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【山梨県】

認知症当事者が主役 カフェスタート3年

山梨日日新聞 2017年5月18日(木)
聴覚に障害のある人は手話で歌に参加し、協力者も一緒に手話をする
聴覚に障害のある人は手話で歌に参加し、協力者も一緒に手話をする

 楽器を演奏し、歌って踊り、おしゃべりをする。中央市地域包括支援センターが開く「オレンジカフェ中央」は、認知症の当事者が主役となり、場を盛り上げる。山梨県内で初めての認知症カフェとして2014年5月にスタートしてから3年、参加者は毎回50人ほどに上る。若年性認知症の人や男性介護者ら孤立しがちな人たちも集う、県内でも珍しい場になっている。〈窪田あずみ〉

 第4金曜日の午後、玉穂総合会館の一室には認知症の人と家族、ボランティアで運営を担う協力者をはじめ、医療や介護の専門職らさまざまな立場の人が集まる。男性介護者たちはテーブルを囲んで介護の情報を交換し、夫を介護する女性は困り事を専門職に相談する。歩いて過ごす当事者の女性には協力者が付き添い、他の家族が女性の手を取ることも。それぞれが思い思いに過ごす。

◎楽器を演奏
 「あ、『恋のバカンス』。昔歌った」。楽器演奏が始まると、70代女性の表情は明るくなる。マラカスを手に生き生きと歌うが、物忘れに悩んでいる。「何でも忘れちゃって困っちゃう。不安だよ」。家ではほとんど何もせずに過ごすといい、「前は何でもできたのに、まったく悔しいよね。でも何かしたい。笑うことも少なくなったけど、ここは楽しいよ。歌ったり踊ったりして気分が晴れる」。
 ギターやオカリナ、リコーダーなどを演奏するのは、65歳未満で発症した若年性認知症の男性や妻たち。ギターを演奏する男性に触発されオカリナを始めた男性(66)は、「演奏は面白くてやっている。みんなでやるのが一番いい」と話す。
 高齢者中心の介護サービスが利用しづらいなど、若年性認知症の人と家族は孤立しがちだが、妻(64)は「こうした場に出てくることで、同じ立場の人と話ができて支え合うこともできる。夫は演奏することが励みになり、私はここに集まる人たちとのきずなが日々の生きる支えになっている」と家に閉じこもらない大切さを語る。

◎息抜きの場
 演奏はカフェの名物になっていて、他の当事者と家族も歌ったり鈴を鳴らしたりし、聴覚に障害のある人は手話で加わる。同センター認知症地域支援推進員の松永絹子さんは「当事者は何もできないわけではないので、それぞれが主役になってほしい。当事者のできることや明るい表情を目にすることで、介護者の気持ちも変わる」と言う。
 市外からの参加者も受け入れ、発症から約10年になる妻(65)と足を運ぶ男性(62)もその一人。妻は相手が不快に思う言葉を口にしてしまうことがあり、男性は「出掛けられる場所はほぼない。介護者は孤独で、女性に比べ男性介護者はさらに行き場がない」と厳しさを感じている。カフェでは妻の言動を理解して言葉を掛けてもらえることから、「来やすくて最高の場。行き場があるといい」。男性にとっても、他の男性介護者たちと話ができる息抜きの場になっている。
 協力者は市内の介護経験者らで、小沢末子さんは「私自身、介護中に介護者同士で話せる場が欲しかった。楽しみに来てくれる人がたくさんいて、『ここはほっとする』と言ってもらえるとうれしい」と喜び、当事者が伸び伸び過ごす様子に張り合いを感じている。毎回約10人の協力者が参加し、カフェ終了後には当事者や家族への関わり方などを学んでいる。自然なサポートができるようになり、認知症の人の自宅に出向いて支援する「認とも」として活動する人も現れている。