サービス取組み事例紹介
障害者福祉

長野県 社会福祉法人 花工房福祉会

指名買いされるヒット商品を次々生み出し、お客様に愛されながら工賃アップを実現 エコーンファミリー

事業を活性化し、工賃を伸ばしている事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)




利用者71人と共に平均工賃5万円をめざす


エコーンファミリー作業場
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 「お客様にとって、必要とされているもの・おいしいものを作らなければ、商品は繰り返し売れていかないことがよくわかりました」と、エコーンファミリー施設長の小池邦子氏は言います。今では、専門家や地域の協力を得て「商品の品質を、一般市場で通用するレベルまで高めること」を実現して、その結果、毎年工賃目標を達成し続けています。
 エコーンファミリーは、長野市南郊の川中島の戦いでも有名な川中島町の静かな住宅地の中にあり、就労移行支援、就労継続支援B型、生活介護で合計71名の利用者が通う多機能型事業所です。「ともに生き、ともに暮らす」という理念を掲げ、「いきるしあわせ」「はたらくよろこび」「ちいきといっしょに」をモットーに、パン製造販売、豆腐製造販売、花卉(かき)栽培販売、炭・炭加工品製造販売、受託作業など多岐にわたる事業をおこなっています。平成20年の年間売り上げ実績では、パン事業1580万円、豆腐事業857万円、花卉事業571万円、炭事業397万円、受託作業332万円、その他30万円で年間3770万円の事業を展開しています。

1日2回のリヤカー販売
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 平成19年4月に新体系に移行して以来、生活介護の利用者を含めた全員が自分らしさを活かして働くことを目指し、工賃は平成19年度1万9000円(55人)、平成20年度2万4000円(60人)と上昇、平成21年度は3万円(71人)を超える見込みです。平成23年度、全員の平均工賃を5万円にすることを目指しています。
 専門家や地域と連携する取り組みはどのように工賃目標の達成に寄与してきたのでしょうか。






自信をもって販売できる商品へ


炭なでしこ
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 工賃アップをしていく上で欠かせないことは、売上を伸ばしていくことです。そのためには販売先を開拓して増やしていくことや、販売にいく回数を増やすことはもちろんですが、何度も買っていただけるような「必要とされるもの・おいしいもの」を提供する必要があります。エコーンファミリーは、常に“売れる”商品づくりを追求しているからこそ、右肩上がりの売上伸長を実現しているのです。
 売上の核となっているパン部門では、一定の製造数を確保するため、当初は冷凍の生地を仕入れていました。冷凍生地では品質の安定という点ではメリットがあるもののコストが高い上に、品揃えの幅に限界がありました。自分達で生地作りをおこなうことも模索しているときに、製造 工程の指導などでお世話になっていたパン職人に相談を持ちかけたのがきっかけで、そのパン職人から生の状態で生地を仕入れることが可能になりました。これにより、パンのバラエティが格段に増え、味の面でもお客様に評価され、口コミで広がるまでになりました。また、利用者・職員も自信を持って販路拡大をおこなうことができ、今では1箇所あたり1万円を超す出張販売・外販売先が30箇所以上にもなりました。


地域と連携するエコーンファミリーのおたっしゃ豆富
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 炭部門でも、工夫を凝らして大きな成功をもたらしています。以前は竹炭を作って空気清浄などの日用品として販売することに留まっておりましたが、一度購入されたお客様に再び購入していただくことは難しく、売上げを伸ばしていくことができませんでした。そのような状況の中で、リピート購入していただくために考え出したのが消耗品である竹炭石鹸でした。当初は薬事法上の制約により“台所石鹸”という用途表示に制限されていましたが、現在は化粧品メーカーと連携することにより化粧石鹸として販売できる体制を整えることができました。今や、竹炭石鹸『炭なでしこ』は、エコーンのヒット商品に成長しています。県外からお取り寄せの問い合わせがくるほど固定客がいるそうです。12月はお歳暮用ギフトセットが好調で、120万円を超える売上となりました。
 豆腐部門では、大豆から製造する上で課題となるのがおから処理でしたが、企業と連携することでおからを出さない製造 工程を取り入れて、市場価値レベルまでの豆腐づくりを実現しています。今では地元の料亭からその味も認められ、定期的に卸しています。プロからも評価されるレベルの商品になってきたのです。当然ながら一般のお客様のファンも増えて、現状では毎週配達を希望されるかたへの注文販売が売上げの45%を占めるまでになりました。市場価値に見合った品質の高い商品であるということが理解できます。
 このように、地域の職人や企業などの専門家と連携することで、事業所だけでは限界のあった「品質を市場価値レベルまで上げる」ことが、ファンをつくり売上・工賃向上へとつながっていくのです。


