ニュース
トップ

【高知県】

精神科が救急科と連携強化 患者急変の処置スムーズに 高知県

高知新聞 2018年7月9日(月)
心停止の場合は心電図で波形を確認し、必要なら電気ショックを行う。救急での処置も体験した(高知市の土佐病院)
心停止の場合は心電図で波形を確認し、必要なら電気ショックを行う。救急での処置も体験した(高知市の土佐病院)

昨年から講習会 身体疾患への対応充実
 精神科病院や病棟での患者急変に備え、精神科と救命救急科との連携が高知県内で進んでいる。身体疾患に対応する機会が少ない精神科の医師や看護師を対象にした救命講習を昨年から実施。顔の見える関係をつくることで、より良い治療を目指している。 
■互いを知る
 「病棟で入院患者が倒れました。さあ、どうしますか」
 6月下旬、高知市新本町2丁目の土佐病院で行われた救命講習。精神科の医師や看護師が人形を使い、心肺蘇生を練習した。「腕は真っすぐ。しっかり押して!」。インストラクターの声が響く中、胸骨圧迫を繰り返す。「久しぶりにやった」との声が上がった。 
 精神科向けの救命講習は昨年始まった。3回目の今回は同病院のほか、愛幸病院(高知市)、海辺の杜ホスピタル(同)、南国病院(南国市)から12人が参加。高知医療センター、高知赤十字病院などの医師や看護師がインストラクターを務めた。 
 企画した同センター救命救急科医師の野島剛さんは「お互いの現場をもっと知るため」と狙いを説明する。 
 野島さんによると、救急搬送のうち精神疾患があったり、疑われたりする患者は「1割弱ほど」。数は多くないが、精神科病院からの搬送はうまく進まないことが少なからずあるという。 
 背景には、精神科と救急の環境や意識の差がある。 
 救命救急センターでの勤務経験もある土佐病院の看護師、和田修幸さんは「精神科病院は一般科と比べて医師や看護師が少なく、医療機器なども限られている」と説明。その上で「身体疾患への経験が少なく、スムーズな対応が困難な状況にある」と打ち明ける。 
 さらに、精神科が搬送後の治療を想定できていないこと、救急が精神科の現状を十分に把握できていないことが、精神科で行う処置と救急が望む処置との間にギャップを生んでいる。 
 「救急は『何でこの処置をしないまま送ってくるのか』と思ってしまいがち」と野島さん。加えて、精神疾患患者への対応の難しさ、苦手意識もあるという。 
 「互いの現場を知らないことでできた“溝”を埋めていきたい」。一緒に講習を行うことで顔の見える関係をつくり、必要な処置や情報共有につなげようというわけだ。 
■増える参加
 精神科病院では体調不良のほか、窒息や自殺未遂などによる救急要請が想定される。呼吸のための気道管理や、点滴を行うための太い針を腕に刺すなどの処置を済ませておくと、救急での治療がスムーズになるという。 
 講習では精神科特有の症例として「腕が拘縮し、胸の前で固まっている認知症患者へのAED(自動体外式除細動器)の使い方」「首を損傷した場合の気道確保」なども紹介。受講した土佐病院の須藤康彦院長は「精神科病院での対応を充実させる内容。続けていきたい」と話していた。 
 今回は同病院のスタッフもインストラクターを務めた。講習を重ねることで病院間の連携が生まれ、参加病院も増えている。 
 野島さんは「緊急時に最低限必要な薬など、救急側も学ぶべきことがある」とし、精神科の知識を身に付ける研修なども考えている。「身体疾患も精神疾患も、患者が病気で苦しんでいることに変わりはない。患者の利益につながる活動を県内に広げたい」と話している。(門田朋三)