サービス取組み事例紹介
障害者福祉

東京都 NPO法人 障害者自立支援センター多摩

地域住民の憩いの場として賑わう喫茶れすと

事業を活性化し、工賃を伸ばしている事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)





地域住民の憩いの場として賑わう「喫茶れすと」


活気ある店内の様子 多摩ニュータウンの永山駅から徒歩3分。「喫茶れすと」は、公民館・図書館・保育室などが併設されている多摩市の複合文化施設「ベルブ永山」2階のガラス張りのオープンフロアに位置し、図書館や公民館の利用者を中心にお客様がひっきりなしに訪れ、友人とのおしゃべりを楽しんだり、気軽にお茶を飲んだり、ゆっくりとくつろげる地域住民の憩いの場として賑わっています。
 運営母体の「NPO法人障害者自立支援センター多摩」は、「喫茶れすと」の他に菓子製造を行う共同作業所「れすと和田」を運営しています。かねてから「れすと和田」でつくるお菓子の販売場所として常設のショップの開所を望んでいた北山文子所長は、多摩市が新設の公民館「ベルブ永山」内に喫茶コーナーを設けることを知って、迷わず手を挙げました。
 「喫茶れすと」のスタッフは、現在、店長1人、パート8名、アルバイト1名、精神障害者(以下、メンバー)11名で構成されています。精神障害者にとっても接客のストレスが減るように、カウンターでトレーの上に乗せたもの、お客様が席に運ぶセルフ接客スタイルが採用されていますが、店づくり、メニュー、サービス、営業時間(AM9:30〜PM8:00 ※日祝はPM7:00迄、定休日 第一・第三木曜)、いずれをとっても、お客様に対して障害者福祉の店であることを特別意識させることなく運営されています。

“利用したい”喫茶店として選ばれるために


北山所長 「喫茶れすと」の出店にあたって、北山文子所長は「わざわざ公民館の2階に上がって喫茶店を利用してくれるお客様は少ないだろうし、経営的に採算は合わないかもしれない」と危惧しながらも、障害者雇用の店であることを意識させることなく、数ある喫茶店の中から“利用したいお店”としてお客様から選ばれる店を目指しました。
 近隣に有名チェーンのカフェやファストフードショップがひしめき合う中で、メンバーに工賃を支払いながら営業を続けていくために、「一般のショップ経営と同じ様に“どうしたらお客様に気持ちよくご利用していただける店にできるか”を常に意識して、プロや専門家の知恵を借りたり、本当に必要と思われる投資はしていこうと考えました。“こんなに一生懸命やっているのだから、わかってくれるだろう”というスタンスや“授産施設だから”という甘えを捨てるようにしました。」(北山文子所長)といいます。

プロの第三者の活用と積極的な投資


お菓子の並ぶ飾り棚 北山所長の言葉どおり、「喫茶れすと」の開業・運営にあたっては、従来の作業所運営の考えを払拭し、積極的な投資が続けられてきました。
 まず、開業するにあたって、北山文子所長は、以前から親交のあった地元の珈琲専門店「友愛」のオーナーをアドバイザーとして招聘しました。従来は何事も作業所の職員による多数決で決めていたそうですが、店舗全体に統一感を持たせるために、友愛のオーナーのアドバイスを受けながら、テーブルや椅子、ユニフォームや食器等、すべて北山所長のセンスで選定していったと言います。この「友愛」のオーナーに、年に数回、おもてなしの心・コーヒー豆のひき方の研修やサービスのチェックを受けるほか、経営面は経営コンサルタントから指導を受けるなど、プロの視点を積極的に取り入れていきました。
 また、開業当初、多摩市から「喫茶れすと」に割り当てられたのは、広いオープンフロアのわずか16席分のスペースだったそうですが、お客様を増やす努力を続けつつ、「テーブルやイスをこちらで購入するので、喫茶コーナーを広げさせてほしい」と多摩市に掛け合い、徐々に現在のテーブル席50席分までスペースを広げていきました。
 さらに、正面入口には、菓子陳列棚を設置して贈答用やテイクアウト用の菓子を並べるとともに、レジ横にはショーケースを設置して生ケーキを展開していきました。陳列棚やショーケースはいずれも設備投資がかかるものですが、「れすと和田」で自主製作の菓子・ケーキをつくることができるという“強み”を活かすためには、必要な投資と考えたのです。

集客数と客単価を向上させるメニュー強化


 ショーケース一杯に並ぶケーキは約10種類にのぼります。「喫茶れすと」では、いちごのショートケーキなどの定番の生ケーキに加えて、曜日ごとに異なるケーキも投入しています。「喫茶れすと」にとって、「れすと和田」でつくる生ケーキはお客様を引きつける人気商品なっており、ケーキセットがランチタイム以外の買い上げ金額の向上に一役買っています。
 また、コーヒー(一杯200円)はドリップしてから30分経過したら廃棄することを義務づけました。「いつでもお客様に煎れ立ての新鮮なコーヒーを提供したい」という思いからです。
 さらに、多数の集客と高い客単価が見込めるランチタイムメニューについては、定期的にスタッフ全員が参加する新メニュー開発会議を開き、2ヶ月に一度のペースで新しい企画メニューを提案する等、メニュー強化にも余念がありません。

