被災福祉施設復興事例紹介
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〜 宮城県 仙台市 〜

社会福祉法人愛泉会

「特別養護老人ホーム潮音荘(泉音の郷)」の復興事例紹介

取材日 平成26年9月4日
東日本大震災により、死者655人・行方不明者30人、半壊以上の住家139,643棟といった被害を受けた宮城県仙台市(出典:宮城県庁ホームページ【平成26年9月30日現在】)。今回は、津波により甚大な被害を受けた「特別養護老人ホーム潮音荘」の復興状況を取材した。

被災地域(旧施設所在地)、再建地域(新施設所在地)と南三陸町浸水区域マップ



※浸水区域データの出典:国土交通省都市局『復興支援調査アーカイブ』データ


甚大な被害を受けた「特別養護老人ホーム潮音荘」

 社会福祉法人愛泉会が運営する特別養護老人ホーム潮音荘は、海岸から約1kmの場所にありました。同法人は、潮音荘の近隣にケアハウスやデイサービスセンター等も運営していましたが、津波によりそれらの施設も被災し、法人全体として大きな被害を受けました。
 地震発生後、大津波警報が発表されました。潮音荘の利用者を2階へ避難させたり、内陸の小学校へ避難させたりしましたが、避難の誘導を行っていた職員、避難所の小学校へ向かう途中の職員・利用者が津波の犠牲になってしまいました。潮音荘の1階には、大量の瓦礫や防風林の松の木が流れ込み、2階も一部浸水しました。
 潮音荘の電気や水道等のライフラインは寸断されましたが、2階に避難した利用者の中には大けがをされた方や目立って動揺された方はいなかったということです。当初、ケアハウスやデイサービスセンターの利用者も含め、115名が潮音荘の2階に集まりました。そして、その115名を20名の職員で対応したそうです。幸い、3日分の非常食や飲料水、紙オムツを2階の倉庫に保管していたので、ライフラインが寸断された中でも危機をしのぐことができました。潮音荘に人がいることを知らせるため、上空を通るヘリコプターに向けて、職員が夜通し懐中電灯を照らした甲斐あって、被災翌日の3月12日、利用者・職員ともにヘリコプターで救助されました。
 その後、避難所から利用者を他の施設に移動させることも検討したそうですが、環境が変わることによって体調を崩したりすること等の“二次被害”を防ぐため、かつて診療所だった仙台市青葉区にある空施設を改修し、臨時の潮音荘として職員・利用者ともに移動して生活をしていました。

▲ 甚大な被害を受けた特別養護老人ホーム潮音荘

地域とのつながりを大事にした施設づくり

 今般、新しく建築を行う地域は、仙台市の計画で福祉と医療に特化した開発区域であり、海岸から10km以上離れていることから、津波の心配をする必要はありません。近隣にはクリニックや薬局、保育園、復興公営住宅が建築または建設予定となっています。施設は、5階建て(1階:デイサービス・ケアプランセンター、2階:ケアハウス、3・4階:特別養護老人ホーム、5階:ショートステイ)となっています。
 今後は、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター(いずれも同法人運営)と協力し合い、復興公営住宅に住む高齢者の福祉ニーズにも応えていく予定です。
 また、新しい施設は地域交流スペースが広いことが特徴です。地域交流スペースは住民の憩いの場・地域活動の場とし、ボランティア活動や家族交流会、福祉教育等を行っていきたいということです。

▲ 外観 ▲ 居室

災害の教訓を生かした施設づくり

 新しく建築を行う地域は、一般に都市ガスを使用していますが、震災の教訓を生かし、新しい施設では一部でプロパンガスを導入することとしました。可動式のコンロも備えており、プロパンガスを利用し、野外で炊き出しができるようにしました。震災時に比較的手に入りやすかった重油で発電できる設備も備えており、約7日間の電力を確保することもできます。
 また、広めに確保した地域交流スペースは避難所として利用することもできるよう、大規模災害のときには区切ることができ、洗面台やシャワーも完備しています。プライバシーを確保することはもちろん、ユニット型の個室で過ごしてきた利用者の方が、大勢が集まるスペースで避難生活を送ることは大きな負担となるため、様々な配慮により避難者のストレスを軽減できるよう工夫されています。


法人全体で職員研修をサポート

 震災後は、PTSD等の精神的症状に苦しむ職員が多く、職員の退職が相次いだそうですが、今は離職率が低く、安定した雇用ができるようになってきたそうです。施設は平成26年12月に開所ですが、同年4月から先行して職員を採用し、法人運営の別施設で経験を積んでいるところです。採用については、介護福祉士等の資格を持っていなければならないということではありません。施設長などを「人財育成研修担当」職員として施設に配置し、採用してから研修を行って職員を育てるという、法人全体でサポートする仕組みとなっています。

望岳荘として再出発

 「潮音荘」は、名前のとおり波の音が聞こえるほど海岸に近い場所にありました。愛着のある名前であっても震災の辛さを思い出してしまうきっかけになることを避けるため、施設名を変更し、潮音荘の「音」の字を引き継いで「泉音の郷(せんねのさと)」としました。また、屋上から泉区のシンボルである泉ヶ岳を望むことができるため、泉音の郷の他、ケアハウスやデイサービス等を含む施設全体の名前を「望岳荘(ぼうだけそう)」としました。屋上からは、花火大会も見ることができます。
 新たに再出発する望岳荘。福祉避難所として市の指定を受ける予定もあります。地域へ福祉サービスを提供する施設としてのみならず、居宅介護支援事業所、地域包括支援センターと協力し合い、地域に安心も提供していく中心的役割を担っていくことでしょう。


▲ 屋上からの風景。(取材日は、あいにくの天気で泉ヶ岳を望むことはできませんでした。)


<< 法人概要 >>
法人名 社会福祉法人愛泉会 理事長 佐藤 浩 氏
法人施設 特別養護老人ホーム愛泉荘、特別養護老人ホーム潮音荘、ケアハウス松涛館、泉中央デイサービスセンター、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所、障害者支援施設幸泉学園(生活介護、施設入所支援)、障害者日中活動支援施設かむり学園(生活介護)
旧施設所在地 宮城県仙台市若林区荒浜字一本杉南11−1
新施設所在地 宮城県仙台市泉区泉中央南15番地
福祉医療機構融資額 -
設立時期 昭和58年8月 再建時期 平成26年12月
URL http://www.aisenkai.or.jp/index.html