サービス取組み事例紹介
障害者福祉

福島県 NPO法人こころん

食と農をコンセプトに地域と積極的に連携する『直売&カフェこころや』

地域住民を巻き込んだ事業スタイルや、自治体との連携をした事業、地域の特産品を活かした事業等、地域と連携をしながら発展する事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)




朝採りの新鮮野菜とこだわりの食品が揃う店


 のどかな田園風景が広がる福島県南部の泉崎村。そこに直売&カフェ『こころや』はあります。事業は近くの契約農家・農園からの旬の野菜や地域の特産物の直売、その野菜を使ったランチやスィーツ、ドリンクを提供するカフェの2本柱です。
 1日3食の食事をきちんと食べるという当たり前の行為が余りに大切にされなくなり、それが生活習慣病やストレス障害を抱えた人の増加につながっているのではないかー。そんな思いから、“もう一度「食」を見直そう”というのが、こころやのコンセプトです。
 ですから、店内には近隣の泉崎村や白河市などの農業生産者が丹精に育てた朝採りの野菜や果物が並べられ、ビタミンカラーが目にも鮮やかです。食の安全を考えて作られたこだわりの調味料、漬物や惣菜なども並べられています。
 木のぬくもりを感じる店内にはBGMにジャズやポップスが流れ、お洒落なカフェランチを楽しむこともできます。そんな店内で精神障害者15名が各自の役割を意識しながら元気に働いています。


お客様が開店を待つ繁盛店に


木の温もりを感じる明るい店内

 こころやの1日は、野菜の入荷と陳列から始まります。営業時間は10時からですが、農家の方の持ち込みや、利用者が集荷した野菜を目当てにお客様が来店され、午前中店内はごった返します。 泉崎村や白河市の近隣農家の野菜や果物です。朝採った野菜が直ぐに店に並べられるという鮮度と、農家からの販売手数料は15%というお値ごろな価格が受けています。人気の野菜は午前中に完売という状況です。
 11時からはカフェのランチタイムがはじまり、手作りのランチを目当てに女性客の方が中心に来店されます。15時くらいからは午後の繁忙時間が始まり、ほぼ完売します。
 平日でも160人、休日ともなると200人以上のお客様が来店される繁盛店になっており、売上も順調に伸びています。
 開店当初から「障害者と地域が連携した直売所」という話題性で地元TVや新聞等でも取り上げられたこともありましたが、経営面でも常に工夫していることも大きな理由でしょう。HPで店内のイベントや販売商品をこまめに情報発信し、大手流通業の勤務経験がある非常勤職員から陳列や店舗管理の手法を学びながら、お客様に喜ばれる方法を常に模索しています。


責任を持って働くことで元気になれる


利用者が販売の中核に

 こころやで働く利用者は精神障害者の方です。店舗での勤務は、仕事が自分の判断で出来る方を条件に時給300円から始まります。1日5時間以上働けることと、あるいは月間の勤務予定時間を80%以上達成できたことを条件に昇給させて時給500円まで上がります。
 利用者の勤務時間は9時〜18時。都合に合わせてシフトを組んでいます。最初は1時間や2時間と短時間しか働けなかった方も、お客様やスタッフ同士のコミュニケーションを通じて徐々に体調を整えられるようになり、長時間勤務が可能になっているそうです。
 店舗では、利用者、職員の業務の差はありません。カフェの調理は専門の職員が中心にはなりますが、カフェの菓子作りや配膳、直売所の集荷や入荷交渉、販売管理まで全ての仕事を利用者が担当しています。
 「責任を持つことは大変ですが、スタッフのみんなに頼りにされているのが正直うれしい」と利用者の1人がにこやかに語ってくれました。
 「利用者は得意な仕事を担当してもらうと、達成感によって大きく変わっていきます。周囲の利用者もその影響を大いに受けていきます。」と副理事長の熊田さんは話します。ただ、利用者が自分のペースを保てるように声をかけ、配慮していくことは必要だと言います。


