サービス取組み事例紹介
障害者福祉

東京都 社会福祉法人 森の会

地域との交流の場は自ら創り出す  広域地域ケアセンター バオバブ

地域住民を巻き込んだ事業スタイルや、自治体との連携をした事業、地域の特産品を活かした事業等、地域と連携をしながら発展する事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)




障がいに関わらず、みんなで一緒に生きていける社会を目指して


元倉施設長
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 「障がいがあってもなくても、みんなが一緒に生きていける社会になることを願って、私たちは活動をしています」
 「広域地域ケアセンター バオバブ」施設長の元倉康子さんの語られた想いに、バオバブの活動は凝縮されています。
 バオバブは、東京都東久留米市において昭和50年に開所し、35年に亘って地域に密着した活動を行ってきました。現在は、自立訓練、就労継続支援B型、就労移行支援の3つの事業を併設し、資源回収、公園清掃、自然食販売、喫茶業務、せんべい焼きの製造販売など5つの作業をしています。地域の方と積極的にふれあって共生することを目指して活動していたら、自然と今の事業にたどり着きました。

理念
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 この「障害をこえて共に生き共に働こう」という理念は、2Fのミーティングルームに掲げています。スタッフやメンバーの活動の原点になる考え方は、普段から目に入る場所に掲示し、ミーティングなどで周知徹底することが大事だと、元倉施設長は考えています。バオバブの木のように、四方八方に大きく伸びる枝葉の活動は、理念という太く大きな幹が支えていると言えるでしょう。







地域やお客様のニーズを起点とした煎餅の開発・販売


垂れ幕
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 バオバブの活動で特徴的なことは、地域住民と直接ふれあえる仕事を選択してきたことや、地域の方にバオバブの活動内容を発信する仕組みを作ってきたことです。バオバブは平成18年に4階建ての大型施設になりましたが、その際に大きな垂れ幕を設置しました。その垂れ幕の内容は50メートル先からも見えるほどのインパクトがあり、この垂れ幕を見て煎餅の発注をいただくことも多いそうです。
 「工賃アップの柱となる煎餅事業を、住民の皆さんにもっと知ってもらいたい」と理事長の福田さんは常々思っていました。デパートが垂れ幕で歳暮・中元やイベントを告知しているのを見て、「これをバオバブでもやってみよう!」と思いついたのがきっかけです。

東久留米駅舎煎餅
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 垂れ幕には「無添加煎餅の自家特製・販売」「絵柄入りオリジナルせんべいも受け賜ります」「御贈答・手土産にもどうぞ!!試食・見学可」と告知し、認知向上を図っています。この垂れ幕を直接見た方や住民の口コミにより、地元のお寺や企業からオリジナル煎餅の発注をいただいています。オリジナル商品の開発を請け負うケースは一般企業でも少なく、発注者からも大変重宝されています。





たけうち様店頭
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 地元のシンボル・東久留米駅北口駅舎は、残念ながら取り壊されることになりました。それを惜しんでデザインされたオリジナル煎餅は、駅前の酒店「たけうち」などで扱われており、商品開発や販売を通じた地元との交流も積極的に行っています。








交流の場や接点は自分たちが積極的に創る


ガレージ
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 「地域との交流の場は、自ら創出したい」という元倉施設長の想いは、施設の設備にも反映されています。施設の1階は回収したアルミ缶を潰し、仕分けをする作業所となっていますが、メンバーの作業が外から見えるように、シャッターが透明になっています。今回の取材中も、地域の方がお手洗いを借りにこられました。普段から施設の活動内容を見ていただくなどオープンな雰囲気作りをしていることで、住民の方から気軽に声をかけてもらえるのです。バオバブと地域住民の方との交流がとても自然に行われていることが感じられる、象徴的な出来事でした。


バオバブ便り
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 また、バオバブでは、地域住民の方に「バオバブだより」という広報誌を毎月1,400部配布しています。資源回収で1,200世帯を個別訪問しているので、ほとんどが直接手渡しでの配布です。このようにコミュニケーションの手段を自ら持っていることが、バオバブの強みでもあります。この「バオバブだより」は、資源回収の日程の告知や、自然食品などの商品を詳しく知っていただく“告知ツール”としても機能しています。また、地域の方に協力していただいたバザーや資源回収の売り上げを報告したり、メンバーの紹介をしたりと、双方向のコミュニケーションを図っています。
 また、バザーやディスコパーティなどを主催したり、お祭りやフットサル大会に参加することにより、定期的に他団体や住民との交流を図っています。これらのイベントをきっかけにして資源回収のボランティア登録をいただいたり、団体間の交流がはじまったりと、大きな効果を上げています。


