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戦略的医療経営について


 全6回に渡って、経営戦略理論を用いた医療機関経営についてお届けします。


<執筆>
国際医療福祉大学大学院教授 羽田 明浩 氏


第6回:ダイナミック・ケイパビリティを活用した病院完結型から地域完結型のパラダイムシフトへの対応

 第6回は経営戦略理論のなかでも新しい理論であるダイナミック・ケイパビリティを活用して、医療業界のパラダイムシフトへの対応を述べていきます。

経営戦略理論の流れ

 ここで経営戦略理論の流れを簡単に述べます。軍事用語である「戦略」が経営戦略論として登場したのは1960年代のアメリカで、企業の中長期的な目標と取るべき行動の選択等が述べられたことが背景にあります。登場から50年ほどの間に、経営戦略論は各年代で新たな理論が登場しています。
 1970年代は、多角化に伴う資源配分が注目され、経営戦略は事業ポートフォリオのマネジメントという新しい内容を付け加えることになりました。1980年代は、同業他社との競争を強く意識するようになり、同業市場において独自の立場を確保することの重要性が認識されることになりました。さらに企業は独自の競争優位性の構築を図り、同業他社との競争のための戦略である競争戦略が必要になりました。1990年代に入ると、企業経営の方向性は個々の企業が保有する経営資源に着目されるようになりました。
 そして、2000年代に入ると、1990年代以降の資源ベースアプローチに基づく研究が行われるようになり、その流れを背景としつつ、組織が環境変化を乗り越えて競争優位を獲得して持続できるような能力である「ダイナミック・ケイパビリティ」と呼ばれる研究が注目されるようになりました。


ダイナミック・ケイパビリティについて

 それでは、経営戦略理論の新しい理論であるダイナミック・ケイパビリティとはどのような理論でしょうか。
 ティース(2007)は、ダイナミック・ケイパビリティとは、企業独自の内部経営資源を継続的に創造・拡張・改良・保護し、価値ある状態に維持するために利用するものであり、機会・脅威を感知し機会を活かす能力と、企業の有形・無形資源を向上し、必要時には再構築することで競争力を維持する能力のことと述べています。つまり経営組織を取り巻く外部環境変化の機会と脅威を読み取り、自組織が保有する内部経営資源を適切に活用することで競争力を向上していく経営能力を意味しています。


医療業界のパラダイムシフトである地域医療構想について

 社会保障制度改革国民会議の報告書は、「病院完結型」から、地域全体で治し支える「地域完結型」への移行と、受け皿となる地域の病床や在宅医療・介護の充実と川上から川下までのネットワーク化による医療機能分化の進展、地域包括ケアスステムの推進を述べています。そして、これらに基づき地域医療構想が策定されていますが、この一連の動きは、医療業界におけるパラダイムシフトとみることができます。このような医療機関を取り巻くパラダイムシフトにおいて、自院にとっての脅威と機会を読み取ったうえで、保持する内部経営資源を向上し活用していくというダイナミック・ケイパビリティを大いに活用する必要があります。このダイナミック・ケイパビリティは、自社組織内に足りない経営資源を組織外部に求めるアライアンスやシナジーの期待においても発揮されます。
 ダイナミック・ケイパビリティは主として経営組織のトップマネジメントによって発揮されるものです。これは医療機関の経営組織に置き換えると医療法人の理事長あるいは病院長、診療所長によって発揮される能力と捉えることができます。
 病院完結型から地域完結型への移行は、第4回で述べたように競争戦略から協調戦略への移行と捉えることができます。地域医療構想において、医療機能分化によってお互いの診療機能を補完し合う体制を構築する過程で経営トップによるダイナミック・ケイパビリティが発揮されるものと捉えることができます。


戦略的医療経営におけるダイナミック・ケイパビリティ

 第1回から第6回までの「勘どころ経営講座」で述べきた戦略的医療経営は、2025年問題に対応した地域医療構想にあって、自院の経営戦略を見直したうえで最適な経営戦略の立案の必要性を述べてきました。
 まず現在の自院の経営理念やミッションが地域における役割と合致しているか、2025年の地域医療構想に向けた現在と将来の「架け橋」であるビジョンが適合しているかの見直しが必要であることを述べました。そして自院の事業領域であるドメインについて物理的定義から帰納的定義への見直しとさらに顧客、技術、顧客機能の視点からの見直しも必要であると述べています。さらに競争戦略から協調戦略への移行による地域医療連携における補完的プレーヤーとの協調の必要性を述べました。そのうえで、地域医療構想を背景とした地域医療連携推進法人の創設による地域医療における協調の必要性について述べてきました。
 これまで述べてきたことは、すべて医療業界のパラダイムシフトを背景に地域医療構想の進展という外部環境の変化を睨んだうえで、保有する内部経営資源の変容と、不足する経営資源を外部組織に求めるという、一連のダイナミック・ケイパビリティを発揮することによって自院の経営戦略を有意な方向性に導くことが可能になるということです。
 第6回で「勘どころ経営講座」の筆者の連載は終了します。これまで記載した戦略的医療経営に関する記事が、お読みいただいた皆様のダイナミック・ケイパビリティ発揮のお役に立てれば幸いです。


<参考資料>
・経営能力開発センター(2015)『経営学の基本』中央経済社
・羽田明浩(2015)『競争戦略論から見た日本の病院』創成社
・羽田明浩(2017)『ナースのためのヘルスケアMBA』創成社
・Teece ,D. J .(2007)“Explicating Dynamic Capabilities:The Nature and Microfoundation of(Susteinable)Enterprise Performance,”StrategicManagement Journal,Vol.28, No.13,pp.1319-1350.

※ この記事は月刊誌「WAM」平成29年9月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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