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【高知県】

発達障害の意思疎通工夫を 「絵カード」を広めた門医師が講演

高知新聞 2017年10月2日(月)
絵カードで意思を伝えるPECS
絵カードで意思を伝えるPECS

 発達障害への理解を深めるセミナーがこのほど、高知市の県民文化ホールで開かれた。言葉を聞いて理解することが苦手な人に対し、絵カードを使って意思疎通を視覚的に支援する方法を日本に導入した児童精神科医の門(かど)真一郎さん(京都市児童福祉センター)が講演し、「障害者が自己選択、自己決定をして暮らす自立生活を目指して支援を進めてほしい」と呼び掛けた。

 国内では昨年4月、障害を理由とした差別を禁じる「障害者差別解消法」が施行された。国や自治体などに対し、費用などが負担になり過ぎない範囲で、設備やサービスを整える「合理的配慮」が義務付けられ、民間事業者にも努力するよう求めている。

 具体的には車いすの人が使える多目的トイレの整備や、耳の不自由な人に手話や文字で情報を示すことなどが当てはまる。門さんは講演で「その人の障害に合った必要な工夫ややり方を相手に伝え、してもらうこと」と説明した。

 耳で聞いて理解することが難しい自閉症スペクトラムの人にとっては、絵カードなどの視覚的な手掛かりを使ってコミュニケーションを助けることが合理的配慮になる。「『障害』は環境との関係の中に生じる事態」と門さん。「『言葉でコミュニケーションを取れ』と(苦手なことを無理に)求めるのではなく、視覚的な手掛かりがあれば理解しやすいという特性を生かした支援が必要です」

 視覚的支援として、門さんは米国で生まれた「絵カード交換式コミュニケーション・システム(PECS=ペクス)」を紹介した。物事を理解し、意思を伝えることを身に付ける方法で、言葉で意思疎通できない人や、自分から相手に関わることが難しい人が対象。菓子やおもちゃが描かれたカードを相手に渡して手に入れることから始め、段階を追ってコミュニケーションを取る方法を学ぶ。

 門さんが関わった42歳の男性は自閉症で重度の知的障害があり、言葉を発することがほとんどなかった。「常に指示を待ち、要求が伝えられず暴れることもあった」という。PECSを始めた当初はおどおどと周囲の顔色をうかがっていたが、1年後には「施設の職員」「お茶」「ください」の3枚のカードを組み合わせ、「○○さん、お茶ください」と要求できるようになり、笑顔も増えた。

 絵カードは家族や支援者が手作りするため、負担も大きいという。現在はタブレット端末を使ったPECSができ、自閉症の人が自分で簡単に絵カードを作れるようにもなった。講演では自作の絵カードで買い物をする映像も紹介され、門さんは「より自発的なコミュニケーションが可能になりました」。

 自閉症や知的障害のある人が自立した生活を送るためには、コミュニケーション支援が必要。中でも自分の意思を相手に伝えることが「自己選択や自己決定に欠かせない」と門さんは語る。

 その上で「合理的配慮の拒否は障害者の権利の侵害であり、差別的行為。差別解消法の施行から1年半が過ぎており、もう根付かないといけない」と訴えた。
 セミナーは県立療育福祉センターが主催。約200人が参加した。