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医療・介護の提供能力の余力評価を

ふまえた法人経営


 全6回に渡って、各地域の医療・介護の提供能力の余力評価をふまえた法人経営についてお届けします。


<執筆>
国際医療福祉大学大学院教授 高橋 泰 氏


第2回:大都市圏内の急性期医療・施設介護の提供余力の地域差

大都市の二次医療圏(52個)を俯瞰すると…

 連載の第1回目(前回)では日本の地域を大都市、地方都市、過疎地域に分ける方法を説明した。今回は、大都市圏内の急性期医療・施設介護提供余力の地域差をみてみよう。
 表は、大都市に所属する各二次医療圏の急性期医療と施設介護の余力を示している。2010年と2040年の需要予測をすると、急性期医療の需要は横ばいまたは軽度に低下する地域が多い一方、介護の需要は多くの地域で大きく伸びる。つまり地域ごとの急性期医療の余力レベルは、現在も将来もあまり変わらないが、介護の余力は現在と将来では大きく変わる。
 そこで今回は、縦軸に、「2015年の急性期医療の余力(一人当り急性期医療密度)」を用い、上に位置する現在の急性期医療の余力が高い地域は将来も高く、下に位置する急性期医療の余力が低い地域は将来的にも低いと考えた。一方介護は、現在余力があっても、将来不足する地域が多いので、2040年において現在の全国平均の施設を各地域の後期高齢者に提供するために必要な施設ベッド数を算出することにより、各地域の将来の介護の余力を予測した。横軸が、「2040年にむけた施設介護の余力」を表し、右に位置するほど将来にむけた介護の余力が高く、左に位置するほど将来にむけた介護の余力が低いことを表している。



 縦軸と横軸の指標の算出方法は、連載の第5回と6回で説明するので、今回は右上に位置すれば急性期医療も施設介護も余力がある地域であり、左下に位置すれば余力が少ない地域であるというように眺めていただきたい。また表に示された都市名は、その都市が所属する二次医療圏の主要都市を表しており、例えば表の右上に位置する”北九州(福岡)“は、「福岡県の北九州市を含む二次医療圏(=北九州二次医療圏)」を意味し、この医療圏は、一番右上に位置するので、日本の大都市の中では、急性期医療も施設介護も高い余力がある二次医療圏であることを意味している。
 現在全国344個ある二次医療圏のうち大都市に属する二次医療圏は52個であり、全国土の約5%に相当する18,556km²を占める大都市圏に、全人口の44%に相当する約5,600万人が住んでいる。大都市部の医療介護の提供余力の地域差の概況を俯瞰しやすくするため、便宜上52個の医療圏を、地方大都市(5個)、首都圏(29個)、中京圏(5個)、関西圏(13個)に分け、地域別に解説を加える。これから解説に出てくる地域名を表上で確認しながら読み進めてほしい。

地方大都市、首都圏、名古屋圏、関西圏の違いは

 まず地方大都市である、札幌、仙台、福岡、北九州の急性期医療の余力は高く、広島も比較的高いレベルにある。その結果、これらの地方の大都市の急性期病院には周辺から多くの患者が流入している。一方、札幌、仙台、福岡の施設介護の余力は低く、今後これらの地域では、介護施設に入所できない高齢者が多数現れる厳しい状況になることが予想される。
 首都圏の急性期医療に関しては、東京の特別区に所属する7つの医療圏の急性期医療提供の余力は、比較的高い。また川崎南部、東海大学病院のある平塚(湘南西部)、千葉大学病院のある千葉も提供余力が比較的高い。上記以外の千葉県、埼玉県、多摩地域、神奈川県に広がる22の医療圏は、いずれも人口に対する急性期医療提供余力が低い地域といえる。
 首都圏の施設介護は、厳しい状況にある。特別区内は、区東北部(足立、葛飾、荒川)を除く他の6医療圏の施設介護の余力は極めて低く、とくに区中央部(千代田、中央、港、文京、台東)と区西部(新宿、中野、杉並)は、75歳以上の高齢者一人当たりの介護付きの高齢者施設や住居の数が日本で最も少ない地域である。また、都内に隣接する千葉県の船橋(東葛南部)、松戸(東葛北部)、多摩地区の三鷹、立川や横浜南部(横浜の中心部)や藤沢(湘南東部)も施設介護の余力の極めて乏しい地域といえる。一方、東京都心を取り囲む広大なベッドタウンエリアである「特別区の区東北部〜埼玉県の春日部・川口・さいたま市・和光〜多摩の小平・八王子〜神奈川県の川崎北部・川崎南部、横浜北部・横浜南部・相模原」という一連の地域は、施設介護の余力が比較的ましな状況にある。横須賀と平塚は施設介護の余力が比較的高い地域であり、千葉は比較的ましなレベルである。
 名古屋圏では、名古屋、北名古屋、一宮の急性期医療は比較的医療の余力が高いが、春日井(尾張北)、瀬戸(尾張東)が比較的低いレベルである。尾張北、尾張東、および次回の地方都市分析に出現する三河地域は急性期医療も施設介護も余力が少なく、今後の人口動態を考えると、愛知県北部・東部は、今後急性期医療も施設介護も非常に厳しい状況になっていくと予想される。
 関西圏の大都市部の急性期医療の余力は首都圏や中京圏の大都市と比べ高く、余力が低いのは、大阪府南部の岸和田(泉南医療圏)と奈良県の大和郡山(西和医療圏)のみである。施設介護では、関西圏北部の「京都〜豊中〜大阪市〜尼崎〜神戸」地域は比較的ましなレベル、大和郡山は、比較的余力があるレベルである。一方、大阪府の東部南部である「高槻〜枚方〜東大阪〜松原〜堺〜岸和田」地域と明石は、施設介護余力が低く、今後の介護の対応はかなり大変になることが予想される。関西圏北部の「京都〜豊中〜大阪市〜尼崎〜神戸」は、急性期医療も施設介護も首都圏と比較してまだ余裕のある地域といえる。
 以上をまとめると、日本の大都市部で急性期医療の余力があるのが、札幌、仙台、東京特別区、名古屋、関西圏北部、北九州、福岡であり、急性期医療の余力がないのが、東京周辺部と愛知県の尾張北部・東部・三河地方である。一方施設介護では、比較的ましなレベルにあるのが、東京都心部を取り囲む埼玉〜多摩〜神奈川と関西北部と広島と北九州である。施設介護が最も厳しいのが東京の特別区であり、札幌、仙台、千葉県東葛南部・北部、神奈川県の東海道線沿線、愛知県の尾張北部東部と三河地域、大阪府東部南部、福岡も、かなり大変になっていくことが予想される。

※ この記事は月刊誌「WAM」平成26年5月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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