サービス取組み事例紹介
障害者福祉

東京都 社会福祉法人 豊芯会 フードサービス事業所

地域密着・高齢者配食サービスで高工賃を実現 フードサービス事業所

事業を活性化し、工賃を伸ばしている事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)




地元の人々に支えられ


やりがい感じながら働く利用者@

 社会福祉法人豊芯会フードサービス事業所は就労継続支援A型の事業所で、豊島区内の高齢者を主な顧客として、手づくり弁当の配食サービスを展開しています。
 社会福祉法人豊芯会の活動は、昭和53年精神科医だった理事長の穂積登氏が、クリニックに通院している患者の中に自宅にいても居場所のない人が多いことを知り、小さな部屋を借りて日中の居場所として「みのりの家」をつくったのがきっかけです。デイケア的な活動からはじまりましたが、地元の人々に支えられ、また、地元の人々のニーズを取り入れながら、DM封入・封緘作業・発送代行などの軽作業、公園清掃業務など作業種目を増やし、平成5年に現在のフードサービス事業所の前身となる精神障害者共同作業所「ハートランドひだまり」を設立し、高齢者や障害者のいる家庭にお弁当を届ける配食サービスをスタートさせました。


お年寄りの生活をまもる障害者


やりがい感じながら働く利用者A

 フードサービス事業所の配食サービスは、管理栄養士が栄養バランスを考えながら毎日の献立を考えています。企業の配食サービスとは異なり、大量に調理するのではなく、一つ一つを手づくりで調理します。また、お弁当を届けるときにも事務的な対応ではなく利用者(精神障害者)が心を込めて丁寧にお客さんに接する点が一つの強みになっています。
 社会福祉法人豊芯会が拠点を置く、豊島区の65歳以上の人口は、総人口の20%を超えており、東京都(19.2%)の中でも特に高齢者の多い地域です。また、ひとり暮らし高齢者数もずっと増え続けており、「高齢者配食サービス」の潜在ニーズが高い地域と言えます。
 平成13年4月、豊島区の高齢者を対象とした福祉サービスである「豊島区ひとり暮らし高齢者配食サービス」のコンペが行われて、地域に根ざして活動を続けてきたこれまでの実績や強みが評価され、「ハートランドひだまり」(フードサービス事業所の前身)が委託事業者に指定されました。
 「豊島区ひとり暮らし高齢者配食サービス」の委託事業者は、高齢者の安否確認も合わせて行う重要な役割を担っています。ただ単にお弁当を届けるだけではなく、お届けの際に必ず高齢者の顔を見て手渡し、その際、「昨日はどうして残したの?食欲がない?」といった会話を交わしながら、様子がおかしいようであれば配達員が支援センターに報告することになっています。このサービスは高齢者に喜ばれるだけではなく、サービスを提供する側にとっても自分たちが地域に必要とされていることが実感でき、高齢者を見守るやりがいのある仕事としてモチベーションにつながっているようです。


ケアマネージャーと連携して売り上げを伸ばす


おかずの盛り付け

 現在、フードサービス事業所の配食サービス事業の年間売上は約3600万円ですが、「高齢者配食サービス」の売上がその4割を占めています。ところが平成18年度に豊島区の制度変更により高齢者の負担金額が引き上げられたために、ここ数年、「豊島区ひとり暮らし高齢者配食サービス」の配食個数は減少傾向にあります。
 とはいえ、高齢者向けの配食サービスのニーズがなくなったわけではありません。
 フードサービス事業所の配食サービス事業の中で、大きく伸長しているのが、「毎日食事サービス」です。「豊島区ひとり暮らし高齢者配食サービス」は、区の委託事業なので週3回昼食のみのサービスですが、「毎日食事サービス」は、高齢者・障害者・退院したばかりの患者など自分で食事づくりを行うことが困難な単身者向けに、毎日、昼食だけではなく夕食も宅配できるようにしました。
 フードサービス事業所では、地域のケアマネージャーに対して、この「毎日食事サービス」を毎日のケアプランに盛り込んでもらえるように提案しています。最近は、夕食の需要が多く、1.5倍の伸びを示しています。今後もケアマネージャーとの連携を強化するとともに、長年、社会福祉法人豊芯会が地域に根ざして活動してきた強みを活かして、老人会等での宣伝やポスティング等、販促を強化していく計画です。


協働できる事業所を目指して就労継続支援A型へ!