利用者全員が役割を担い生き生き働く


米山リーダー
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 エコーンファミリーが大事にしている考え方は、「利用者の障害程度やサービス種別に関わらず、仕事の対価としての工賃をしっかりお支払いする」、「利用者数が増えて、平均工賃が下がるようなことがあってはいけない。利用者が増えても目標工賃を必ず実現する」の2点です。よって、職員全員が「71人の利用者全員が生き生き働けるよう支援する」ことを自分の使命として取り組んでいます。
 これを象徴しているのが、「マルチ班」と呼ばれる生活介護所属の利用者中心の販売チームです。自慢の商品をリヤカーに積み、1日2回の巡回販売をおこなっています。暑い日も寒い日も、雨の日も雪の日も、元気に出かけ、真剣に販売する彼らがいるからこそ、商品をお客様に届けることができるのです。
 B型の利用者は、製造部門中心に活躍しています。パン部門のリーダーの米山氏は「パンの製造販売という仕事を通じて、自立した生活ができる力を養ってほしいので、時には厳しく言ってしまうときもあります」といいます。取材中もパン工房では大きな刃物を扱っての成形や、のし棒を使った微妙な力加減が必要とされる成形など様々な種類の工程での利用者がパンを製造していました。今ではパンの成形に関してはほとんど利用者だけでできています。厳しい仕事を通じて一人ひとりが職人としてプライドをもって働いているということが実感できました。豆腐部門の2名の利用者も製造からパッケージまでの一連の工程を担い、今では欠かせない存在となっています。


パン製造の様子
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 メール便の配達を担当している利用者の染野さんは「雨や雪の日は大変だけど、配達をしているときが一番楽しい。お金が貯まったらパソコンを買ってインターネットをつなげてみたい」と話します。働きがいとその成果である工賃を手に新たな目標を目指しているからこそ、生き生きと働くことができているのだということを改めて感じることができました。
 働いた成果次第でより多くの賃金を得られることを明確に実感できるようにする為、エコーンでは、毎月支給する工賃の他にボーナス支給制度を取り入れています。今期の冬のボーナスは、平均5万円。生活介護のかたにも4万円支給いたしました。このことにより、利用者は働いた成果をボーナスで実感し、働くことへのモチベーションアップにつなげることができているのです。
 小池氏は言います。「『私がいないとこのパンが作れない』『僕が販売の計算をするんだ』『私の笑顔がお客さんに褒められる』などと、利用者ひとりひとりが仕事で必要とされていることを実感できているので毎日生き生きとした表情で働くことができています」


ひとりひとりが当事者意識で


月次売上明細一覧表
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 ここまで高い目標を達成し続けてきた理由の一つに、多岐にわたる部門それぞれが責任をもって主体的に工賃アップを目指してきたことがあげられます。職員ミーティングでは毎月各部門の売上明細を一覧表にして情報を共有しています。担当する部門の売上高、前月比、昨年同月比の数値を確認することはもちろんですが、他部門の数値とも比較することでより一層意識を高めて自らの仕事の成果を明確に把握することができていくのだと小池氏は言います。
 昨年の取り組み以上のことを実施していかなければ目標は達成できないと自然に意識して、売上目標や計画を立てることができています。

【パン部門】 週1回2種類の食パンを会員にお届けする「食パン会員」の新規会員獲得や出張販売をより効率化する為のルート販売を拡大。(定期的に販売できるところを増やす)
【炭部門】 地域の中学校と連携して炭せっけんのラッピングを改良。
地域の薪ストーブを使用する家庭の増加にともない昨年から始めた薪販売を本格化すべく薪ストーブ会社と連携して顧客拡大をすることやキャンプ場での販売。
【豆腐部門】 新商品の発売や新規2号店出店による豆乳カフェの計画。
【花卉(かき)部門】 地域の書店の園芸コーナーと連携した書店店頭販売や園芸教室の開催。
確定申告会場など購買意欲が高まる場所での販売。
 このような販売目標が明確になっているからこそ昨年以上の計画や新しいアイディアが担当職員からどんどん湧いてくるのです。これらは、「いきるしあわせ」「はたらくよろこび」「ちいきといっしょに」という考えが統一されて、職員ひとりひとりが当事者意識で取り組めている証です。


渦の中心で仕事の醍醐味を感じる


小池施設長
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 「工賃向上計画を進めていく中で計画通りにはいかないことも多々あるけれど、『工賃をアップするんだ』という強靭なぶれない意識を持ち続けることが大切」と小池氏は実感したと言います。また、「福祉施設こそ待っているのだけではなく、積極的に外に出て人脈を広げていくことが必要」と言うように、自然に周囲の人たちが協力してくれる状態にしていくことができているからこそ、これまでの工賃アップを実現し続けているのだと今回の取材で実感できました。
 エコーンファミリーはこれからもきっと、大きな渦の中心となって仕事の喜びや醍醐味を感じながら、ゴールに向かって走り続けていくことでしょう。


取材日 : 平成22年1月

今回のポイント


@ 企業や専門家と連携して、商品の品質を市場価値レベルまで高めている。
A 毎月各部門の数値管理を徹底して、目標達成状況を確認するとともに、改善プランを検証、実行している。
B 利用者全員が仕事の役割を担い施設全体で働く喜びを実感できている。


コンサルタント 小嶋 有二

施設概要


施設名エコーンファミリー
設置者名社会福祉法人 花工房福祉会
所在地長野県長野市川中島今井1387-1
電話番号026-283-8787
代表者柴田 廉 氏
施設種類就労移行支援
就労継続B型
生活介護
障害種別知的、精神、身体
開所時期平成11年4月
利用者数71名
職員数管理者1名
常勤14名
常勤以外19名
FAX026-283-8703
連絡担当者施設長 小池 邦子 氏
事業内容パン製造販売、豆腐製造販売花卉(かき)栽培販売、炭・炭加工品製造販売受託作業
平均工賃23,536円(ボーナス含む)
URLhttp://w1.avis.ne.jp/~ecorn87/