サービス取組み事例紹介
障害者福祉

福岡県 特定非営利活動法人 福岡ジョブサポート

就労意欲を向上させるプログラムで支援に取り組む 福岡ジョブサポート

一般就労の実績が著しい事業者、企業内での実習の取り組みなど、一般就労へ向けた取り組みとして優秀な事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)




活動の原点は“違和感”


馬出の小規模作業所の様子

 特定非営利活動法人福岡ジョブサポートは、松本理事長と池田副理事長が中心となって立ち上げた福岡ジョブサポート研究会を前身とする法人です。
 研究会を立ち上げる以前、松本理事長は栄養士として入所授産施設に勤務していました。それまで障害者や施設と関わりを持ったことのなかった松本理事長は施設や施設を利用する障害者の姿に強い違和感を覚えたと言います。「一度入所したら、地域社会とほとんど関わることなく、施設の中で暮らし、訓練を行い、働くという選択肢しかないのはおかしいのではないか?」
 しかし、障害者が健常者と同じように地域の中で生活することを実現するためには、地域に障害者を支援する体制が必要となります。そこで、平成9年に研究会を立ち上げ、相談事業などソフト面のサポートを開始しました。
 平成11年には福岡市東区馬出に1つ目の小規模作業所、平成14年に福岡市東区郷口に2つ目の小規模作業所を開設するとともに、ジョブコーチ支援セミナーを主催するなど、障害者の自立や就労支援について多面的な活動を展開してきました。
 平成18年に特定非営利法人の認証を取得し、平成19年2月には郷口の作業所を就労移行支援事業と就労継続支援事業B型の多機能事業所に体系移行して現在に至っています。


ジョブコーチと向かい合って


ジョブコーチ付き就労の場で清掃の仕事をする利用者

 ジョブサポート(郷口)の就労移行支援事業の利用者は11名で、そのうち2名は現在トライアル雇用にチャレンジ中です。
 支援プログラムの柱は、老舗の菓子製造販売事業者の店舗でのジョブコーチ付き就労です。利用者が2名ずつローテーションを組んで月曜日から金曜日までの毎日10時半から12時半までの2時間、ジョブコーチの支援のもと実際に店舗での仕事に従事します。
 仕事の内容は概ね、晴れた日が店舗および店舗周辺の清掃、雨の日や催事の前には店舗のバックヤードでチラシを折るなどの軽作業となっています。
 取材にお邪魔した日は風の強い晴れた日で、利用者は店舗の周囲の落ち葉を清掃する作業を行なっていました。ジョブコーチの細かな指示がなくても、一通りの作業を手際よくこなすとともに、来店されたお客様にしっかり「いらっしゃいませ」と声掛けもしていらっしゃいました。
 作業が終了し施設に戻ると利用者は早速、作業日誌に今日の作業内容や上手にできたこと、反省点などを記入。各自、ジョブコーチからのアドバイスや指導を受けます。ジョブコーチと向かい合って直立し、ジョブコーチの言葉に真剣に耳を傾ける利用者の姿がとても印象的でした。


常に見られている緊張感


作業日誌に記入する利用者

 ジョブコーチ付き就労の経験は、@働くとはどういうことかを実感する、A一般就労に向けての意識を高める、B働く上で必要なマナーやスキルを身につけることができる、といったメリットがあります。
 施設の中で作業を行なっているだけでは、一般の就労とは同じ環境を提供することができません。障害のない店員が働く姿を間近に見ることや、常にお客様から見られている緊張感を体験することによって「働くってこういうことなんだなぁ」と実感できることは大きな意義があります。
 また、ジョブコーチが常に就労の場に居ることで、障害者が困ったり失敗したりした際に、その場でアドバイスを得ることができます。ただ単に障害者が安心感をもって働くことができるだけでなく、具体的かつ適切なアドバイスをすることによって障害者の成長も促しています。
 ジョブコーチ付き就労プログラムは、利用者が自信を持ってトライアル雇用や就職の面接に臨むうえで大きな効果を上げていることは間違いなさそうです。
 福岡ジョブサポートでは、さらに店舗での仕事とは違うタイプの仕事を経験できる就労の場(例えば、工場)を開拓していくことを目標にしています。


