サービス取組み事例紹介
障害者福祉

東京都 社会福祉法人 武蔵野千川福祉会

積極的な営業で受注を伸ばすチャレンジャー

事業を活性化し、工賃を伸ばしている事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)




「機能分化」という発想


チャレンジャーの外観

 「チャレンジャー」は、東京都武蔵野市にある障害福祉サービス事業(就労移行支援、就労継続支援型による多機能型)で、ダイレクトメールの封入封緘作業、ノベルティグッズの箱詰め作業が中心です。
 運営母体の社会福祉法人千川福祉会は、障害者の自立を支援する上で「働くこと」と「暮らすこと」の2つの基盤をつくることが不可欠であるという考えから、「チャレンジャー」を含め4つの就労事業所と2つのグループホーム、そしてショートステイ施設を運営しています。
 千川福祉会の特色は、4つの就労事業所それぞれで、同じ様にダイレクトメールの封入封緘作業等の簡易作業を生産活動の中心にしている点です。働く意欲と能力ある利用者は「チャレンジャー」で働き、利用者ひとりひとりの働く能力と意欲に合わせてそれぞれの事業所に配属されます。千川福祉会では、これを「機能分化」と呼んでいます。働く意欲と能力があっても、高齢化して体力や気力が落ちてきた利用者が「チャレンジャー」から他の事業所に移ることも可能で、千川福祉会全体で、知的障害のある利用者の働く意欲や能力に見合ったレベルやライフステージに応じた就労基盤が用意されているのです。
 機能分化の効果は、利用者のライフステージに応じた就労基盤の確保だけではありません。
 生徒の学習意欲やレベルが一定レベルだと教師にとって授業をすすめやすいのと同じ様に、利用者を指導・支援する職員にとっても、何を目標に指導・支援すべきかわかりやすくなりました。また、後述する作業効率を高める工夫改善のノウハウも4つの施設で共有化することにつながりました。
 チャレンジャーは、千川福祉会の4つの施設のうち、働く力を重視し「高い工賃を支払う施設」として位置づけられています。働く力が育った結果として月額工賃10万円を1つのゴールとしており、実際に5名の利用者が工賃月額10万円を超え、利用者全体でも平均工賃も月額75,000円と高い工賃を実現させています。


意識を変える、カタチを変える


チャレンジャーで働く利用者の皆さん@

 機能分化しても、障害者の働く力が育たなければ、高い生産性、高い工賃は実現しません。「チャレンジャー」では、働く力を引き出すために、意識改革をはじめとする様々な改善工夫がなされてきました。
 サービス管理責任者の新堂薫氏は、生産性を上げるためには、職員はもちろんのこと、利用者の意識を変えることが必要と考え、そのためにカタチから変えていくことからスタートしました。すなわち、8時45分から16時までだった就労時間を17時まで延ばし、働く社会人として当たり前の就労時間とし、毎月実施していた、レクリエーションも中止としました。また、作業も座り作業から立ち作業に切り替えていきました。これによって、「内職のような雰囲気になってしまう仕事も、立ち仕事で行うことによって、ダイナミックに仕事が展開するようになった」(新堂薫氏)といいます。
 さらに、新堂氏は、生産管理に関する書籍を購入し、それらを参考にしながら、生産工程の見直しを行いました。DMの封入封緘作業の中で発生する「運搬」「加工」「停滞」「検査」の4つの生産の要素をどう組み合わせれば効率のよい工程になるか、「利き腕を中心に動作が行われる」「2つの動作を組み合わせることが困難である」といった利用者の特性や障害に合わせて検討を加えてきました。例えば、利用者が何度もゴミ捨てに歩いてしまわないようにゴミ箱を傍らに置いて仕事をする、作業台の高さ、機械の配置、部材や完成品の置き方を調整するといった小さな改善を繰り返していったのです。
 そして、機械化して生産性を高められる工程については、積極的に機械導入を進めました。


タウンページを使って電話で営業


ダイレクトメールの折り込みの様子

 封入封緘作業には、機械化できる作業がある一方で、ダイレクトメールの様式や作業内容によっては、手作業でなければできない作業が必ずあるものです。そして、作業の特性として、細分化・単純化・パターン化できる工程が多いので、知的障害のある人にとって、分かりやすく、力を発揮できる作業と言えます。また、チャレンジャーのように作業種目を封入封緘に絞り込んで、多数の経験を積ませることで利用者の技能や知識も向上していくので、一般の事業者と競争しても充分戦える市場なのでしょう。
 このような市場に対して、チャレンジャーは、受注単価を安価で抑えられる障害者施設の強みを武器に、タウンページを活用して電話による開拓や商工会議所や職安で紹介を依頼するなど積極的な営業を展開することで、年間を通すと25〜30社ほど受注に成功しています。


残業があっても、働く喜びと自信を!


チャレンジャーで働く利用者の皆さん

 営業がうまくいくことによって、受注が重なることもあります。お客様から短納期を要求されることもあります。しかし、仕事を断れば、他の業者にお客様を奪われてしまいます。ある意味で仕事を断らず、かつ、納期と品質を維持し、低価格でサービスを提供することが要求される厳しい分野と言えます。実際に、チャレンジャーにおいても、納期が間に合わなければ、利用者には休憩時間の短縮や残業が求められます。
 しかし、施設長の新堂薫氏が「残業もあり大変だが、頑張った分、高い工賃をもらえれば、利用者にとって自信が増すし、喜びも大きい。工賃が10万円になったときの喜びの姿は本当に感動的です。」と語る通り、楽をすることが仕事の楽しみでなければ、楽をしてゴールに到達しても充実感や達成感を得ることはできません。その意味において、チャレンジャーは、その名の通り、障害のある人にとって、工賃目標10万円に向けてチャレンジし働く力を育みながら達成感や充実感を得ることのできる素晴らしい職場なのでしょう。


取材日 : 平成20年1月

今回のポイント


@ 知的障害者の特性を活かし、一般事業者と十分戦える作業種目を選定している。
A 単価を安価で抑えられる授産施設の強みを武器に積極的な営業を展開している。
B 機能分化および機械の導入や生産管理の実施により、生産性を向上させている。


中小企業診断士 稲山由美子

施設概要


施設名 チャレンジャー
設置者名 武蔵野千川福祉会
所在地 武蔵野市境南町4-20-5
(JR武蔵境駅)
電話番号 0422-30-3010
代表者 新堂 薫 施設長
施設種類 障害福祉サービス事業
(多機能型)
障害種別 知的障害者
開所時期 昭和62年
設置者名 社会福祉法人
武蔵野千川福祉会
利用者数 26名
職員数 3名(サービス管理責任者1名支援員2名)
FAX 0422-30-3011
連絡担当者 新堂 氏
kaoru@polka.plala.or.jp
事業内容 メール便発送業務、簡易印刷
梱包サービスなど
平均工賃 75,000円


平成21年8月現在