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社会福祉法人に求められる新たなガバナンスのあり方


 全6回に渡って、社会福祉法人制度改革において求められている社会福祉法人の新たなガバナンスのあり方についてお届けします。


<執筆>
大阪府立大学 地域保健学域教育福祉学類 教授 関川 芳孝


第3回:法人の内部統制の確立


 社会福祉法人制度改革のねらいの一つは、ともすると形骸化する法人役員の行動に対し、権限と責任を法定化し、経営組織の規律を確保することにある。新しい社会福祉法人制度では、評議員会、理事会、監事など各機関の役割や責任を社会福祉法に明記し、それぞれの立場から事業経営に当たる理事長、理事に対し規律が働く仕組みが検討された。以下では、福祉部会の報告書とともに同法案にもとづきながら、社会福祉法人のガバナンス改善に焦点を当て、各機関の役割と責任について説明したい。

評議員、役員に求められる職務上の注意義務


 社会福祉法人と評議員、理事、監事、会計監査人との関係については、改正法案でも「委任に関する規定に従う」と明記されている。会社法や一般社団および一般財団に関する法律でも同様の規定が定められているが、これは、評議員、役員等の法人内部における責任に関する規定の整備がねらいである。民法上の委任の規定によると、受任者である評議員、理事、監事、会計監査人は「善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務」、すなわち善管注意義務を負うことになる。したがって評議員、理事、監事、会計監査人には、常勤・非常勤、報酬の有無にかかわらず、法律および定款が求める役割と権限に応じ通常求められる注意義務をもって職務に当たらなければならない。評議員、理事、監事の選任については、それぞれの立場に求められる役割と責任を十分に理解してもらったうえで、就任を依頼することが大切である。
 評議員、役員等が職務を行ううえで悪意および重大な過失があったと認められる時は、法人および第三者に与えた損害を賠償する責任を負うことも明記されている。評議員や理事、監事に善管注意義務違反に当たる事実があれば、経営者以外にも責任は及ぶ。これは、評議員、役員等、相互に規律する関係が形骸化し、期待された内部統制の役割が機能しない場合に、当該事業経営に当たる理事長のみならず、評議員、役員等にも法的な責任が発生する仕組みをつくり、経営組織内部の統制を強化しようとするものである。

理事会が理事長の業務執行を監督する


 事業経営に当たる理事長などの独断専行を牽制・抑止し、適正かつ妥当な業務執行を実現するためにも、理事会の新たな役割は、@業務執行の意思決定に当たる、A業務執行の監督をする、B理事長の選定および解職を行うものと位置づけられている。事業経営に当たる理事長も、理事会の決定にもとづいて業務を執行する立場に置かれる。法律が定める重要な財産の処分等の事項その他重要な業務執行の決定は、理事会の専決事項とされており、理事長に委ねることはできない。重要な業務執行については、理事長といえども自ら決定できず、理事会による審議のうえで決定された事柄にもとづいて業務の執行に当たらなければならず、理事会の統制を受ける。理事長が職務上の義務を怠っているなどの場合には、理事長の解職権限を行使するのも理事会の役割である。作成された計算書類や事業報告の承認も理事会の役割である。
 他方理事長は、対外的には法人を代表し、法人の業務を執行する役割を担っている。なお、理事長以外の理事についても、理事会の決議によって、特定の業務の執行を行う業務執行理事として選定し、業務の執行に関わらせることができる。理事長は、理事会に対し3カ月に1回以上職務執行状況を報告しなければならない。理事会が、理事長等の業務執行を監督するためである。
 理事の業務執行を監査する監事は、理事長によって適正かつ妥当な業務執行がなされているかモニターする機関であり、法人のガバナンスを考えるうえでも重要な役割を担っている。しかしながら、一部の法人では、監事監査が形骸化し、財務会計などにも必要なチェックが機能していない等の問題があった。実効ある監事監査が行われるように、役割と権限を明確にし、監査体制の強化を図った。
 理事会が監事を選任する仕組みでは、独立した立場から監査を行うことが困難であると考えられ、監事の選任・解任は評議員会の議決事項に改められた。さらに、実効ある監査体制を整備するため、新たに監事の権限を付与し、義務を課している。すなわち、法人の業務施行状況を自ら把握するため、@理事、職員に対し事業の報告を求める、A業務および財産の状況を調査する権限が与えられている。監事の義務については、監査報告を作成するほか、理事会に出席する義務、理事の不正行為、法令や定款に違反している事実を発見した場合には、理事会や評議員会に報告する義務を負っている。これまでのように、年1回程度、計算書類等を監査するだけでは、監事の職責を果たしたとはいえなくなる。
 また、社会福祉法人のガバナンスの強化、財務規律の確立の観点から、一定規模以上の法人においては、監事監査に加えて、計算書類等について監査する会計監査人の設置を義務づけ、会計監査人の権限、義務、責任(監事への報告義務、損害賠償責任等)を法律上明記した。会計監査人が第三者の立場で行う外部監査の義務づけ、財務面では外部からも規律が及ぶようにと考えられている。