助走的サポート、実践的サポート


 福岡ジョブサポートでは、開設当初から現在までの間、延べ23名の障害者の一般就労をサポートした実績を有しています。その中には3回就労の場から戻ってきた人もいます。しかし、ジョブコーチ付き就労が支援プログラムの柱として確立しつつある一方、その他のプログラムについては「まだ試行錯誤の段階」ということです。
 就労への意識・認識を高めるために障害者個人の特性や希望に合う仕事についてディスカッションをするというような“助走的なサポート”や、高齢・障害者支援機構制作のビデオを活用して面接の練習をしたり、履歴書の書き方を学習するというような“実践的なサポート”もしています。利用者の状況や希望に応じて、こうしたサポートを組み合わせています。
 今後、成功した事例やうまくいかなかった事例を積み上げて整理していくことで、効果的な支援プログラムを作り上げていくことを目指しているそうです。


“本人の強い意志”が何よりも必要


郷口の拠点で軽作業をする利用者

 松本理事長は、今までの支援経験から「就労が成功するには、本人の‘働き続けることの意志の強さ’が何よりも大切。働くことは決して楽ではない。少々のことは我慢する。何とかここで頑張るという気持ちを持っていないと働き続けることは難しい」とおっしゃっています。そのため、「目標を達成するためには、今日一日を大切にしなくてはならない」と日ごろから利用者に繰り返しお話しするとともに、利用者の家族の認識の変化を促すことにも取組んでいます。
 また、障害者の就労をサポートする体制について、「一人の方を一箇所の施設で全てサポートしようと考えるのは良くない。地域にある施設、ハローワーク、就労支援センターや企業などがそれぞれの持ち味を活かしながら、きめ細かに支援できる体制を整えていくことが必要」と述べ、各機関が連携しながらサポート体制を築くことができるような働きかけを積極的に行なっています。現在トライアル雇用中の障害者は、連携体制が奏功してスムーズに就労へ移行する見込みとのことです。
 障害者が施設の中だけで生きていくことへの“違和感”から出発した活動が、障害者自身とその家族の意識を変え、地域で連携して障害者の暮らし・就労を支える活動へと力強く展開していく先に、“福岡では障害者の就労が特別難しいことではない”となる時がやってくると期待します。


取材日 : 平成20年4月

今回のポイント


@ ジョブコーチ付き就労プログラムが利用者の一般就労に向けての意識・意欲の向上に効果を発揮している
A 地域の機関が持ち味を活かしながらきめ細かなサポートを行える体制作りに積極的に取組んでいる


経営コンサルタント・中小企業診断士 大江 栄

施設概要


事業所名障がい者のはたらく拠点
福岡ジョブサポート 郷口
運営者名特定非営利活動法人
福岡ジョブサポート
所在地福岡市東区郷口町7-7
電話番号092-624-1773
代表者理事長 松本 玲子 氏
施設種類就労移行支援事業所
就労継続支援B型事業所
生活訓練
障害種別身体・知的・精神
開所時期平成14年12月
平成19年2月新体系移行
利用者数就労移行支援事業   12名
生活訓練   6名
就労継続支援B型事業  18名
職員数常勤9名 非常勤4名 計13名
FAX092-624-1774
連絡担当者松本 氏
事業内容ジョブコーチつき就労(菓子店)物流・加工作業、クロネコメー便、事務業務等
平均工賃時給125円(平成20年度概算)
URLhttp://www.jobsupport.org/

平成21年9月現在

事業所コメント


昨年度は定員10名のうち6名が就職され、元気に働いておられます。