扱っていること」と話します。取り扱う野菜には全て生産者の名前が書かれており、お客様の中には“○○さんのトマトが好きだから”という指名買いの方もいます。また、「朝採りの野菜だから新鮮。しかも農家直売だから安い」というのも大きな要因です。おいしくて安いものを消費者が見逃すはずがありません。近隣地域の皆さんのニーズに応え、便宜と利益をもたらしていると思います。
 一方、店の雰囲気づくりも収益の向上につながりました。「皆で声を出し、明るい店づくりを心がけました。従業員が暗くしていたら、お客様は入ってこないですから」と大島さん。お客様から野菜の調理法を聞かれたり、時にはお客様から新しいレシピを教わったり。野菜を介してお客様とのコミュニケーションの機会が増え、中にはそれを楽しみに来店するお客様もいるそうです。従業員の本庄さんは「常連のお客様とは話ができる。農家の人とも話せるし、人とのつながりがおもしろい」とにこやかに語ります。また、佐藤さんは「お客様がたくさん来てくれて、野菜がどんどん売れていくのがうれしい」と話します。いろいろやハーモニーは精神障害の従業員が多いですが、「この仕事につく前と後では目の輝きが違う。皆、生き生きとしてくる」と大島さんは言います。


採用時は研修期間を設け、仕事が続けられるか判断を


店長 大島さん

 従業員の給料はまず時給100円から。勤務日数を積み重ねて行けば500円まで上がります。これは何よりも継続して働くことによって生活のリズムを整え、安心安定した気持ちを保っていくことを重視しているからです。現在の平均給料は 月額 約3万円。多い人は約6万円です。
 通所決定には20日間ほどの研修期間を設け、お互いにこの仕事を続けていくかどうか考える期間をつくります。大島さんは「重視するのは本人の意思。この場所で継続して働いてみたいと興味を持てるかが第一。何ができるかはその次の話」と、まずは時間を守って通うこと、そしてチームで仕事をする職場環境に馴染んでいけそうかを見極めます。その後、本人の希望と適性を見ながら勤務の日数、時間帯、仕事内容(例えばレジ係、店内清掃環境整備係等)をきめます。そのようなステップが踏まれるため、辞める人はほとんどいないそうです。ここで自信をつけ、一般就労に移行した人もいます。
 今後、野菜の販売事業を拡大していく計画はあるのでしょうか。代表者の松本さんは「事業の拡大も大事ですが、まずは皆の日々の様子を見て丁寧にサポートすることが最優先。障害者が安心して継続して働ける場にしたい」と強い決意を語ってくれました。


取材日 : 平成20年5月

今回のポイント


@ 地産地消。地元生産の野菜を地元の人に提供するという経営方針が明確になっており、新鮮で安価な野菜を取り扱っている。
A 地域に開かれた店としてお客様との関わりを重視し、明るく元気な接客を心がけ実践している。


中小企業診断士 荒木 さと子

施設概要


平成25年1月1日現在

施設名 いろいろやハーモニー
設置者名 特定非営利活動法人自立サポートネット流山
所在地 千葉県流山市平和台3−2−25
電話番号 04-7157-9933
代表者 理事 勝本 正實 氏
施設種類 地域活動支援センターV
障害種別 身体、知的、精神、中途障害
開所時期 平成14年6月29日
利用者数 14名
職員数 6名
FAX 04-7157-9933
連絡担当者 店長 松本 千里 氏
事業内容 野菜の販売、手作り弁当販売、作業所製品販売、リサイクル品販売
平均工賃 月額29,100円(平成18年度)