地域住民の皆様の「ありがとう」の言葉が働きがいにつながる


真鍋さん
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 外に出て地域の方とふれあうことは、メンバーが生き生きと働くモチベーションの向上につながっています。雨の日や雪の日でも、メンバーの方から「早く資源回収にいきたい」と声があがるといいます。仕事に対する熱心な姿勢は、職員も頭が下がるほどです。
 「資源回収や清掃で地域の方に“ありがとう”、“助かります”と言われることが、メンバーの働きがいにつながっているのです。確かにリスクはありますが、外に出て行かなければ得られないものが絶対にあるんです」と元倉施設長は言います。
 「人とコミュニケーションを取ることや、人に感謝される喜びなどは、人間の根本的な欲求で誰もが持っています。それを頭ではなく体全体で感じられるのが、外での仕事なんですね」
 「そうやって中だけでなく外でもコミュニケーションを取っていると、最初は口数が少なかったメンバーもどんどん会話をするように変わっています」
 仕事を通じた交流は、バオバブのメンバーだけでなく地域にも良い影響を与えています。今回は、地域の代表として真鍋さんと山田さんにもお話を伺いました。
 資源回収のボランティアとして回収品を提供してくださっている真鍋さんは、バオバブの活動を設立当初から支えてきました。

山田さん
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 「私は周りの方に、バオバブの資源回収の利用をお勧めしています。お互いに名前を呼びあう関係ができているので、信頼してお願いできるんですね。資源を出す時は集荷場に持っていかなければならないケースが多いのですが、バオバブの皆さんは玄関先まで回収にきてくれます。体の悪い方や年配の方にとっては、とても助かるサービスですね」
 続けて山田さんは語ります。「バオバブは東京都だけでなく、隣接する埼玉県からもメンバーを受け入れ、資源回収などの活動をしてくれています。これは住民にとってはとてもありがたいですね。行政区分は縦割りで行われていますが、住んでいる方にとって行政区分はあまり関係ありません。そのいう行政区分を超えた活動は“広域”という名称で表わされているように、一部のエリアだけでなく、広範囲に及んでいます」
 山田さんはNPO法人「在宅福祉サービスステーション」に在籍して福祉に携われていますが、10年前にバオバブの活動に共感したことがきっかけだと語ってくださいました。バオバブとの接点がきっかけで、地域住民の方が“障がい”や“福祉”に目を向けられるケースも少なくないようです。


人材は“人財”


作業ボード
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 バオバブでは事業を支えるもっとも大切なキーは“人”にあると考えています。平成20年度は7人の職員が、36の研修や施設見学会、会議など参加しています。大きな戦力となっている19名のパートタイマーも、一部の研修に参加しています。その範囲は、障害や福祉に関する分野だけでなく、会計や食品衛生、大学のゼミなど多岐に渡っています。16時半に仕事を終え、大学院に通って研鑽を図っている職員もいます。
 福田理事長は、雇用や教育の仕組みをきっちりと整備することが、よい人材を集め、その人材を育てる基礎になると語ってくださいました。
 「いい職員なくして、いい施設にはなり得ません。一般企業以上の待遇や教育制度が不可欠だと思っています。職員を真剣にサポートしているので、職員も真剣にバオバブのために働いてくれるのだと思います。私は、バオバブで働いていることを職員には誇りに思ってもらいたいのです」

資源回収の心得
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 職員やパートタイマーの方とはミーティングを毎週行って、それを文書で記録に残しています。バオバブとして何を目指して、どう動いたらいいのかを明確にして、みんなで意思疎通を密に行っています。そのための仕組みとして“資源回収の心得”や“作業ボード”などを掲示して、すぐに見て確認できるような工夫をしています。いくら良い人材が揃っていても、向かっている方向性がバラバラで、一致団結できる体制が整っていないと、組織としてうまくまわりません。そのことを全員で理解していることが、バオバブの強みです。
 これまでご紹介してきた地域連携によるメリットは、メンバーの働きがいにつながっていると同時に、地域住民の方にとっても福祉に関心を持つきっかけになったり、あたたかい交流の機会になったりと、よい影響を与えています。
 その地域連携は、設立当初より貫かれている“理念”の実践と、たゆまない“人材育成” によって支えられていると感じました。


取材日 : 平成21年7月

今回のポイント


@人材育成に力をいれて「障害をこえて共に生き共に働こう」という理念を一丸となって実践している
A積極的に施設の外に出て、地域住民のかたと交流を深めている
B垂れ幕、広報誌、出張販売など、地域住民とコミュニケーションを取るための工夫をしている


中小企業診断士 堀切 研一

施設概要


施設名 広域地域ケアセンター バオバブ
設置者名 社会福祉法人 森の会
所在地 東京都東久留米市大門町2-13-11
電話番号 042-474-7895
代表者 理事長 福田 稔 氏
施設種別 自立訓練、就労継続支援B型、
就労移行支援
障害種別 身体、知的
開所時期 昭和50年(法人化は平成13年)
利用者数 37名
職員数 常勤7名、常勤以外19名
FAX 042-471-2734
連絡担当者 施設長 元倉 康子 氏
事業内容 資源回収、公園清掃、自然食販売、喫茶業務、せんべい焼きの製造販売
平均工賃 19,100円
URL http://www1.odn.ne.jp/morinokai-baobab/