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【神奈川県】

心もバリアフリーに  障害ある家族と外出楽しむ姿を冊子に 特別支援学校保護者有志

神奈川新聞 2018年11月9日(金)
冊子の制作に携わった保護者ら=横浜市保土ケ谷区
冊子の制作に携わった保護者ら=横浜市保土ケ谷区

 神奈川県内の特別支援学校の保護者有志が、障害がある息子や娘との生活を紹介した冊子「enjoy ist(エンジョイイスト)。かながわ」を出版した。焦点を当てたのは、人や自然との出会いを楽しむ家族の姿。自宅や学校にとどまるのではなく、積極的に外に出て「心のバリアフリーを広げよう」−。そんな思いが詰まった一冊だ。
 大好きなサッカーJ1川崎フロンターレのチームカラーと同じ水色の車いすでホーム戦のほぼ全試合を応援、ミキサー食を持参して大自然に身を置くキャンプに挑戦、座位保持器具を使ってヨットを満喫−。冊子は外出を楽しむ“エンジョイイスト”たちの笑顔で彩られている。
 制作委員会代表を務めたのは、娘が横浜市立上菅田特別支援学校(同市保土ケ谷区)に通う田中朋子さん(47)。きっかけは約2年前、同校の佐塚丈彦校長(60)からの後押しだった。
 娘の花歩さん(15)は歩いたり、話したりすることは難しいものの、音楽に触れると目を輝かせて喜ぶという。バイオリンとピアノの男性ユニットの音楽ライブにも出掛けていることを田中さんが伝えると、「楽しんでいる姿を発信してみては」と提案された。佐塚校長は「学校や家庭内では幸せでも、一歩外は障害者にとってまだ出づらいムードがある。それでも外に出て行かないと社会は変わらないという思いがあった」と振り返る。
 田中さんが他校も含めて有志を募ると、県立中原養護学校(川崎市中原区)や県立座間養護学校(座間市)など県内6校の保護者9人が集まった。昨年6月ごろから制作を本格化。取材やレイアウトもすべて保護者らが手掛け、利用しやすい商業施設や博物館などのおすすめのスポット、障害児や家族と向き合ってきた県立こども医療センターの医師のインタビューも収録した。
 田中さんも花歩さんとの音楽ライブ体験を紹介。当初は「迷惑かも」「会場の段差は大丈夫かな」と不安は尽きなかったが、「回数を重ねることで顔見知りや人とのつながりができ、周りのファンもさりげなく荷物を持ってくれたり、スタッフが声を掛けてくれたりする」と話す。
 娘の小春さん(11)が上菅田に通う黒野真紀さん(48)はイラストを担当。周囲に見つめられることに戸惑う車いすの少女の姿を描いた。「車いすの娘に『お先にどうぞ』と言ってくれる人がすごくドキドキしているのが分かる。でも、声を掛けてくれるとうれしい。そういうことをポジティブに発信できたら」との思いを込めた。
 冊子が完成した10月、同校でささやかなお祝いの会が開かれた。家事や子どもの通院などの合間を縫って制作に取り組んだ日々を思い、メンバーから涙があふれる場面も。初版千部だが、会場から「目指せ5千部!」との声も飛び出し、温かい笑いに包まれた。
 600円(税抜き)。全国の書店で注文できる。問い合わせは「ジ アース教育新社」電話03(5282)7183。