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DPCデータを活用した経営改善策

全6回にわたって、病院内のさまざまな部署で、そのようにDPCデータを活用し経営につなげていくかをみていきます。


<執筆> NPO法人病院経営支援機構  藤井 将志

第4回:看護体制の充実につながるデータ分析とは


DPCから全国の平均在院日数がわかる


 DPCデータの活用と看護部というと関係がないのではないか、と思われがちですが、実は最も経営改善に影響が出る可能性があります。今回は、その点について病棟と外来の2つの側面からみていきます。
 まず、病棟でDPCデータを活用する視点です。ご存知の通り、DPCでは在院日数を短くすればするほど、1日当たりの診療単価が高くなる点数設計となっています。急性期病院の在院日数短縮化という、国の方針の一環でもあり、実際にDPC対象病院の在院日数は年々短くなる傾向にあります。では、どのような疾病をどこまで短くすることが適切なのでしょうか。その参考になる指標が、DPCごとの入院期間です。
 おさらいになりますが、2000以上あるDPC分類ごとに入院期間がT・U・V・それ以上の4区分に分かれています。DPC分類ごとの全国平均に相当するのが入院期間Uです(図表1参照)。例えば、成人の肺炎の手術なし処置等なし(040080x099x0xx)という疾病の全国平均在院日数は、入院期間Uである13日ということになります。参考までに、入院期間Tというのは、DPC分類ごとに在院日数が短い症例を順に並べていき、全体の1/4に相当する症例の在院日数(25パーセンタイル値)で設定されます。入院期間Vは、その在院日数以内に、全国の95%の症例が含まれる(DPC分類ごとの標準偏差の2倍)日数となっています。


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適切な在院日数を検討する


 病棟で、ある患者の在院日数が長くなってきたな、と思った場合は、その患者のDPC入院期間Uを確認すると参考になります。もし入院期間Uを超えていたら、同じ疾病で全国の他の病院に入院していたら、すでに退院している可能性があるということです。もちろん、あくまで平均値であり、すべての患者が入院期間U以内で退院すべき、というわけではありません。患者の状態や、退院後の環境を踏まえたうえで判断することが大切なのはいうまでもありません。
 だらだらと入院が長引いていたり、同じ疾病なのに医師によって退院の判断が違ったりする場合などには、全国の平均値が参考になるでしょう。このような”エビデンス“をもって、医師と在院日数が長めになっていないか、退院調整を始めたほうがよいのではないか、検討することができます。

患者ごとの入院期間をリアルタイムに把握する


 では、入院中の患者の入院期間Uをリアルタイムで知るには、どうしたらよいのでしょうか。電子カルテ等のシステムで、これらの情報が見られるところは問題ないのですが、もし、自院のシステムが対応していない場合は、医事課と相談してみてください。DPCのデータをリアルタイムで抽出し、エクセルなどで加工することで、病棟ごとの患者別の入院期間を把握することができます(図表2参照)。定期的に医事課でデータを作成してもらうとよいでしょう。他施設で実際に活用しているフォーマットがありますので、ご希望でしたら筆者あてにご連絡ください*。
 このデータで注意すべきなのは、その時点でDPC病名が仮登録されている必要があることです。何の病名かわからないと全国平均もわかりようがありません。入院後、医師ができるだけ早く病名を登録することが必要になります。また、入院後に容態が変化し、最終的にはDPC病名が変わることもあります。手術や処置の有無などでも在院日数は変化しますので、リストで在院日数がわかったとしても、現行の病名での参考日数と考えてください。



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診療の一部が外来に移行される


 続いて、外来におけるDPCデータの活用事例をみていきます。DPCは入院のことだから外来には関係ないのでは、と思っている方も多いでしょう。外来に関係することの一つが、予定入院の入院直後の検査や画像診断の外来シフトです。DPCの場合、入院後の検査や画像診断は包括されてしまいます。
 その一方で、入院前の外来で実施すれば出来高で算定することができます。こうしたことから、緊急入院の場合は難しいのですが、予定されている入院の場合、外来で極力検査等を済ませ入院することが経営的にプラスになります。
 さらに、平成24年度の診療報酬改定からDPC係数に病院群の評価が加わりました。その評価基準の一つに、難易度の高い手術を多く扱っていることがあります。この基準を高めるためには、難易度の低い手術は外来で実施することも一つの選択肢となりました。そこで、入院期間が短く、クリニック等であれば日帰りで実施しているような手術症例については、入院そのものを外来シフトできないか運用を変更している医療機関も増えてきています。白内障手術、ポリペクトミー、心臓カテーテルなどがその一例です。
 余談ですが、アメリカの急性期病院では、こうした症例はもちろん外来で実施するのが一般的です。さらに、病院によっては手術の8割が日帰り手術となっているところもあるくらいです。環境が違うので日本もアメリカのようになるというわけではないですが、適正な医療費のために入院症例の外来シフトが進むことは考えられるでしょう。
 こうした、検査や画像診断、手術の外来シフトが進むということは、外来の機能が拡充することを意味します。それまでは病棟のスタッフで対応していた、検査前後、手術前後の看護ケアが、外来で求められるようになります。「基幹病院の外来機能は縮小する」という国の方針が出ていますが、縮小されるのは再診のフォロー患者であり、専門化した外来は増えざるを得ません。病棟のように看護師数の縛りもきつくないため、配置する看護師数を減らして補助員などでまかなっている医療機関も少なくないでしょう。しかし、これまで入院でやっていたことを外来にシフトさせるには、相応の充実化は必要になります。

※ この記事は月刊誌「WAM」平成26年1月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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