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【京都府】

西陣織支える知的障害者 工房開所15年、10業者から受注

京都新聞 2018年9月10日(月)
ジャカード織機を使う利用者。工房には3台の機械が入り、さまざまな製品を織る(京都市北区大将軍川端町・西陣工房)
ジャカード織機を使う利用者。工房には3台の機械が入り、さまざまな製品を織る(京都市北区大将軍川端町・西陣工房)

 「ガッシャン、ガッシャン」−。3階建てビルの中から、機織りの音がリズム良く響いてくる。慣れた手つきで布を織り上げるのは、京都市北区の就労継続支援事業所「西陣工房」で働く知的障害のある人たち。工房は開所から今年で15年目を迎え、「福祉から地場産業を支える」という目標に向かって着実に歩を進めている。

 工房ができたのは2004年9月。西陣織の工程の一つで経(たて)糸を整える「整経」を行う家で育ち、京都市内の福祉施設で長く働いていた河合隆施設長(61)が、西陣織と福祉をつなげられないかと考え、立ち上げた。

 はじめは知的障害のある3人で組みひもの生産からスタート。2007年には修学旅行生や観光客に、工房で働く人が組みひも作りを指導する体験教室を始め、今では年間に約700人が工房を訪れる。その後、糸繰り機や複雑な文様を織れる「ジャカード機」を順次導入し、本格的な西陣織の技術習得に乗り出した。

 中村賢太郎さん(19)=左京区=は、工房に通い始めて2年目。今年8月から、手織りできるジャカード機を使って作業を始めた。正絹の糸を機械に通し、美しい紋を織り上げていく。「手で織るのは楽しい」と、笑顔を見せる。

 現在、27人が工房で働くが、言葉での意思疎通が難しい人も多い。複雑な作業を習得するのに時間がかかるが、「見たものを記憶するのが得意な人もいる。粘り強く教えると、覚えられる」と河合施設長。

 今、中央省庁などで障害者雇用の水増しが問題になっているが、「工夫次第でその人の能力を伸ばすことができる。雇用確保の面だけでなく、どんな仕事をすればキャリアアップになるかを考えることが重要だ」と話す。

 工房では今夏、夏用の生地「紗(しゃ)」を織る機械を新たに導入した。織物は自主製品として、市内の店舗やネット通販などでも販売しており、多様な製品を生み出すことで販路拡大を目指す。糸繰りはすでに、市内の個人や企業約10業者から継続的に発注を受け、地場の産業を支えている。

 「工房で働く人たちが良質の物を作り続け、伝統産業の後継者になれるようレベルアップすることで、西陣を支えていきたい」と、河合施設長は力を込める。