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【宮城県】

被災児童 短歌・俳句創作が学ぶ習慣に

河北新報 2017年2月16日(木)
廊下に掲示された作品を眺める阿部校長(右)と石川さん
廊下に掲示された作品を眺める阿部校長(右)と石川さん
 東日本大震災で甚大な被害が出た宮城県女川町で、女川小(児童217人)が取り組む短歌や俳句の教育が実績を上げている。児童の作品は最近、河北新報の「河北歌壇」「河北俳壇」の常連だ。震災で学習意欲が減衰した子どもに、家庭学習を定着させようと始めた指導が実を結びつつある。
 短歌や俳句の指導に当たるのは阿部清司校長(57)。同校に赴任した2015年4月当時、約半数の児童が宿題をしないような状況だったという。
 阿部校長は「保護者の多くは被災して生活の再建に精いっぱい。子どもの学習に気を回す余裕がなかったのだろう」と推測する。
 児童の7割がスクールバス通学で、教員が学校で指導できる時間も限られ、家庭学習の充実が課題だった。阿部校長は昨年4月から、児童の学習習慣を取り戻すため、6年生48人に短歌や俳句の創作を宿題として出した。
 提出された作品は全て目を通し、特に優れた表現や努力の跡が感じられる作品にはコメントを添えて返却。優秀な作品は廊下に掲示している。
 一方で、昨年8月からは河北歌壇や河北俳壇などに投稿し、これまで新聞に掲載された作品は約80を数える。掲載された児童には賞状を贈っている。6年生に触発され、5年生31人も同10月に同様の取り組みを始めた。
 <雪が降り寒さと怖さを思い出す大震災を絶対忘れない>。1月22日に河北歌壇に掲載された作品は、6年石川碧偉(あおい)さん(12)が詠んだ。
 石川さんは震災当時、町内の保育所に通っていたが、震災の恐怖や不安は記憶に深く刻まれている。「あんなに怖い思いをしたことはなかった。地震や津波の恐ろしさを多くの人に伝えたいと思って作った短歌」と話す。
 河北俳壇選者の高野ムツオさん(69)=多賀城市=は「多くの児童が継続して投句していて熱心さが伝わる。感じたことを生き生きと表現した句が多く、楽しみにしている」と語り、言葉に関心を深める良い取り組みだと評価する。
 阿部校長は「家族や親戚を亡くした子も多い。心の傷が癒えるスピードは人それぞれ」と話し、児童の成長を見守っている。