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【長崎県】

「きょうだい児」自分大切に 結婚や将来の世話・・・ネットにあふれる不安

長崎新聞 2018年11月5日(月)
久々に家族で集まった(右から)守永さん、稔さん、父親の勇さん、長男の修さん=山梨県内(守永さん提供)
久々に家族で集まった(右から)守永さん、稔さん、父親の勇さん、長男の修さん=山梨県内(守永さん提供)

 会員制交流サイト(SNS)で「#きょうだい児」というハッシュタグが付いた投稿が相次いでいる。障害や難病を抱える人を兄弟姉妹に持つ「きょうだい児」によるもので、多くは自らの結婚や、将来の世話への不安を打ち明けている。自閉症と知的障害を抱える弟と育ちながら、子育てを経験した佐世保市のNPO法人「ちいきのなかま」の理事長、守永惠さん(58)は「きょうだいも自分の人生を大切にして」と呼び掛ける。
 「障害児のお姉ちゃんになんかなりたくなかった」「親が死んだ後の後始末を押しつけられるの僕なんだけどね」−。
 10月末。ちいきのなかまの事務所。ツイッターで「#きょうだい児」と検索すると、激しい言葉が並ぶ。「ネットでなければ『そう思っていいんだよ』と言ってあげられるのに」。守永さんはため息をつき、タブレットの画面を見つめた。

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 守永さんは3人きょうだいの長女として山梨県で育った。八つ下の次男、間々瀬稔さん(50)の自閉症が分かったのは彼が5歳のころだった。寒い日に外に裸で飛び出すのを追い掛けたり、使い終わった布おむつを洗ったり…。稔さんの子育てに精いっぱいの両親を目の当たりにして「家族がうまくいくために努力をした」。でも頑張りを認めてくれる人はいなかった。
 「稔がいなくなれば楽なのに」。思春期に差しかかると、跳ねたりパニックになったりする稔さんが嫌になり、周囲に弟は1人しかいないと説明したこともあった。一方で、稔さんと向き合う施設の職員や特別支援学校の教員を見て、福祉を目指す気持ちも芽生えた。同じ道に飛び込むことで「いびつでだめな」自分を変えたかった。
 日本福祉大(愛知県)で夫と出会った。夫にも病気のきょうだいがおり、理解はあった。しかし嫁ぎ先は遠く離れた長崎。いずれ稔さんを自分に託したいと思っている両親の思いを振り切るように、結婚した。「絶対に幸せになってやる」。そう強く思った。
 結婚、出産、子育て。幸せな出来事が増えるほど、「自分だけが幸せになっていいのか」と罪悪感が生まれた。一方で出産中にいきみが止まらなくなったとき、稔さんが産道で頭が圧迫されたことがよぎった。「障害児を産みたくない」。弟を大切にしたい思いと、存在を否定する気持ちの間で、揺れた。

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 稔さんの“きょうだい”になって50年。最近やっと稔さんの幸せを考えられるようになった。将来の世話を願った両親には、孫と触れ合う喜びを感じてもらった。「これでよかったと、今は思える」
 「この写真を使ってほしいな」。きょうだい児が激しい言葉で思いをつづる画面に、今度は1枚の写真が映し出された。守永さんと父親の勇さんと長男の修さんに囲まれていたのは、ハンチング姿ではにかむ稔さん。「いい表情でしょう」。久々の家族写真に笑みをこぼした。

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 ちいきのなかまは、10日午後1時半〜3時半、佐世保市三浦町の市男女共同参画推進センターできょうだい支援に関する講演会を開く。参加費500円。ちいきのなかま(電090・9498・3608)。

◎きょうだい児
 障害や病気を抱えた人の兄弟姉妹。親が世話に時間を割くため、孤独感や不満などさまざまな心理的負担を負いやすく、生きづらさを感じている人もいる。全国では当事者同士が話せる場をつくる活動に取り組む団体もできている。