被災福祉施設復興事例紹介
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〜 宮城県 気仙沼市 〜

社会福祉法人鶯会

「ケアハウスみなみ」の復興事例紹介

取材日 平成26年9月19日
東日本大震災により、死者1,197人・行方不明者232人、半壊以上の建物11,054棟といった被害を受けた宮城県気仙沼市(出典:宮城県庁ホームページ)。その「中みなと町」に拠点を構え、被災した「ケアハウスみなみ」の復興状況を取材した。

被災地域(旧施設所在地)、再建地域(新施設所在地)と気仙沼市浸水区域マップ



※浸水区域データの出典:国土交通省都市局『復興支援調査アーカイブ』データ


津波により建物は全壊、火災に耐えた「ケアハウスみなみ」

 宮城県気仙沼市の鹿折(ししおり)地区「中みなと町」に鉄筋コンクリート造3階建てのケアハウスみなみがありました。東日本大震災の地震発生後は、3階の談話室へと職員と利用者が声をかけあって急いで避難しましたが、津波が到達するまでの時間は「あっという間」(施設長後藤さん)だったそうで、施設の2階の廊下1.5m上までが浸水し、避難が間に合わなかった利用者は津波に巻き込まれました。幸い、その状況を職員がいち早く発見したことで、入水した利用者も救助することができ、助かることができました。
 3階の談話室へ避難した後、施設の周りで火災が発生しました。火災が発生した原因は、地域にあった石油タンク群が津波により破壊され、気仙沼湾に石油類が流出し、海面上にあった瓦礫に引火したことなどが発端だそうです。
 ケアハウスみなみには、3月11日の深夜になって、施設の北側に燃えた瓦礫が流されてきました。火災が徐々に施設に近づいてきたこともあって、燃えた瓦礫から遠い3階の南東側の居室に移動して夜を明かすこととしました。
 翌12日の午後には施設の南側にあった瓦礫が燃えてきました。施設の南側は津波によって流されてきた家々が折り重なっていたこともあり、建物に火が移ってしまうことを心配した施設長の後藤さんは、南東側から北西と北東の居室に移動することを指示しました。移動してしばらくすると、今度は施設の東側に流れてきた瓦礫も燃え広がってきたため、北東の居室に移動した利用者も北西の居室に移動し直し、全員でまとまって救助を待つことにしました。火災に耐え、ようやく救助されたのは3月12日の夕方頃のことです。

▲ 新「ケアハウスみなみ」の居室から被災した鹿折地区を臨む

仮設のケアハウスの運営して、再建を目指す

 救助された利用者と職員は地域の中学校の体育館に避難しました。避難生活が長くなるにつれ、比較的元気だった高齢者でも、疲弊して歩けなくなってしまう方もいました。これには「早急に仮設のケアハウスが必要」(施設長後藤さん)と感じたそうです。
 幸いにも適した物件が見つかり、そこでの開所が可能か、県に問い合わせを行ないました。県からは開所するための条件として、「瓦礫がないこと」、「浸水区域ではないこと」、「3年以内に再建すること」などが示されました。運営の許可が得られた後、二千万円ほどの費用をかけて物件の改築を行ないました。震災の影響で、材料が揃わなかったり、人手不足等もあって、工事は思うように進まなかったとのことですが、平成23年10月1日にようやく仮設のケアハウスを開所することができました。
 その後は、新しいケアハウスみなみの再建に向けても動き出しました。ケアハウスみなみが元あった場所は建設制限地区に指定されたことや、震災の教訓も踏まえて高台へ移転することとしました。

旧施設と同じ構造で新施設を再建し、地域の復興も支援する

 新しいケアハウスみなみは地域の震災復興を支援するためデイサービスセンターを併設して、気仙沼市の栄町に建てられました。開所は平成26年2月16日。仮設のケアハウス運営の条件であった「3年以内の再建」も無事果たすことができました。建設資金は、国や市からの補助金、福祉医療機構の災害復旧資金5億5千万円強の融資を利用しました。再建ができるかどうかわからない時期に相談会などで、資金の融資が可能であることがわかったときには、「背中を押された気持ちになった」(施設長後藤さん)とのことでした。
 新しい施設はこだわりをもって旧施設と同じ構造としました。理由は2つあります。1つは、施設の防火対策です。「旧ケアハウスみなみが延焼しなかったおかげで命が助かった。」と施設長の後藤さんは話します。利用者の一人であった1級建築士からは「この施設は燃えない」と太鼓判を押された耐火構造であったそうです。もう1つの理由は、利用者の生活環境が変わらないようにすることです。新しい施設であってもこれまでの施設と同じように生活してほしいという思いがあったそうです。

▲ ケアハウスみなみ外観(手前の平屋がデイサービス、奥の3階建てがケアハウス。)

地域のコミュニティ再生へ向けて

 地域との連携については、今後の課題とのことでした。震災によって半数以上の世帯がなくなり、新設した栄町では住民が集まるような機会もなくなっており、地域コミュニティが希薄であるとのことです。こうした中、ケアハウスみなみでは、施設でイベントを開催する際には近隣の方に声をかけたりといった地道な関係づくりを始めています。
 今後はケアハウスみなみが地域の復興、コミュニティ再生の中核を担う施設として活躍されることを期待したいと思います。

▲ 土地の嵩上げ工事が進む気仙沼市の鹿折地区


<< 法人概要 >>
法人名 社会福祉法人鶯会 理事長 後藤 喜栄子 氏
法人施設 ケアハウスみなみ(デイサービス併設)
旧施設所在地 宮城県気仙沼市中みなと町85
新施設所在地 宮城県気仙沼市栄町2番11号
法人設立時期 平成12年9月 施設再建時期 平成26年2月16日
福祉医療機構融資額 555,500千円
URL http://www.care-minami.jp/


取材動画