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第5回:定期巡回・随時対応型訪問介護看護〜 在宅医療・介護の要になりえるか? 〜


介護と看護の一体的なサービス


 2012年4月から始まった定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、在宅医療と介護連携における象徴的なサービス体系といえるだろう。一つの事業所で訪問介護と訪問看護のサービスを一体的に提供する「介護・看護一体型」、もしくは訪問介護を行う事業所が地域の訪問看護事業所と連携をしてサービスを提供する「介護・看護連携型(看護サービスのうち居宅での療養上の世話・診療の補助は連携先が提供)」と、2つの形態がある。
 いずれにしても医師の指示に基づく看護サービスと訪問介護サービスが、臨機応変的に24時間体制で要介護高齢者に提供される。
 昨今、急性期病院の在院日数の短縮化により医療ニーズの高い高齢者が在宅で療養するケースが増えているなか、在宅の要介護高齢者においては医療と介護が一体的に提供されるサービスが重要となる。

従来の訪問介護


 従来の訪問介護は、大きく「滞在型」と「巡回型」の2つに分けられていた。「滞在型」は、家事援助を中心に、身の回りの世話を一定の時間内で行うもの。おおよそ1時間以上のサービスで、多くは家事援助と身体介護の複合型で提供されている。一方、「巡回型」は1回あたり30分未満の身体介護サービスを中心にしたものである。
 そもそも「24時間対応型の訪問介護サービス」が制度化されたのは、旧措置制度であった1995年のモデル事業からであり、「24時間巡回型ホームヘルプサービス」という位置づけであった。当時、深夜に2人1組で訪問し、1日数回・1回あたり30分以内の介護サービスであった。そして、何度かサービス形態が変更され、2012年4月から介護と看護が一体的に提供される現在のシステムとなった。

現場の実態


●ヘルパーらの取材から
 先日、24時間訪問介護の実態を聞くため、10年以上業務に従事しているヘルパーらに話を聞いた。夜中にヘルパーを利用する高齢者は、主に「オムツ交換」、「水分補給」、「体位交換(じょくそう予防)」を望んでいる。とくに、老老介護など妻(高齢者)が、寝たきりの高齢者(夫)を介護している場合、昼間の介護に疲れてしまい、夜はゆっくり眠りたいということから、夜中のオムツ交換等を依頼してくるという。また、数は少ないが、独り暮らし高齢者(車いす対応)で、夜中自分でトイレに行くには転倒が怖く、オムツもしくは尿パットを使用しており、その交換のためにヘルパー介助を必要とする高齢者もいる。
 依頼のあったヘルパーは、毎日夜中0時ごろ、事業所で預かっている鍵で玄関から入る。そして、寝ている高齢者の部屋に懐中電灯をもって静かに入り、オムツ交換のケアを行う。高齢者本人も寝ているため、できるだけ起こさないように心がけているそうだが、どうしても本人が気づいてしまう場合もある。
 その際は、「ゆっくりお休みください」と優しく声をかけながらケアしているとのことであった。しかも、隣には、昼間の介護で疲れている高齢の妻が寝ているため、目が覚めないよう、物音をたてないよう気をつけながら、懐中電灯の乏しい光で介助をするので、昼間の介助と違い非常に苦労するという。
 ヘルパーらによれば、深夜帯に行う介護の問題として、家族や利用者が鍵をヘルパーに預けなければならないうえ、就寝中の夜中に他人が訪問するため、違和感・抵抗感を抱く家族・利用者が多いという。
●看護サービスの現状
 一方、看護サービスを利用する要介護高齢者は、訪問介護サービスと一体的に提供されることで、看護と介護の連携が深くなるメリットがある。従来のように訪問介護と看護が別の事業所から提供されると、これらの調整や利用者のニーズの共有化がケアマネジャーを介して行うことになる。しかし、一体型もしくは連携型であれば、専門職同士が直に調整することが可能となり、時間をかけずに連携した対応が可能となる。
 ヘルパーが気づいた利用者の状況を看護スタッフに伝えると、早期の医療的ケアが可能となる。看護に比べ、介護サービスのほうが利用者に接する機会は多いため、情報を看護側に提供する意義は大きい。

マンパワーの確保


 しかし、現場では事業者がヘルパーを募集しても、なかなか応募がない傾向が指摘されている。既述のように深夜帯のヘルパーは、家族や本人にかなり気を使いながら介助しなければならず、「何かあったら怖い」、「深夜帯になると自動車を運転せざるをえない」等の理由と、賃金が充分に保障されていないことが要因といわれている。
 訪問看護ステーションでさえも看護スタッフを集めるのに苦労しているなかで、新しい事業所にスタッフを集めることは、さらに困難となっている。看護師不足は介護現場においては非常に深刻である。

伸び悩む実績


 実際、このサービスが始まってから3年間が過ぎているが、2013年度末においても、当初の目標に比べて2/3程度の保険者でしか実施されていない(表1・2)。利用者にとっては重要なサービスとして評価を得ているものの、事業所の拡充が大きな課題となっている。3年が過ぎてサービス自体は介護現場では周知されているものの、経営面から事業者が参入に消極的で、当初の目標に至っていない。
 しかし、既述のように急性期病院においては在院日数が短縮化され、在宅復帰率が加味された診療報酬体系により退院促進が患者に迫られている。その意味では、このサービスの拡充が必要だといえよう。

サービスの拡充には


 そもそも、介護保険サービスは競争原理(擬似的市場)に基づいてサービスが提供される。あくまで事業者側も採算性や収益といった側面で事業に参入するか否かを判断する。いくらよいサービスであっても、市場経済に馴染まなければサービスは分配されない。とくに、新しいサービスはよほどの経済的インセンティブを与えない限り、事業参入は見込めないであろう。
 そのため、地域包括ケアシステムの骨格となる定期巡回・随時対応型訪問介護看護の拡充を目指すには、既存の特別養護老人ホームや介護老人保健施設といった施設が、一部、主体となって担う必要があろう。一定程度、在宅部門で赤字であっても施設と在宅部門で収支が黒字であれば、経営的に問題は解決される。そして、赤字の在宅部門を引き受ける施設は、その施設部門の報酬を上乗せするようなシステムにしていくべきではないだろうか。
 確かに、ケアマネジャーにサービスを浸透させる、医師に協力を求める、利用者への周知を拡げていくといったことも重要であろうが、施設と一体的に事業を構築したほうが効率的であろう。次回の報酬改定で抜本的な見直しを期待したい。

※ この記事は月刊誌「WAM」平成26年8月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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