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【福岡県】

身体障害者の舞台俳優育成 福岡市の認定NPO法人

西日本新聞 2017年5月25日(木)
演劇の体験を「爽快だった」と振り返る廣田渓さん(左)とスタッフの宮本聡さん
演劇の体験を「爽快だった」と振り返る廣田渓さん(左)とスタッフの宮本聡さん

 身体障害者などを対象にプロの演出家が演技指導する「俳優講座」が6、7月、福岡市で開かれる。同市の認定NPO法人「ニコちゃんの会」などが取り組む「すっごい演劇アートプロジェクト」の一環。プロジェクトでは過去、身体障害者が出演する舞台を上演してきた。2018年に新作を予定しており、講座は俳優養成とオーディションを兼ねる。

 講座は、電動車いす利用者と聴覚障害者を除く身体障害者が対象の「ほかクラ」(6月16〜18日)▽聴覚障害者対象の「しゅわクラ」(同23〜25日)▽電動車いす利用者対象の「でんクラA」(同30日〜7月2日)と「でんクラB」(7月14〜16日)。

 いずれも東京の劇団「山の手事情社」所属の俳優で演出家、倉品淳子さんが講師を務める。ニコちゃんの会の森山淳子代表理事(51)は「重い障害があり、自らに向けられた講座ではないと思う人もいると思うが、あきらめずに応募してほしい。『こんなこともできる』という発見があると思うし、そういう人だからこそ演じられる舞台をつくりたい」と話す。

 プロジェクトは2007年に始動。15〜17年は舞台「BUNNA(ブンナ)」を福岡や横浜、大阪など延べ5カ所で上演した。

 「人の目が怖くて下を向いていた自分が、上を向いて外出するようになった」。南福岡特別支援学校(福岡市)高等部3年、廣田渓さん(17)は16、17年の公演に出演した。筋肉が衰えていく筋ジストロフィーを小学生で発症。一時は無表情になり、他者への関心も失ったが、車いすに乗った俳優たちがぶつかりあいながら演技する「BUNNA」に衝撃を受け、オーディションを受けた。重度障害者が演劇なんてできるわけない−。そんな既成概念をぶち壊す演出は「爽快だった」。今はよく笑い、話す。

 スタッフとして参加する健常者とも固いきずなで結ばれた。2週間に及んだ横浜、大阪の連続公演で廣田さんに付き添ったのは、九州大大学院研究員で、ニコちゃんの会にパートで務める宮本聡さん(31)。寝食を共にし、自力で寝返りを打てない廣田さんの体位を2時間おきに変えた。ビジネスホテルでの入浴では「いす代わり」にもなったことも。「24時間一緒にいる家族の生活を実感した」。宮本さんは振り返る。

 廣田さんは「家から離れ、自由になる楽しさがあった」。練習では何度も厳しく指導されたが、次回作にも出演したいという思いは強い。自らの奥底にある「負の部分」をもっとさらけ出したいと思う。

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 講座参加費は千円。応募締め切りは6月6日。問い合わせはニコちゃんの会=092(863)5903。