サービス取組み事例紹介
障害者福祉

和歌山県 NPO法人 はまゆう作業所

作業所の本来の姿を追及するはまゆう作業所

事業を活性化し、工賃を伸ばしている事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)




無認可作業所からA型へ


菓子箱折り作業をする利用者

 はまゆう作業所は、和歌山県第2の都市である田辺市に所在する就労継続支援事業A型の事業所です。
 平成5年4月に県立はまゆう養護学校の保護者を中心に「障害を持つ子の進路を考える会」が発足したのをスタートに、平成9年3月には無認可のはまゆう作業所が立ち上がったのが現在の作業所の前身となっています。それからおよそ10年後の平成18年10月にNPO法人の認証を受け、平成19年1月1日より就労継続A型事業所として新たな出発をしています。
 和歌山県内で初のA型事業所となったはまゆう作業所ですが、もともと強い意志を持ってA型への移行を目指していたわけではないといいます。当時の利用者が10名だったため、法内施設への移行を果たすにはA型以外の選択肢がなかったこと、そして、授産事業が比較的安定した売り上げを維持していたことがA型へ移る要因となったそうです。
 現在、知的9名、精神2名の合計11名の利用者を4名の常勤職員が支援する体制となっています。事業種目は@米の仕入・精米・販売事業、A菓子箱等箱折りの受注作業、B食品等の自主製品の製造・販売事業となっており、利用者・職員まさに一丸となって日々の仕事に取り組んでいます。


お米なら売れる!


精米済みの玄米を色彩選別機にかける様子

 平成19年度のはまゆう作業所の事業売り上げはおよそ1,600万円。柱となる 米 事業が1,200万円で、全体の4分の3を占めています。 米 事業の売り上げは平成17年度には約670万円だったので、2年間で1.8倍にもなっている計算になります。
 作業所の当初の主な仕事は箱折りの下請け作業でした。「次に柱にできる事業は何か?」と職員や保護者がみんなで考え、相談した結果、 米 事業を立ち上げようということになったそうです。その理由は、@食べるものなら売れる、A米の専売規制が撤廃された、B田辺市に数多くの作業所があるけれどお米を事業としているところはない、という3点でした。
 玄米を仕入れて精米し、販売を行うまでには保冷庫や精米機、色彩選別機、米 袋を閉じるためのシーラーといった機器類が必要となります。現在は、それらの機器類が整備されていますが、無認可作業所のころは公的な補助が一切受けられませんでした。そのため、民間の助成制度を活用して少しずつ機械を入手し、10年かかって現在の体制を築き上げました。


田んぼに車で乗りつけ


はまゆう作業所で精米したコシヒカリ

 はまゆう作業所では「味と品質、安心・安全」に強くこだわっています。なぜなら、「良いものでないといくら知人であっても継続して購入してもらえない」ことを身を持って知っているからです。
 そのため、玄米の仕入先を確保するのに大変な苦労をしてきたといいます。当初は職員の知り合いの農家たった1軒との取引でしたが、仕入先を1軒1軒確保し、現在は4〜50軒の農家と取引があるとのことです。
 しかし、利用者の給料を支払えるだけの売り上げを賄える分量の玄米を安定的に仕入れることは決して簡単ではありません。収穫の時期になると毎日、施設から1時間程度かかる農家の田んぼや倉庫に車で乗りつけ、その場で現金を支払って玄米を確保するという努力が欠かせません。出遅れると他の業者に玄米を買われてしまうことがあるからです。和歌山県の米の収穫時期は8月の下旬から9月にかけて。まだまだ暑い時期に利用者と職員がともに仕入に奔走して、1年間販売する分量の玄米を確保するのです。
 刈りたてで仕入れた玄米は最適な湿度や温度を保つために保冷庫で保管し、注文に応じて精米してベストの状態でお客様にお届けします。
 はまゆう作業所で販売する米は、採れたてのコシヒカリが10kg5,000円、キヌヒカリが4,500円と量販店で販売される米に比較すると高くなっています。これは、味と品質に妥協しないため、農家からの仕入価格も高くなっていることがその理由です。価格が高いことで、誰にでも売れるわけではありません。そのため、はまゆう作業所では販売する層をしっかりと絞り込んで営業活動を行なっています。地道な営業活動ときめ細かなサービスの提供により、新規のお客様を少しずつ開拓し、現在は100名程度の個人のお客様が繰り返し注文をくれるようになっています。
 米 事業を立ち上げ、ひとつの事業として成長するまでには多くの課題や困難がありました。しかし、「お金がないから、公的補助がないから、競合が激しいから・・」と途中で断念していたら、A型の事業所に移行することはできなかったことでしょう。深瀬施設長は言います。「 米 事業をきちんとした商売にすることを目標に、機械類や備品、ノウハウを少しずつ蓄積してきた」
 将来の事業の姿を見据え、一歩一歩着実に事業を展開したことが売り上げ増加につながり、その結果として、利用者の最低賃金を実現した事例といえます。


