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第12回: 「建物カルテ・施設台帳」の継続運用の必要性と建物維持管理の大切さについて

「はじめに」

 建物カルテ・施設台帳の運用がなぜ必要なのか、また、改修改善工事を行い感じる維持管理の大切さについて事例を紹介いたします。

建物カルテと施設台帳について

 建物カルテとは、定期的に建物を点検した記録(定期調査記録)とメンテナンス状況の記録を整理し、まとめたものです。
 施設台帳とは、建物の竣工図や機器・建材の使用リストおよび耐用年数などをまとめた周期表のことです。
 建物カルテと施設台帳は、いずれも突発的なトラブル回避とともに計画的な改修改善工事のために整備が必要となります。

建物カルテの作成と運用

 カルテの作成は、定期的に施設内の目視点検と設備機器作動状況確認を行います。それとともにぜひ行っていただきたいのが、調査図の作成です。竣工図(完成図)に記載されているものが記載場所にあるのか、その機器材が完成時と同様の作動を行っているかを点検することが重要となります。また、給水・給湯の止水バルブなどフロアーごと・エリアごとに分けてついているか確認することも重要です。
 機器・配管のトラブル時や更新時期に、ルートの確認調査をいちから行っていてはスピードを持った対応ができません。


【事例】

状況:天井から水が漏れている。
原因:給湯管(銅管のピンホール(経年劣化))による漏水が原因である。
   ………建物カルテ確認
改善:漏水エリア(給湯管のエリアバルブ)を閉めて給湯管の補修を行う。
   ………調査図確認
問題点@:エリアバルブがない→フロアー全体や施設全館給湯停止しなければならない。もしくは、全館給湯停止し新たにバルブを増設しなければならない。
問題点A:バルブを止めても、給湯が止まらない。
※@Aより結局全館給湯停止してバルブを増設しなければならない。

問題点<その他>:緊急で補修工事を行った場合、給湯管 (銅管の場合)のバルブを止めて、水抜きを行い銅管の配管を切断しSUS 管などに更新する際に、他の脆弱な配管部分の劣化が促進して、部分更新後の漏水の原因となってしまう。

 現況と、建物カルテ・施設台帳・調査図を照らし合わせながら、改善方法や問題点の解決を導きだします。
 建物カルテ・調査図があれば迅速な対応が可能となります。


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定期点検が必要な理由

 建物にも、人の定期健康診断のように、定期的に巡回点検を行うことが必要です。給排水、給湯、ガス、空調(冷媒・ダクト)、雨による漏水等は巡回点検にて目視確認することで不具合の兆候の確認が可能です。その不具合の兆候を、部分補修で済むところと大きな改修・改善工事が必要なところに選別するため、周期表と見比べ、緊急性の高い不具合個所の改修計画を立案します。
 場当たり的な部分補修では、他の脆弱な個所へ波及する場合があります(問題点〈その他〉より)。
 計画的改修には、イニシャルコストがかかりますが、突発的な出費を低減し継続的な建物の維持管理を実現します。
 機器・建材の老朽化チェックリストをもとに更新時期を把握し、また事前に設備機能チェックを行い、計画的にメンテナンスを行うことで、緊急(臨時)の工事費や被害範囲の拡大を最小限にし、無駄なコストを削減することをお勧めします。

建物管理の大切さ

 病院や高齢者福祉施設等、24 時間運営されている建物において改修工事を行う場合には、施設運営を行いながらの工事となります(居ながら工事)。
 居ながら工事を行う場合、病室や居室での改修工事は、利用者の方の移動、工事関係者との導線の分離を計画的に行わなければなりません。この点が施設側様と工事施工者で労力がかかるポイントとなります。その労力を、同じ場所で工事のたびに何度も繰り返せば、時間的・コスト的にも無駄が生じます。
 タイムスケジュールを守りながら工事中の安全・突発的な遅延要因に対応できるように、事前調査とともに日頃からの建物管理をもと、施設運営に支障のないように中長期の建物維持管理計画を行うことが大切です。

 皆様の大切な建物が永く安全に利用されますように、かしこい建物管理をなされることを願っております。

※ この記事は月刊誌「WAM」平成27年3月号に掲載されたものです。
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