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連載コラム
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トラブルに学ぶリスク対策

介護現場で起きた事例を踏まえ、原因とその防止策のポイントをお伝えしていきます。



<執筆>
株式会社安全な介護 代表取締役
山田 滋(やまだ しげる)
<プロフィール>
介護現場で積み上げた実践に基づくリスクマネジメントの方法論は、「わかりやすく実践的」と好評。著書に『安全な介護』(筒井書房)、『介護施設の災害対策ハンドブック』(中央法規)など多数

事例㉑:不可抗力で付いたアザを虐待でないと証明できるか?

こんな事故が起きました!

認知症があるMさんがトイレ介助時にふらつき転倒しそうになったので、介護職員がとっさに右の手首を強くつかんでしまいました。転倒は免れたものの手首が心配になった介護職員は、看護師を呼んで診てもらいましたが痛みもなく経過観察となりました。家族には心配をかけるので受診と決まったら連絡を入れることにしました。翌朝介護職員がMさんの腕を見ると、紫色の大きなアザが付いていますが、腫れはありませんでしたので看護師は受診を見合わせました。ところが、夕方面会に来た娘さんがMさんの腕のアザを見つけて、「腕を縛られたに違いない、病院でもそうされた」と騒ぎ出しました。介護職員は事情を説明しましたが、娘さんは「証拠はない」と翌日、虐待の疑いで市に通報しました。

事故原因と防止対策

市に虐待通報があれば当然市から施設に連絡が入り事情説明を求められます。ところが、施設がいくら「転倒事故を防ぐために止むを得ず手首をつかんでしまった、ワルファリンを服用しているので内出血が広がった」と説明しても、これらの事実を立証する証拠がどこにもありません。家族連絡もせず受診もしていませんから、事実を主張するための根拠がどこにもないのです。おまけに事故報告書やヒヤリハットシートなどの施設内の記録さえ、起票していないのですから市も家族も納得するわけがありません。

仕方なく施設では、市に対しては虐待を認めた上で「転倒を防ぐためとはいえ必要以上に強く手首をつかんだことは、虐待に相当する不適切な対応であった」として、報告することにしました。しかし、市に対しては虐待を認めて改善計画書を出せば済みますが、家族は相変わらず「縛ったことを隠している」と大きな不信感を持っています。

すると、事故に対応した看護師が施設長に次のように申し出ました。「Mさんがトイレで転倒しそうになった時、手首の状態を診たので看護記録はありますし、アザについてはデジカメに撮ってあります」と。施設長は「なぜもっと早く言わないんだ」と怒りましたが、看護師は「利用者を看たら記録するのは当たり前です。でも、施設側の記録じゃ証拠にならないでしょう?」と言うのです。

不可抗力で付いたアザを虐待でないと証明できるか?

しかし、看護記録とデジカメの画像を市に提出して説明すると、コロッと態度が変わりました。市は翌日に「偶発的な事故であって、かつ転倒防止のための緊急避難的な行為が原因で付いたアザだと認められる」として、虐待認定を取り消しました。また、家族に対して施設が看護記録とデジカメの画像を見せて市からの判断を伝えると、すんなり納得してくれました。

「施設側の記録は証拠にならない」と決めつける職員がいます。もちろん裁判などで厳密に検証されればその通りかもしれません。しかし、施設の記録は事実を主張する根拠にはなりますし、家族が記録を信頼してくれれば初めからトラブルにもなりません。もちろん、迅速な家族連絡や丁寧な説明が重要なことは言うまでもありませんが、記録は施設や職員を守るうえでも重要なものなのです。

トラブルを避ける事故対応

ちょっとした傷やアザも「虐待の疑いがある」と、家族トラブルにつながるケースが増えてきました。このような家族感情を十分に理解したうえで、「こんな傷を家族が見たら虐待と誤解しないだろうか?」と絶えず気配りをして、迅速に説明することが大切です。また、家族から施設に不信感を抱くような申し出があれば、管理者が直接家族に対応して家族感情に十分配慮した説明をしなくてはなりません。施設と家族の信頼関係は、施設側の十分な説明があって初めて醸成されるのではないでしょうか?

※ この記事は月刊誌「WAM」平成28年12月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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