サービス取組み事例紹介
障害者福祉

宮城県 社会福祉法人 はらから福祉会

独自の商品開発と利用者のスキルアップで付加価値を向上 はたまき・手づくりの里

事業を活性化し、工賃を伸ばしている事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)




一大決心で事業転換


久田施設長
久田施設長

 宮城県丸森町の「はたまき・手づくりの里」は、自然豊かな山の頂上にあります。
 「のんびりしていて、いい場所でしょう」と、施設長の久田公子さんはやさしく語り始めました。
 平成2年に無認可で4名の利用者で開所し、平成11年に社会福祉法人はらから福祉会のとうふ工房「蔵王すずしろ」の分場に、平成17年には分場から本体となり、現在の「はたまき・手づくりの里」がスタートしました。
 現在の主力事業は、「おからかりんとう」の製造販売です。平成20年4月から始めましたが、それ以前は、主に陶芸の製造販売をしていました。はらから福祉会は、とうふを中心に民間企業との提携で、高い技術を有する食品加工を行うなど、当時から工賃向上の実績をもっていました。
 「おからかりんとうを始めてはどうか?」と理事長が話を持ちかけてきたとき、工賃をもっと上げたいという気持ちの反面、「多くが重度障害を持つ利用者にかりんとう作りが本当にできるのだろうか?」、「かりんとう作りをみんなは喜んでやってくれるだろうか?」、また、「陶芸のようには気軽に在庫にできない食品を始めて大丈夫だろうか?」などと、心配はつきませんでした。陶芸だけでも作業量は充分でしたし、ある程度の販売もできていましたが、自立した生活を営める7万円の工賃支給という目標にはほど遠い事業だと感じていた久田さんは、現状を打開するために、一大決心し、おからかりんとうの製造販売事業を開始しました。


営業力と商品力で工賃4倍増!


小山副施設長
小山副施設長

 おからかりんとうの事業を展開するにあたり、売り先がない中でいきなり製造を開始するのではなく、最初は、販路開拓に注力できるように商品仕入れを中心とした販売からスタートしました。大きな取引を狙うにはインターネットを利用して遠くの顧客を開拓する工夫が必要でした。例えば、事業展開当初では、地元丸森町の特産品の「えごま」を使ったおからかりんとうを自主製品として売り込む計画をしていました。そこで、「えごま」というキーワードで、長野県のえごま研究会を探し当て、商品サンプルとご案内文書を送ったのです。このような方法で営業先を1件1件探し、興味を持って返事をいただけたところには電話で営業をしていきました。



路面売り
路面売り

 当時案内文書を送った40件の中から4件の問い合わせがあり、その後に取引をすることができるようになりました。高い確率で営業成績を上げることができ、営業活動も積極的におこなってきました。
 販売キャンペーンなどのイベントも積極的に実施していった結果、売り上げは順調に伸び、おからかりんとうの事業を開始して4ヶ月後の8月には、売上は月間80万円に成長、9月は150万円、10月は190万円と、わずか半年で当初の売り上げ目標を達成しました。また、11月には地元紙である河北新報に取り上げられ、個人のお客様からも問い合わせからくるようになり、個人への直送販路も確立し、追い風となりました。現在でもコンスタントに月間160万円を売り上げており、その他、かりんとう以外の海苔などの仕入れ販売などとあわせると、月間200〜230万円の安定した売り上げがあります。陶器を販売しているころの利用者の工賃は、平均月額7,000円でしたが、現在では、その4倍を超える30,000円に達しました。
 これほどまでに急成長できたのは、積極的な営業に加えてニーズに合わせた商品を提供できる商品力にもあります。原材料には、地域産を使用し地域性を出すことで、地元の企業や農家とより関係を深めることができました。例えば、海苔かりんとうは、地元の海苔販売企業のカットした製品にならない残り部分を買い取り、それを使用して安いコストで商品化しました。他にも同様に地元企業の規格に合わない果物や野菜などの材料を使って商品化して商品ラインナップを増やしていくことができたのと同時に、生産者にとっても売り物にならず廃棄するはずだった材料を活かして、利をもたらし、環境にもやさしいという、よりよい循環をつくることができました。このことが地元からの協力を得る上での大きな力となりました。


全国の福祉施設ともタイアップ


バラエティ豊富なおからかりんとう
バラエティ豊富なおからかりんとう

 現在は、企業の他にも全国の福祉施設からもプライベートオリジナルブランドの依頼があります。
 例えば熊本の施設からの依頼では、特産の「でこぽん」を使ったおからかりんとうや、香川県の施設からは「レモン」を使ったおからかりんとうの依頼があります。その他、地元で取れた「ねぎ」や作業所で採れた「さつまいも」などの野菜を使って商品化しており、他県の福祉施設の製造工場としての役割も担っています。発注する施設は特産物のオリジナルかりんとうという商品を容易に、施設で販売することができるのです。






おからかりんとう
おからかりんとう

 オリジナルかりんとうの製造依頼があれば、すぐに試作品にします。今まで、野菜・果物・食用炭などを使った様々な種類を作ってきたことで、素材イメージの見た目、色、味をどうやって引き出せるか、独自のノウハウが蓄積されていきました。「おからかりんとう」という1つの商品から、次から次へと多品種を作り出せるようになったことが様々なニーズに応えることができるという強みになっています。
 多品種ができるようになっても、久田さん、副施設長の小山さんの2人は、口をそろえて言います。「自分たちで自信を持てない商品は、最終的に商品として世の中に出しません」。今もなお商品に対するこだわりを持っていることが、お客様からの信用獲得につながっているのです。