作業所の本来の姿。その先に・・


深瀬施設長

 はまゆう作業所の利用者の月給は平成19年度実績で平均5万5,436円、最も多い人は6万8,000円に達しているとのことです。移行前の平均月給は約1万円。たった1年程度で5倍以上にもなっています。
 A型移行が決定して、最初に職員の意識が大きく変わりました。利用者に最低賃金を保証するために、何をおいても“売上の確保・仕事量の確保”をしなければならなくなったためです。限られた人数の中で工夫をして効率よく働くとともに、民間の米店との競合がある 米 事業ではお客様の要望に応じて休日を返上して働くといったこともあるそうです。
 仕事量が増え、給料が増えると、利用者とその家族の意識が大きく変わりました。利用者自身の仕事に対する責任感が増したこと、そして送り出す家族も利用者が休まずに作業所に通えるよう以前にも増してバックアップをしてくれるようになりました。
 施設長は、以前は“給料を満足に支払えていない”という思いから、利用者に対して引け目を感じていたといいます。「最低賃金を保証できるようになって、やっと利用者にきちんと向き合える気がする」と。そして、利用者が生き生きと働く姿を見て、これが作業所に求められている“本来の姿”だったと実感したそうです。
 今後も自分たちでお金を生み出すことに力を入れていくことができる施設であるという方針を貫きたいという決意の先に、「障害があっても自分たちでできることは自分たちでやる。さらにサービス利用料や税金の負担もきちんとしていく中で、主張すべきことは主張する障害者の姿を多くの人に知ってもらうことで障害者観が変わったり、福祉に対する理解が進んだりするのではないか」という思いを深瀬施設長は持っています。
 はまゆう作業所の着実な歩みと挑戦はこれからも続きます。


取材日 : 平成20年4月

今回のポイント


@ “きちんとした商売にする”ことを目的に着実に事業の基盤を固めて 米 事業を売り上げの柱に育てあげ、利用者の給料を大幅にアップさせたこと。
A A型移行により最低賃金の保証が必要不可欠となる状況に追い込まれたことで、職員や利用者の力を存分に発揮できる良い結果を導くことができた。


経営コンサルタント・中小企業診断士 大江 栄

施設概要


事業所名はまゆう作業所
運営者名NPO法人 はまゆう作業所
所在地和歌山県田辺市上屋敷
2-18-16
電話番号0739-26-2665
代表者理事長 砂子 一 氏
施設種類就労継続支援事業A型事業所
障害種別知的・精神
開所時期平成9年4月
利用者数11名
職員数4名
FAX0739-26-2665
連絡担当者施設長 深瀬 幸子 氏
事業内容米 の仕入・精米・販売
箱折り等受注作業
自主製品の製造・販売
給料平均55,436円(月・平成19年度)