障害者と地域両方を支える店をつくる


農園で実習する利用者

 平成14年設立のNPO法人こころんが、「こころや」を開設したのは平成18年10月のことです。休耕田になっていた敷地300坪を借り受け、一部を県基金などから助成を受けて70坪の店舗を建設しました。開設のきっかけは、法人が近隣の農業生産法人や酒造会社、そして地域の方と3年前に始めた「里山再生プロジェクト」でした。@休耕田の再利用を行なうこと、A障害者や健常者を問わず様々な方が農業を通して、安心して参加できず就業支援を図っていくこと、B料理酒米づくりで、生産・加工・販売までの一連の流れに参加する、というのが大きな目的です。
 熊田氏は、プロジェクトの参加を通して、地域の農業を支えていくことと、障害者の就労の場を一緒に実現できるのが直売所の設置だと思い至ったそうです。ですから、こころやでは酒販許可も得てプロジェクトで作った料理用酒を販売し、栽培した大豆を使った味噌、食べられるのに様々な理由で市場に出荷されない果物で作ったジャムなどを取り揃え、地域の農業を販売という形で支援しています。
 こころやでは、年3回仕入先の生産者会議を開き、店舗の運営状況を開示するほか、生産者同士の情報交換の場にして、品質の向上にも寄与してきました。当初は市場出荷の規格外のものを入れていた農家もあったそうですが、直売所で自分の商品を消費者が直接購入する姿を見ることで、より良いものを出荷しようという意欲につながっています。
 プロジェクトは就労移行の農業実習にもつながりました。現在、連携した農業生産法人へ利用者3名が週3日通っています。利用者も「農業実習は、自然の中で働ける楽しさを感じる」と、活き活きと従事しています。


コミュニケーションが障害者を変えていく


陳列作業をする利用者

 こころやでは、白河市内の商店街の空き店舗を活用したチャレンジショップに、毎週木曜日に出店して直売を行なっています。農業と街、生産者と障害者と消費者も連携して、地域活性化の一役を担っています。
 熊田さんはコミュニケーションという言葉を口にします。「美味しいものを食べたら“これはどこから買ってきたのか”“どこで取れたのか”“誰が作ったの”など、そこからコミュニケーションが生まれ、知識も広がります。そんな上手なコミュニケーションが対人関係のストレスを少なくし、あるいは障害を軽くしていけるのではないでしょうか。」
 地域とのコミュニケーションは「こころや」を実現させ、一般企業や病院への就労にも結実しています。本来であれば全員に一般就労を目指してもらいたい。そのためにも「こころや」をより良いものにして就労支援をしていくことが使命と感じているそうです。「職員研修も都内の先進的な店舗施設を見学します。どんどんと新しいスタイルを追求していこうと思っています」と熊田さん。
 こころやの進歩はこれからも続きます。


取材日 : 平成20年10月

今回のポイント


@ 農業、企業や商店街など地域と積極的に関わることによって、幅広く障害者への理解を促している。
A 生活の基本となる農と食というコンセプトのもと、「直売&カフェこころや」や就労支援や農園での実習を通じ、障害者の生活のペースを整えながら働く意欲を高めている。


中小企業診断士 有村 知里

施設概要


施設名 直売&カフェこころや
設置者名 NPO法人こころん
所在地 福島県西白河郡泉崎村川畑37-1
電話番号 0248-53-5568
代表者 理事長 関 元行 氏
施設種類 就労移行支援、就労継続支援B型
障害種別 精神障害
開所時期 平成18年10月
利用者数 こころや 15名
(全体)就労移行20名・B型31名
職員数 常勤16名 非常勤12名
(法人全体)
FAX 0248-53-5568
連絡担当者 施設長 熊田 芳江 氏
事業内容 野菜・食品直売所、カフェ
平均工賃 20,608円
URL http://www.cocoron.or.jp/


平成22年1月現在

事業所コメント


今年は安全で栄養価の高い卵の生産を始めました。
全国のみなさまに新鮮でおいしい野菜や食品を直接お届けできるよう地方発送に力を入れたいと思います。
ぜひ「こころや」にご注文ください。