みんなが働ける環境作り


生地作り
生地作り
揚げる
揚げる
パック
パック

 おからかりんとうの製造 工程には、大きく3つの工程があります。
  ・ 生地を作る
  ・ 生地を揚げる
  ・ パック(封入)する
 この工程をさらに細分化することで、複合した動作を覚えて実行することが難しい利用者であっても、製造 工程のどこかで必ず仕事ができる工夫がされています。
  ・ 生地を作る → 「こねる」、「のばす」、「型に入れて冷凍庫で寝かせる」の3工程
  ・ 生地を揚げる → 「カットする」、「網に並べる」、「揚げる」の3工程
  ・ パック(封入)する → 「計量する」、「パックに入れる」、「封をする(シーラー)」、「シールを貼る」の4工程
 この他に、次の工程に物品を運ぶ仕事も含めて、それぞれの役割が必ず設定されています。



生地のカット
生地のカット
生地を並べる
生地を並べる
シーラー作業
シーラー作業

 最初、網にかりんとうを上手く並べることができない利用者も、基準となる四角い箱などの補助具を使って練習するなど、技術の向上にも工夫をしています。現在、「封をする(シーラー)」については特訓中で職員と一緒に行なっていますが、職員のみが行うのは、危険を伴う「生地のカット」です。利用者だけで製造ができることを徹底して考え、仕事の細分化や作業の工夫を実行してきた結果、ほとんどの作業が利用者だけでできるようになったのです。「職員が作業にたずさわることを減らしていくことが、利用者の成長につながっています」と久田さんは言います。


利用者の欠勤はゼロ


 利用者本人から「新しい作業にチャレンジしたい」と申し出があった場合には、必ず聞き入れるといいます。このような環境の中で、利用者は自分の役割を自分の働き甲斐とすることができているのです。だから、おからかりんとうの事業を始めて一年がたちますが、通院をする日以外、欠勤する人はいません。ここで働く利用者は自分たちが作ったおからかりんとうについて「とってもおいしいです。わたしのおすすめは“さつまいもかりんとう”です。家族や親戚からも『買ってきて!』とお願いされ、『おいしい』と言ってくれています」と自信を持って話をしてくれました。このお客様の言葉が利用者の誇りにもなり、毎日通う原動力にもなっています。また、地元Jリーグチームの大ファンである利用者に「もらった給料はどうされますか」と質問したところ「試合を仙台まで見に行きます。お金が貯まったら、一人で遠くまで行ってみたい。東京に行って好きなことをしてみたい」と夢を語ってくれました。そして、「会社っていいなぁ」と嬉しそうに言ったのがとても印象的でした。そこで働く利用者にとって施設は会社であり、仲間がいて、また、一人一人自分を必要とされていることが、無欠勤につながっているのではないでしょうか。


「はたまき・手づくりの里」のこれから


 事業としての陶芸はやめましたが、地域交流を目的とした陶芸教室に姿を変えて続けています。多くは小学校での出張実習で、職員だけでなく陶芸の得意な利用者も陶芸の先生として参加しています。ここには、交流を通して、将来、子供たちが福祉に興味を持ってくれたり、障害者を特別視したりしないように育って欲しいという久田さんの思いも詰まっています。
 また、「おからかりんとう」だけで満足することなく、工賃7万円を目指して他にも新しいチャレンジとして、丸森町とタイアップして地元の特産である「へそだいこん」を使った、第二の柱となりうる商品の研究開発を始めています。これらの発想は、「施設だけで考えていることではなく、地域のご協力があって初めて実現できること。地域の方々とお互い支え合っていくことをしてきたからこそ、“協力の輪”が広がり地域のかたからも提案していただけるようになってきたのです。」と久田さんは言います。
 「はたまき・手づくりの里」は、これからもきっと地域の皆様と一緒に成長し続けていきます。
 ※おからかりんとうオリジナル商品の依頼・相談については、直接「はたまき手づくりの里」にお問い合わせください。


取材日 : 平成21年9月

今回のポイント


@ 地域性を活かした商品作りで、特長を作れただけでなく、地元の企業などと、仕入れ、販売において関係を築けている。
A 1つの商品の多品種化と、プライベートオリジナルブランド生産で商品力を高めている。
B 製造 工程を細分化することにより、誰もが作業にかかわれる工夫がされている。


FVPコンサルタント 内山 洋

施設概要


施設名 はたまき・手づくりの里
設置者名 社会福祉法人 はらから福祉会
所在地 宮城県伊具郡丸森町大内字青葉上154-1
電話番号 0224-79-2141
代表者 施設長 久田 公子 氏
施設種別 知的障害者授産施設(通所)
障害種別 知的、身体、精神
開所時期 平成2年(法人化 平成11年)
利用者数 24名
職員数 施設長1名
常勤4名(事務員1名)
非常勤(臨時・嘱託)1名
FAX 0224-79-2146
連絡担当者 副施設長 小山 洋之 氏
事業内容 おからかりんとうの製造販売、海苔などの販売
平均工賃 30,000円
URL http://www.harakara.jp/works/hatamaki.html