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【青森県】

移動スーパー、買い物弱者支える

東奥日報 2018年9月13日(木)
移動スーパー「とくし丸」の仕事にやりがいを感じているという伊藤さん。「今後も移動スーパーのニーズは増える」=8月、八戸市
移動スーパー「とくし丸」の仕事にやりがいを感じているという伊藤さん。「今後も移動スーパーのニーズは増える」=8月、八戸市

 日常の買い物に困っている人らを対象にした移動スーパー(移動販売)が青森県内で増えている。近くに商店がなく、移動手段がない高齢者のもとに出向く取り組みは、食料や日用品だけでなく、心の健康や安心感も届けている。専門家は「相談や見守りサービスの役割を加えることにより、さらに価値が高まる」と指摘する。

 田畑が広がるつがる市木造地区。8月末、移動スーパー「あるびょん号」は、スピーカーから「つがる市民の歌」を流しながら、農家の前で止まった。

 つえを突いてゆっくり家から出てきた70代の女性は、軽トラックの荷台に積まれた約600点の商品から、納豆や総菜などを選びながら「選ぶのは楽しい。気晴らしになる」と語った。80代の1人暮らしの女性は「毎回、車が来るのを楽しみに待っている」と笑顔を見せた。あるびょん号は、NPO「元気おたすけ隊」が今年7月から、木造地区で実施している県の実証事業。継続可能なビジネスとなり得るか探っている。

 NPO代表理事の長谷川靖久さん(59)によると、地区には商店が少なく、「買い物弱者」も少なくないという。「移動スーパーは、見守り、コミュニケーションの場になっている。高齢者の困りごとに耳を傾けていきたい」と意欲を語る。

 県南地域でスーパーを運営する「よこまち」(八戸市)は3年前から移動スーパー「とくし丸」事業を実施。現在、八戸、三沢、五戸の3市町の店舗で7台を稼働させている。

 伊藤康紀さん(46)=八戸市=は2年前、脱サラし、とくし丸のオーナーとなった。よこまちストア旭ケ丘店(八戸市)を拠点に住宅街を回る。売り上げは、上向き傾向という。

 「市部の方が1人暮らしの人が多く、ニーズも高い。とくし丸が来なければ『家から出ない』『人と話さない』という人もいる。以前は、タクシーで買い物に行っていたというお年寄りも利用している」と語る。

 よこまちストア五戸店(五戸町)でとくし丸を担当する同社社員の東稔さん(59)は「お年寄りは、ただ商品を買うだけでなく、選ぶ楽しさを感じているようだ」と話す。

 県の資料などによると、県の実証事業を含め少なくとも8事業者が県内で移動販売を行っている。「カネダイキ晴海」が15年から、青森市と外ケ浜町で魚介類の販売を実施。県民生活協同組合は、青森市や東郡のほか、五所川原市七和地区で住民と連携した取り組みを行っている。南部町では、つがる市と同様、県の実証事業が行われている。

 県商工政策課は、移動スーパーの長所として、利用者が、自宅の近くで好きな商品を選ぶことができることを挙げ、課題として、遠地では時間と費用がかかることを指摘する。

 八戸学院大学人間健康学科の小柳達也講師は「移動スーパーは、高齢者が住み慣れた地域で生活を続けていくための生活支援サービス(社会資源)の一つ。コミュニティービジネスとしての価値も期待できる。見守りや相談などのサービスをセットで提供することにより、その質や価値が高まる」と話し、「買い物に困っている高齢者の所在を把握し、移動販売サービスがあることを周知することが重要となる」と語る。