サービス取組み事例紹介
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神奈川県 社会福祉法人 長尾福祉会

民間企業との連携で売上アップ 障害福祉サービス事業所しらはた

企業との連携や、ユニークな事業を取り上げ、他にはない先進的な事業を展開する事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)




ブックオフ事業に取り組む


みんなで作業をするようす

 障害福祉サービス事業所「しらはた」がブックオフ事業に取り組み始めて約2年。それまで、利用者(障害者)の工賃は月額約1000円でしたが、現在は10,000円にアップしました。施設長の勝田憲之さんは「まだ発展途上です」とにこやかに笑いますが、ここに至るまで、職員、利用者(障害者)ともに試行錯誤の連続でした。
 同施設は設立時から牛乳パックを使ったハガキづくりを始め、庭での園芸活動、エコパック作りなどをおこなっていましたが、生産能力の高い障害者たちの入所をきっかけに授産の活動内容を見直すことになりました。その時、タイミングよく持ち上がった話がブックオフコーポレーション株式会社との連携です。勝田さんは民間企業との連携に魅力を感じ「利用者(障害者)の工賃を上げることができるかもしれない」と積極的に取り組むことを決めました。


利用者が帰宅したあとも…


本のコンテナ

 “本を売るならブックオフ”というキャッチフレーズで知られるように、ブックオフの事業は中古の本や雑誌を買い取って販売するのが仕事です。「しらはた」では、お客様の家庭から本を引き取って、金額を査定し、お客様にお金を渡して、本をブックオフコーポレーションに引き渡すまでの業務を請け負っています。仕事場は施設の一室。日当たりのいい部屋で、常時4〜5名の利用者(障害者)と1〜2名の職員が本に囲まれて作業をしています。
 施設での仕事は主に本の仕分けと金額の査定。今でこそスムーズに作業は流れていますが、ここに至るまでには1年以上の時間を要しました。ブックオフのルールでは本の状態によって5段階に分類することになっていますが、「当初は利用者さんが分類した本を、さらにもう一度、利用者さんが帰宅した後に職員が全部点検していました」と勝田さんは振り返ります。ブックオフの分類基準は状態の良し悪しなので、障害のある人でも比較的判断しやすいのが特徴です。それでも利用者(障害者)が5段階をほぼ正確に分類できるようになるまでには、職員による粘り強いレクチャーの繰り返しがあったのです。


「がんばってね」と声をかけられ


オリジナルの査定シート

 金額の査定は、分類後の段階に応じてお客様に渡す金額を電卓で算出する仕事ですが、作業工程の効率化のために査定シートの見直しを行いました。「当初は1枚のシートで全て計算していましたが、利用者(障害者)が見やすく、理解しやすいように文字を大きくし、本の種類別にシートを分けました」と職員の川村さん。その過程では利用者(障害者)の意見を積極的に取り入れたそうです。
 お客様宅へは必ず利用者(障害者)も出かけます。本の引き取り、お金を渡す際のやり取りは職員がサポートしながらできるだけ利用者(障害者)が行います。「買い取りできない場合は処分してもいいですか?」「査定に一週間ほどお時間をいただいてもいいですか?」など、その際のトークは事前に何度も練習します。その成果もあってか、お客様の中には福祉施設がおこなっている事業であることを知り、「がんばってね」と声をかけてくださる人が多いそうです。


入ったお金をいかに大きくするか


施設長の勝田さん

 周囲の人々の応援をありがたく受け止め仕事の活力にしつつも、施設長の勝田さんは決して福祉施設が行う事業だから儲けは二の次でいいとは考えていません。「ブックオフ事業に取り組んでいちばん良かったのは、民間企業の考え方を学べたことです。いかに利益をあげるのかという視点で授産事業を考えられるようになりました」と話します。「入ってきたお金を配分するのではなく、入ってくるお金を大きくするという意識の切り替えが大事。これまでの考え方がいかに甘いかを痛感しましたね」。
 勝田さん自身も改善に取り組みました。チラシのコストダウンです。施設を中心に半径3km内の約20,000件の住宅に“本をお売りください”と記載されたチラシをポスティングします。1日に約700枚、ひと月に換算すると約10,000枚。最初はこれらの印刷を外部の印刷会社に発注していましたが、10万円近くの費用がかかります。「これは計算外。売上が追いつかず、無理がある」と外注を止め、法人の印刷機で刷ることにしました。「当初はカラー印刷で紙も光沢のある上質なものを使っていましたが、コストダウンが優先。思い切って紙質を落とし、紙の大きさも半分にしました」。チラシの質を落としたことでお客様からの電話が減ることを危惧したそうですが、影響はほとんどありませんでした。経費削減で余裕ができた分を、ポスティングに回る人への工賃に上乗せすることができたそうです。


知名度が高く、モチベーションもアップ


作業中の利用者さん

 このように日々工夫を重ねていった結果、ブックオフ事業の売上は右肩上がり。開始時は月1〜2万円だったのに対し、現在は月25万円と驚くような成長ぶりです。
 利用者(障害者)にも変化があったのでしょうか。「モチベーションがアップしていますね」と勝田さん。その理由にブックオフという店(企業)の知名度の高さがあるようです。「自分がよく知っているお店の仕事だとイメージしやすいのでしょうね」。また、本の引き取りからお金を渡すまでの一連の流れがわかる仕事という点もモチベーションアップにつながっているようです。もともと就労継続支援事業B型の利用者(障害者)は「お給料を稼ぎたい」という意思が明確な人が多く、給料が入ることが喜びにつながっているといいます。「カラオケやボーリングに行ったり“次の給料が入ったらCDを買おう”と楽しみにしている人もいますよ」。一日の大半を利用者(障害者)と過ごす職員の川村さんはお給料前の様子を話してくれました。企業との連携は利用者(障害者)の働く意欲にも多いに影響しているようです。


目指すは工賃5万円


利用者のみなさん

 今後の展望はどうでしょうか。「月5万円の工賃を目指したい」と勝田さんはいいます。
 実現までには、土日が休みのために対応できないお客様をどのように取り込むか、引き取り依頼が増加した際の施設側の体制をどうするかなどの課題もありますが、この2年間してきたように、「これからも利用者(障害者)や職員とコミュニケーションをとりながら目標に向かって行くつもり」と力強く話してくれました。


取材日 : 平成20年2月

今回のポイント


@ 施設長の意識改革。民間企業との連携が売上、利益増を重視する考え方につながり、様々な改善策を生み出す源になっている。
A チラシの内制化による経費削減、利用者(障害者)の作業効率アップに向けての工夫など、具体的にコストダウンや作業工程の見直しが図られている。


中小企業診断士 荒木 さと子

施設概要


施設名障害福祉サービス事業所しらはた
設置者名社会福祉法人 長尾福祉会
所在地川崎市宮前区白幡台1-8-1
電話番号044-978-5013
代表者施設長 勝田 憲之
施設種類生活介護事業・就労継続支援事業B型
障害種別知的障害
開所時期平成15年6月1日
利用者数定員35名 契約41名
職員数20名
FAX044-978-5014
連絡担当者施設長 勝田 憲之
事業内容ブックオフ、エコパック、園芸、下請け作業等
平均工賃(B型)月額10,000円
(生活介護)月額2000〜6000円
URLhttp://blogs.yahoo.co.jp/tomnoritomnori

平成21年9月現在

事業所コメント


利用者の方の工賃アップするために、今年もいろいろ“仕掛け”ていきたいと思いますので、アドバイスをお待ちしています。