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社会福祉法人に求められる新たなガバナンスのあり方


 全6回に渡って、社会福祉法人制度改革において求められている社会福祉法人の新たなガバナンスのあり方についてお届けします。


<執筆>
大阪府立大学 地域保健学域教育福祉学類 教授 関川 芳孝


第2回:公益法人の経営組織のあり方をモデルに


法人組織のあり方について

 少子化と高齢化が同時に進行し、人口減少する時代において、福祉ニーズは多様化・複雑化している。そのようななかでは、基礎自治体による対応にも限界があり、地域社会を持続可能なものとするうえでも、新たな公として、社会福祉法人の地域において果たすべき役割がますます重要となっている。すなわち、基礎自治体の役割を補完しつつ、他の社会資源ともつながり、制度外のニーズにも柔軟に対応するなど、公益性の高い事業経営の展開が求められている。社会福祉法人においては、法人組織のあり方を見直し、あらためて公益性の高い非営利法人にふさわしい組織運営をめざす必要がある。

公益性の高い経営組織のあり方


 社会保障審議会福祉部会報告書では、「理事、評議員会、監事など社会福祉法に規定されている社会福祉法人の経営組織は、社会福祉法人制度発足当初以来のものであり、今日の公益法人に求められる内部統制の機能を十分に果たせる仕組みとはなっていない」と問題を指摘している。「一部の社会福祉法人において指摘される不適正な運営には、こうした法人の内部統制による牽制が働かず、理事・理事長の専断を許した結果生じたものがみられる」。社会福祉法人のガバナンスを強化するため、理事会や評議員会、役員等の役割や権限の範囲を法令等で明確に定めるべきであると考えられている。
 一般財団法人および公益財団法人制度では、法人の各機関の役割と責任が法定化されており、内部の相互チェック機能が働くことをもって、自律的な運営を認めている。行政庁の関与は、問題のある法人に対し事後的な規制で対応するなど、あくまで補完的な位置づけにすぎない。公益法人が、監督官庁の関与に縛られず、自律的な運営を確保するため組織統治の仕組みについての規律を明確にし、民間として自律的に公益的な活動の推進に取り組める仕組みづくりが検討された。
 優遇税制の対象とならない一般財団法人であっても、経営組織の各機関相互のチェック体制の確立が求められており、こうした法人組織の規律にしたがい、経営組織のあり方を見直している。公益法人の法人組織のあり方は、社会福祉法人においても参考にされるべきガバナンス強化のモデルといえる。公益法人制度と比較すると、社会福祉法人の経営組織におけるガバナンスを担保する仕組みが、いかに十分でないかがわかる。もちろん、社会福祉法人制度にも、法人認可の審査基準、定款準則において詳細な規定があるが、これをあわせて考慮しても、なお十分とはいえない(図表)。


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法人組織の形骸化は制度構造の問題


 法人組織が形骸化し、ワンマンな経営者による恣意的な経営判断に対しても、組織内部で相互のチェックが効かないのは、もっぱら社会福祉法人制度の制度構造によるものである。報告書にもあるように、社会福祉法人制度の基礎構造は、措置制度の時代からこれまで抜本的な改正がされずにきている。利用契約制度に転換し、事業規制は緩和され経営裁量は拡大したが、公益性の高い社会福祉法人として、あるべき経営組織に対する規律についての議論がされずに、従来の組織体制のまま今日に至っている。理事会・評議員会でも、社会福祉法人の本来あるべき姿と実際の事業計画にもとづく事業執行とのズレをチェックせず、予算・決算など会計面での不正が発覚しない限り、事実上の経営者による事業計画や事業報告に対し、基本的に同意・承認を与えることが常態化されてきた。
 社会福祉法人には、将来にわたって組織的にも持続可能なように、法人単位で戦略的視点に立脚した経営に向けた取り組みが求められているが、経営者に求められる健全なリーダーシップとワンマンな経営とが混同されてはならない。健全なリーダーシップが発揮されるためにも、法人組織のあり方は本来どうあるべきか原則論に立ち返り、公益性の高い法人経営をめざし@誰がその法人の将来に対し責任ある決定をするのか、A誰が法人の業務を執行するのか、B誰が業務執行を監督するのかなど、法人組織による統治の規律があらためて議論されるべきと考える。
 社会福祉法人は、基礎構造改革後の経営モデルとして、民間参入と利用契約という新たな事業環境と地域における存在意義の変容を認識し、法人のよって立つべき基盤、社会的信頼の基礎となる「公共性」、「公益性」、「非営利性」、さらには「開拓性」、「先駆性」を踏まえた事業戦略を協議する経営組織へと転換する必要があった。こうした本質が十分に理解されないと、今回の法改正も、一部法人の不祥事を理由とする社会福祉法人に対する規制の強化に受け取られてしまう。
 社会福祉法人自身が、自律経営を求められている根源的な意味を見据えて、経営組織のあり方についても、社会的に信頼されるように自ら改善することが大切である。社会福祉法人には、税制優遇や補助金を受けて運営するのに相応しいものとして国民から信頼される法人組織であることが求められる。実際に法人組織の再構築へと関心が集まり、主体的に経営組織が変革されることが、社会福祉法人制度が持続可能なシステムにつながっていくと考える。

公益法人との比較からみた制度的課題


 あらためて図表をみると、形骸化した社会福祉法人の経営組織の問題とともに、公益法人として求められる経営組織の規律のあり方にも問題があることが明らかになる。公益法人のガバナンスの要ともいえる評議員会の位置づけが諮問機関では、理事長、理事会に対する牽制機能は期待できない。しかも、保育所のみを経営する法人、介護事業のみを経営する法人では、任意設置とされている。公益法人においては、一般財団法人であっても、評議員の選任・評議員会の設置は義務化されており、議決機関としての権限と責任が明確化されている。さらには、評議員会には役員の選任・解任の権限が与えられているなど、役員に対し牽制機能がビルトインされている。
 社会福祉法人の理事会は、議決機関であり、執行機関でもあり、両者の機能が未分化である。そのうえ、法人経営の要として業務執行にあたるべき理事長についての規定もない。理事についての規定はあるものの、理事の責任が明記されていない。理事会については、法律上の規定もない。理事長など一部の役員が経営の実権を握った場合には、理事会が経営者の行動に対し牽制することは困難である。公益法人においては、理事・理事会の権限と責任が法律上明記され、理事会には、業務執行決定の役割をもつとともに、理事に職務執行の監督、代表理事の選任および解職の権限が与えられている。
 また、監事の役割は、権限および義務が限定的であり、十分な監事監査が行われなかった場合の責任についての規定がない。会計規模が10億円、20億円という社会福祉法人が存在しているにもかかわらず、一法人一施設経営の法人と同じように、監事監査に計算書類のチェックを任せている。監事の役割が形骸化していると、必要なチェックがされないままになってしまう。公益法人においては、監事の権限および義務、責任について具体的に定めており、一定規模以上の法人には、会計監査人の設置が義務づけられている。

※ この記事は月刊誌「WAM」平成27年5月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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