接客力強化をはじめとする継続的な工夫と改善


 セルフ接客スタイルとはいえ、お客様に気持ちよく喫茶を楽しんでいただくためには“居心地のよさ”“気持ちのよい接客応対”が求められます。「喫茶れすと」が“利用したい”喫茶店として選ばれるために力を入れていることにスタッフ研修があります。
 「喫茶れすと」では、外部で主催されている接客・マナー研修にスタッフを出席させるだけでは、学んだ気になっても定着しないという考えから、公民館の定休日に外部講師を招き、ふだん接客している現場で、いつも利用している食器や設備を用いて、全スタッフを対象に接客・マナートレーニングを実施しています。ふだん接客している現場で接客指導を受けることで、今までは「気持ちがあるからできているであろう」と思い込んでいたことも、できていないことに気付かされたと言います。そして、1年後、再び現場でフォロー研修を実施することで、何ができるようになって、何が不十分なのか、スタッフ全員が問題意識を共有することができるようになり、着実に接客技術が高まってきました。
 また、2人1組になって、近隣の競合店の調査を行い、自店に不足している点は何か、自店がやれることは何かについて話し合ったり、年に1度、全国の作業所の先進事例の見学に出かけるほか、普段の営業においても、気づいた問題点の改善方法や新しい提案等をスタッフ全員で「連絡ノート」で共有化するなど、継続的に工夫と改善を重ねてきました。

“喫茶れすと”がみんなの励みに


笑顔のスタッフ こうした地道な努力の積み重ねの結果として、オープン当初、2000万円だった年間の売上は今期年商3600万円を狙える位置にまで伸びてきました。
 店舗を取り仕切る猪股なぎさ店長も、あまりに頑張り過ぎると具合を悪くしてしまうメンバーが出てしまったり、頑張りが空回りしてしまうメンバーがいたりと、精神障害を持つメンバーの気持ちを持続させていくことと、お客様の要求期待に応えることの両立の難しさを感じながらも、忙しい中でお客様に笑顔で対応するメンバーの姿や「働いて一人前に給料が取れるようになりたい」というメンバーの力強い言葉に、やりがいや手応えを感じている様子です。
 また、「喫茶れすと」の躍進にはパートタイマーたちの活躍も不可欠でした。猪股店長は、自分ひとりの力では「精神障害を持つメンバーたちを支えられない」という考えから、彼女たちにも会議や研修会に当たり前のように参加していただくなど、パートタイマーとはいえ重要な役割であることを常々意識づけしてきました。単に喫茶店で働くだけではなく「障害を持つメンバーたちを支えているんだ」という意識や、自分たちの頑張りが業績向上という成果につながっていることが、彼女たちに責任感ややりがいを与えているようです。
 「“喫茶れすと”が業績を上げていることは、“喫茶れすと”で働くスタッフの自信につながっています。
 でも、それだけではなくて、“れすと和田”や“れすと永山”など他の作業所のスタッフにも、ものすごい励みに繋がっているんです。“喫茶が頑張れているのだから、私たちだってやればできる”という希望になっているんです。」と、笑顔で語る北山文子所長。宮城県蔵王から豆乳を仕入れ2006年秋にオープンさせた「豆腐工房れすと」も徐々に軌道に乗りつつあります。「複数の作業所の相乗効果を高めながら、精神障害を持つ方の就労の場所を増やしていきたい」という北山さんの夢はますます広がりそうです。


取材日 : 平成20年1月


今回のポイント


@ “強み”を活かし、伸ばすために、必要な設備投資や時間的投資を行っている。
A ガラス張りのオープンフロアという明るく開放的な空間で、一定レベル以上のコーヒー・生ケーキ・ランチメニューを手頃な価格で提供することで、「美味しいコーヒーを飲みながら、ゆっくりとくつろいだり、会話を楽しみたい」というお客様の利用動機に応えている。
B 職員・パートタイマー・利用者の分け隔てなく、研修、視察旅行、新メニュー会議に参加させるなど、学習と成長の機会を積極的につくることで、スタッフの能力開発やモチベーションアップにつなげている。

経営コンサルタント 石田 和之


施設概要


施設名 喫茶れすと
設置者名 NPO法人 障害者自立支援センター多摩
所在地 多摩市永山1-5ベルブ永山3F
(永山駅徒歩5分)
電話番号 042-337-6676
代表者 北山 文子 所長
施設種類 共同作業所/NPO法人
障害種別 精神障害者
開所時期 平成9年4月
利用者数 12名
職員数 店長1人
パート8名、アルバイト1名
FAX 042-337-6676
連絡担当者 北山 文子 所長
事業内容 喫茶、豆腐の製造・販売、菓子の製造・販売、下請け、清掃業務、メール便
平均工賃 時給350円〜750円

平成21年8月現在


事業所コメント


"就労継続支援A型への移行を目指して、現体制を見直し更に利用者の方が生き生き働ける職場づくりに奮闘中です!