フードサービス事業所で働く皆さん

 現在、フードサービス事業所では、5名の一般職員と19名の障害者が働いており、主に調理補助や洗い・片付け・配膳を担当しています。
 施設の職員と利用者(障害者)の関係は、指導する側と指導される側という関係になりがちですが、フードサービス事業所では、仕事は“協働であること”、そして、職員も利用者(障害者)も一緒に仕事をしていく“仲間であること”が意識づけされ、管理したりチェックしたりすることよりも、認め合って任せ合うことによるエンパワーメントが重視されています。配食サービスという事業の特性も、調理・配膳を行う1つの空間で、その日の配膳の目標数と期限を全員で共有しながら仕事を進めていくので、仲間意識を醸成するのに適しているのでしょう。仲間同士励ましあって仕事をすることで、それまでほとんど通所できなかった利用者でも週5日通えるようになったと言います。
 そして、平成20年1月、「職員も利用者(障害者)も同じ目的を持って“協働”できる場をつくりたい。訓練する場所ではなく、事業所として一緒に働ける場所にしたい」という思いから、事業的発展を目指して就労継続支援A型事業所に移行させました。


日本版ソーシャルファームを目指して


近藤友克サービス管理責任者

 これまでも500円/時前後の平均工賃を支給していましたが、今後は最低賃金を支給するだけの売上を確保していく必要があります。就労継続支援A型への移行にあたって、サービス管理責任者の近藤さんは「事業計画を立てるのは大変でしたが、私にとっても、職員にとっても、自分たちの強みや今後の方向性、やるべきことが明確になった点が大きい。東京都の助成金を受けながら、不十分だった厨房設備も改装したので、あとは、やるだけです」と語ります。また、利用者(障害者)にとっても、「作業所の利用者から事業所の雇用者になるということで、これまで以上に、働くことに対する自覚が生まれた」と言います。
 一般的に精神障害者は体調を崩しがちなため、出勤率は6割程度と言われていますが、一人ひとりがこれまで以上に体調管理をしっかり行うようになり、9割以上の出勤率を維持できるようになったそうです。
 今後、最低賃金を支払いながら黒字経営を続けていくために、高齢者向け配食サービスのノウハウを活かして、摂取カロリーに制限がある皆さんをターゲットとした低カロリー弁当などの開発・販売に着手していく予定です。
 「充分な工賃を支払うことができている精神障害者は少なく、就労継続A型に移行している精神障害者施設もまだまだ少ないので、モデルケースになれるように努力していきたい」と近藤さんは語りますが、就労継続A型への移行は、あくまでもステップに過ぎません。
 近藤さんが目指しているのは、利潤ではなく障害者雇用を目的とした会社であるけれども、賃金も普通に払い、出来た製品も普通の値段で売る、といった市場原理にかなった経営をするソーシャルファーム(ビジネス的手法を駆使して障害者雇用の場を確保するというヨーロッパで生まれた概念)です。
 高齢者向け配食サービスを通じて、「職員も利用者(障害者)も同じ目的を持って“協働”する仲間である。また、障害者は支えられるばかりではなく、高齢者を支えることができる」というノーマライゼーションを実践してきた近藤さんの挑戦はまだまだ続きます。


取材日 : 平成20年1月

今回のポイント


@ 多くの分野で市場縮小する中、高齢者向け配食サービスという数少ない成長市場を選択している。
A 地域密着している施設の強みや信頼性を活かして、行政機関やケアマネージャーと連携しながら、市場を開拓している。


経営コンサルタント 石田 和之

施設概要


施設名 社会福祉法人 豊芯会
フードサービス事業所
設置者名 社会福祉法人 豊芯会
所在地 豊島区北大塚3-34-7
(JR 大塚駅)
電話番号 03-3915-9051
代表者 サービス管理責任者 近藤 友克
施設種類 就労継続支援A型
障害種別 精神障害者
開所時期 平成20年1月
利用者数 19名
職員数 5名
FAX 03-3915-9166
連絡担当者 to-kondoh@housinkai.or.jp
事業内容 配食弁当
平均工賃 766円

平成21年8月現在

事業所コメント


今年もおいしいお弁当づくりで売上げアップ目指します。又、スイーツ部門も活動開始予定です。