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医療・介護の提供能力の余力評価を

ふまえた法人経営


 全6回に渡って、各地域の医療・介護の提供能力の余力評価をふまえた法人経営についてお届けします。


<執筆>
国際医療福祉大学大学院教授 高橋 泰 氏


第4回:過疎地域の急性期医療・施設介護の提供余力の地域差

事業計画に必要な医療・介護の余力の把握(過疎地域)

 連載の第1回目では日本の地域を大都市、地方都市、過疎地域に分ける方法を説明し、第2回は大都市圏内の、第3回(前回)は地方都市圏内の急性期医療・施設介護提供余力の地域差を見てきた。今回は、過疎地域(人口密度200人/km²以下の医療圏)の急性期医療・施設介護提供余力の地域差をみてみよう。
 表は、過疎地域に所属する各二次医療圏の急性期医療と施設介護の余力を示す。縦軸は、「急性期医療の余力」を表し、上に位置するほど急性期医療の余力が高く、下に位置するほど急性期医療の余力が低い。一方、横軸は、「施設介護の余力」を表し、右に位置するほど介護の余力が高く、左に位置するほど介護の余力が低い。また二次医療圏内に年間2,000件以上の全身麻酔を行う病院がある医療圏のマスは「黒色」、年間1,000〜1,999件の全身麻酔を行う病院がある医療圏のマスは「濃い灰色」、年間500〜999件の全身麻酔を行う病院がある医療圏のマスは「薄い灰色」で着色されている。色が塗られていない二次医療圏は、圏内に年間500件以上の全身麻酔を行う基幹病院に相当する病院のない地域といえる。



 過疎地域に関しては、医療提供が少ない地域を明らかにすることが重要である。まず、表の下方に位置する急性期医療密度が0.6より小さい地域をあげることができる。日高(北海道)、根室(北海道)、むつ(青森)、久慈(岩手)、秩父(埼玉)、島しょ(東京)、富士吉田(山梨)、新城(愛知)、高島(滋賀)、有田(和歌山)、隠岐(島根)、萩(山口)、須崎(高知)、上五島(長崎)、阿蘇(熊本)、曽於(鹿児島)の16個の二次医療圏は、医療提供余力の明らかに不足した地域である。医療提供に関して「東高西低」という言葉があるが、東京以北が6医療圏、東京より西が10医療圏と、意外に西に急性期医療密度の低い医療圏が多い。
 また、表の中で色のついていない医療圏は、圏内に年間500件以上の全身麻酔を行う基幹病院に相当する病院のない地域なので、高度医療が必要な場合、圏外に患者を搬送する必要がある医療圏と考えられる。「離島」と「基幹病院と基幹病院の間に広がる広範な地域」の2つのタイプの地域に分けられるが、いずれの地域も地域医療構想を考えるとき、他の医療圏との連携がとくに重要な地域といえよう。
 過疎地域には人口減少が激しく、将来的に施設の余裕がでてくると予想される地域がある。表の右側に位置する地域が相当し、北海道では、江差(北海道)、長万部(北海道)、滝川(北海道)、夕張(北海道)、名寄(北海道)、深川(北海道)が、東北では、五所川原(青森)、北秋田(秋田)、能代(秋田)、大館(秋田)、大仙(秋田)、新庄(山形)が相当する。関東地域には該当地域がなく、中部では佐渡(新潟)、輪島(石川)、関西では五條(奈良)のみである。中国地域では大田(島根)、益田(島根)、隠岐(島根)、津山(岡山)、高梁(岡山)、三次(広島)、萩(山口)、長門(山口)が相当し、四国では、三好(徳島)、八幡浜(愛媛)、室戸(高知)、須崎(高知)、土佐清水(高知)が、九州では、対馬(長崎)、五島(長崎)、上五島(長崎)、竹田(大分)、水俣(熊本)が相当する。過疎地域は働き手が少なく部屋はあっても介護をする人が確保できない可能性が高いが、前期高齢者の活用や今後急速に発展する介護関連の機器を活用して働き手の問題がクリアできるなら、これらの地域では、Uターンを中心に、都会での介護を受けるのが困難な人を受け入れるなど、施設の有効活用を今後考える必要がある地域といえよう。
 逆に過疎地域でも、今後後期高齢者が急増する、名護(沖縄)、石垣(沖縄)では、高齢者施設がかなり不足することが予想される。また、現在の高齢者施設の提供量が非常に少なく、今後増加する高齢者に対して高齢者施設がかなり不足することが予想される地域が、根室(北海道)、むつ(青森)、奥州(岩手)、大船渡(岩手)、白石(宮城)、日光(栃木)、藤岡(群馬)、富士吉田(山梨)、高島(滋賀)、長浜(滋賀)である。
 以上のように過疎地域といってもそれぞれの医療、介護の事情は大きく異なる。自分の所属する地域が、全国の他の地域と比較してどのような位置づけにあるかを知ることは、医療機関や施設の運営において、今後ますます重要になってくる。

※ この記事は月刊誌「WAM」平成28年1月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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