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【高知県】

となり合う個性 精神障害者の現場から(8)生活楽しみながら

高知新聞 2018年7月12日(木)
当事者や住民らが納涼祭について話し合う「りんく・じょい」のミーティングと、運営組織「助っ人会」のカード(コラージュ=岡崎紗和作成)
当事者や住民らが納涼祭について話し合う「りんく・じょい」のミーティングと、運営組織「助っ人会」のカード(コラージュ=岡崎紗和作成)

 「お疲れさまでーす」「調子はどう?」

 明るいあいさつを交わし、一人、また一人と夕方の集会室にやって来た。

 高知市の社会福祉法人「さんかく広場」が運営し、2015年度から県の委託で取り組んでいる就労障害者交流拠点事業「りんく・じょい」の集まりだ。

 同法人が運営するカフェなどを拠点に、精神障害の当事者や住民らが交じり、さまざまな催しを楽しむ。誰がどのような障害があるか、聞くこともない。

■働く以外で
 当事者や住民ら十数人が集まったこの日は、催しを企画運営する組織「助っ人会」のミーティングだ。

 議題は、同法人の就労継続支援B型事業所「広場さんばし」(同市桟橋通2丁目)の敷地などで8月末に開く納涼祭の準備について。

 同法人の「りんく―」事業責任者、伊藤英助さん(50)は今回初めて、飲食や音楽などの係を当事者に分担し、運営を任せることにした。

 「チョコバナナは出せんかな?」「演奏は『小さな世界』や『さんぽ』はどうでしょう?」。机を囲んで和やかにアイデアが飛び交うのを、ソファでゆったり見守る人もいた。

 「就労は大きな目標。ただ、仕事をするためには、生活がきちんと成り立っていることが大事では」と伊藤さんは問い掛ける。

 「働く以外の時間をどう過ごすか、職場以外の居場所が担保されているか。生活を楽しみ、安心して暮らせる地域があることで当事者は働き続けられるのではないでしょうか」

 カフェで晩ご飯を食べながら愚痴をこぼしてもらうなど、「りんく―」は事業名の通り、地域と「楽しんでつながる」場を目指している。

 ユニクロや高知銀行など各分野のプロに依頼し、ファッションやお金のため方など、「生活を楽しむ技術」をレクチャーしてもらうユニークな交流会もある。無料で月1回程度開き、昨年度は延べ約330人が訪れた。

 賃貸住宅の借り方をテーマに、高知ハウスの担当者を招いた会には、事前に地域120世帯にチラシを配った結果、一人暮らしの高齢者ら住民10人も参加。保証人などに関する困り事を担当者に尋ね、不安や悩みを分かち合っていた。

■グラデーション
 「りんく―」は今年、当事者の社会参加に向けた全国の優れた活動に贈る「精神障害者自立支援活動賞」(通称=リリー賞)に選ばれた。

 「いろんな居場所が地域に増えるといいですね」。そう話す伊藤さんは、「助っ人会」メンバー用の手作りカードを記者にくれた。

 当初、多彩な個性を持つ当事者たちを虹に例え、1色ずつ7種類の色を並べて塗ったカードを渡したという。それを見た一人は「僕ら、こんなきっちり分かれてないでね?」。納得した伊藤さんは、色が少しずつ重なり合うよう描き直した。

 「隣の色と交わって新しい色が生まれる。でも自分の色を失う必要はない」。グラデーションの色合いに、そんな思いも込めた。(報道部・山本仁、学芸部・徳澄裕子)