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【愛媛県】

「死別の悲しみ乗り越える」グリーフ(悲嘆)ケア

愛媛新聞 2017年4月20日(木)
臨床心理士の井上実穂さん=7日、松山市南梅本町
臨床心理士の井上実穂さん=7日、松山市南梅本町
【専門家(愛媛・四国がんセンター臨床心理士)に聞く】
 誰もが経験する大切な家族や友人との死別。悲しみを受け入れ、折り合いをつけて生きていくにはどうすればいいのだろう。東日本大震災以降、国内でもグリーフ(悲嘆)ケアが注目されている。悲しみとの向き合い方や周囲ができるサポートについて、専門家に聞いた。
 「大切な人を相次いで失い、生きる意欲をなくしそうになった」。松山市の50代主婦は10年前に父親と死別し、その後母親や親友を亡くした。身近な人の死に初めて直面し、どうしていいか分からなかったという。「日常を取り戻すには時間が過ぎていくのを待つしかなかった」と振り返る。
 四国がんセンター(松山市南梅本町)の臨床心理士井上実穂さんによると悲嘆には、死別が現実となる前に起きる「予期悲嘆」、「通常の悲嘆」、死別後に重い精神症状や社会的機能の低下を引き起こす「複雑性悲嘆」の3種類がある。
 通常の悲嘆では落胆や不安、絶望、孤独感などのほか、食欲不振や睡眠障害、集中力の低下などが表れ、誰しもが経験する正常な反応とされる。ただ、死別にまつわる話題を避けたり、仕事に没頭したりするなど、人によって悲しみの表し方は異なる。
 悲しみからの回復とは、自分なりに大切な人の死を受け入れ、故人のいない現在の生活に取り組んでいける状態を指す。井上さんは「悲しみに暮れる時もあれば、少し元気になって趣味を楽しむ時もある。喪失と日常を行ったり来たりすることで時間の経過とともに少しずつ回復していく」と説明する。
 悲しみを乗り越えるにはいくつかポイントがある。まず死を悲しみ、死別したという事実や状況を理解することが大切だ。命日や記念日には故人を悼み、自分の現状や感謝を伝える手紙を書くなどして思いを形にする。悲しみは消えるわけではないが気持ちの整理につながる。命に向き合う種田山頭火や良寛の俳句をはじめ、小説や絵本も参考になる。
 一方、悲しみに暮れる家族や友人に対しどんなサポートが役立つのか。「もう少しの辛抱だよ」「1年たったんだから前向きになって」と声を掛けるのは逆効果で避けた方がいい。無理に気持ちを聞かず、食事の支度や葬儀の後片付けといった日常生活の支援が望まれるという。
 井上さんは「相手を大切に思っていたからこそ、喪失の後に悲しみが訪れる。ほとんどの人は自然に回復するが、難しい場合は医療者や専門家に相談してほしい」と話している。