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【長崎県】

知的、発達障害の中高生らを支援 放課後等デイサービス「アステップ」

長崎新聞 2018年12月7日(金)
社会生活技能訓練で、頼み事の仕方について学ぶ中高生=島原市、アステップ
社会生活技能訓練で、頼み事の仕方について学ぶ中高生=島原市、アステップ

 主に知的障害や発達障害の中高生を対象にした島原市弁天町2丁目の放課後等デイサービス(放課後デイ)「アステップ」は、就職に役立つ能力や技術の習得支援に特化して4月に開所した。障害者は限られた職種や作業にしか就けない現状があり、「早くから準備することで職業の選択肢を広げたい」との思いで運営。子どもたちは好きな仕事に就く夢を育みながら、楽しく学んでいる。

□ 和気あいあい

 「頼みを聞いたのに、お礼を言わない人ってどう思う?」「嫌です!」
 放課後デイは、特別支援学校や特別支援学級などに通う生徒の就学時間外の居場所をつくり、生活能力の訓練などを実施する場だ。11月下旬、アステップに放課後来た生徒たちは、頼み事の仕方を学ぶ社会生活技能訓練(SST)を受講。櫨(はぜ)本(もと)紗也加指導員(26)がパワーポイントを映しながら講義した。

 ▽頼み事をするのにふさわしい姿勢で話す▽理由を言う▽してほしいことを詳しく言う−などのポイントを学習。最後に2人一組で、実際に頼み事をするロールプレイに取り組んだ。

 この日は中学1年から高校3年まで、学校も違う男女7人が参加。仲良く言葉を交わし、和気あいあいとした雰囲気。ほぼ毎日通う高校1年の永野愛弓さんは「みんなとコミュニケーションやマナーを学べて楽しい。将来は介護の仕事がしたい」と笑顔を見せた。

 仕分け作業の実習を経て帰宅時間に。子どもたちの帰りのあいさつは「お先に失礼します」。アステップの児童発達管理責任者で社会福祉士の北岡里恵さん(40)は「これも就職した時のための準備。ある日突然『さよなら』から切り替えるのは難しい場合があるから」と教えてくれた。

□ 塾形式で運営

 アステップは、南島原市の社会福祉法人コスモス会(本田利峰理事長)が開設。訓練を就職向けのメニューに絞り、塾形式で運営しているのが特色だ。

 平日の放課後は50分間の訓練が2こまあり、「SST」と「ワーク(作業実習)」「PC(パソコン実習)」を組み合わせて開講。SSTでは報告や伝達、言葉遣い、お金の使い方といった社会人の基礎的な知識、技能を学ぶ。ワークも、選別や仕分けなど実際の就労に役立つ内容。土曜などに職場体験もある。定員は10人。利用者は、状況に応じて毎日通う人から週1回程度までさまざまだ。

 就職準備に特化した放課後デイは県内はもちろん、全国的にもまだ珍しい。開設の背景には、障害者の就職を取り巻く現状がある。

 文部科学省の調査によると、昨年3月の全国の特別支援学校高等部(本科)卒業生のうち、就職者は全体の約3割の6411人。うち知的障害者は6029人を占めるが、職種別ではサービス、生産工程、運搬・清掃などの比率が高い。また、障害者職業総合センターの2015年の調査では、一般企業に就職した知的、発達障害者の3割前後が1年以内に離職している。

□ 努力できる場

 アステップの本田利一郎施設長(34)は「近年は就職を希望する子どもや保護者が多いが、学校外で就職に向けて努力できる場が地域になかった。知的、発達障害児の多くは急な環境の変化が苦手な半面、訓練を繰り返すことで対応が身に付くことも多い。早くから必要な訓練をすれば、職業の選択肢の拡大や勤務の継続につながる可能性が高い」と説明。「島原半島は少子高齢化が深刻。まだ手探りだが、地域の宝である子どもの可能性を広げることに役立てれば」と話す。

 一方で、障害者の職業選択の幅が広がるためには、企業など受け入れる側の理解と取り組みも不可欠だ。障害者雇用水増し問題では、中央省庁や本県などの地方自治体でさえ、法定雇用率を満たしていなかったり、知的、精神障害者を雇用していなかったりしたことが表面化した。本田施設長は「企業や社会においても、障害者への配慮や特性の理解がもっと進んでほしい」と語る。

◎放課後等デイサービス

 障害がある子どもを放課後や休日に預かる通所型サービス。児童福祉法に基づく支援で2012年度に創設。利用料の自己負担が原則1割、残りを国や地方自治体が負担する。市町から障害福祉サービス受給者証の交付を受けて利用。療育手帳などを所持していなくても、受給者証を受ければ利用できる。県の公表によると11月現在、県内の事業所数は203カ所。