議決機関としての評議員会を必置する意味


 今回の社会福祉法人制度改革において、すべての社会福祉法人に対して、議決機関としての評議員会の設置を義務づけたことは、今後の経営組織のあり方を考えるうえで、重大な意味をもつ。評議員会は、これまでのように理事会の事業経営に対し意見を述べる諮問機関としての位置づけではない。議決機関としての評議員会の存在は、経営組織における内部統制システムのなかで中心となる機関であり、社会福祉法人が社会的に信頼される組織となるためにも、なくてはならないものと考える。評議員会には、事業の経営に当たる理事長や理事に対し、公益に合致した経営を志向させるように見守り規律づける役割が期待されているからである。
 新しい社会福祉法人制度では、評議員会は、法人運営の基本ルール・体制の決定と事後的な監督を行う機関として位置づけられている。議決機関といっても、事業運営のすべてのことについて、評議委員会の決議が求められているわけではない。議決事項は法律および定款が定める範囲に限られている。
 しかし、評議員会の主たる議決事項をみると、評議員会に期待されている役割が読み取れる。すなわち、議決事項には、定款の変更、理事および監事の選任と解任、役員報酬の支給基準の承認、計算書類(貸借対照表、収支計算書)の承認、法人解散の議決、合併契約の承認、社会福祉充実計画(再投下計画)の承認などがある。評議員会にこうした役割と権限を付与することも、公益性の高い社会福祉法人に相応しい適正かつ妥当な財務運営についての規律を構築するうえで、極めて重要と考える。
 こうしてみると、新しい社会福祉法人制度の重要なポイントの一つは、理事会および評議員会の役割を明確化し、執行機関と議決機関とを分離したことにある。評議員会を法人の重要事項に関する議決機関とし、執行機関である理事会も、評議員会の統制を受ける構造がつくられている。また、理事長をはじめとする理事役員が事業の経営に当たるが、評議員会が決算後開催される定時評議員会において、計算書類等の承認などのプロセスを通じ、事業が社会福祉法人制度の本旨にしたがい適正かつ健全に運営されているか審議する方法により、事後的に監督にあたる。社会福祉充実計画を作成し、事業利益をどのように地域に還元するかについても、最終的に評議員会の承認がなければ、所轄庁に提出できない。
 不当に高額な役員報酬は事実上の利益の配分に当たるおそれがある。こうしたことがないように、民間事業者の役員の報酬および従業員の給与、当該社会福祉法人の経理の状況などから総合判断して決定することが求められる。作成された報酬基準に対し、こうした観点から妥当な水準かどうかを審議したうえで承認するのも、評議員会の役割である。

※ この記事は月刊誌「WAM」平成27年6月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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