サービス取組み事例紹介
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神奈川県 社会福祉法人 進和学園

企業と福祉の連携のスタンダードへ しんわルネッサンス

企業との連携や、ユニークな事業を取り上げ、他にはない先進的な事業を展開する事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)




世界のHONDAの部品組立・加工を担う


工場全体のようす

 社会福祉法人進和学園が運営する「しんわルネッサンス」は、2006年3月、神奈川県平塚市の北西部、大山・丹沢を間近に望む閑静な丘陵地に開所された工場です。
 本田技研工業株式会社(以下、ホンダ)の社員であった故・出縄光貴氏の尽力と同社の本田宗一郎最高顧問(当時)や元副社長の西田通弘氏の理解と支持によって、1974年に取引が始まりました。それ以来、自動車部品の組立作業を34年間にわたって続けています。
 当初は、同社浜松製作所の二輪車の仕事からスタートしましたが、現在は、埼玉・鈴鹿・浜松製作所の四輪車の部品組立加工が主な仕事となっています。


「株式会社 研進」が架け橋に


従業員(A型)と利用者(B型)がチームを組む

 進和学園とホンダが取引をする上で、重要な役割を担っているのが「株式会社 研進」です。研進は、ホンダと取引を開始する際、本田技研の「研」と進和学園の「進」から命名され、設立されました。現在、「しんわルネッサンス」内に事務所を置き、出縄貴史社長をはじめ企業実務経験のある社員が進和学園と役割を分担しつつ、一致協力して事業を推進しています。
 研進は、授産事業推進管理を担う営業窓口会社として、ホンダとその部品メーカー約60社と包括的な売買契約を結んでおり、ホンダから受注した仕事に関して、部品メーカーから部品を購入するとともに、進和学園に組立・加工を委託し、その製品をホンダに買い取ってもらいます。
 売買契約に基づく資金繰り、ホンダとの加工賃交渉、運送会社等との運賃・梱包費用交渉・各種費用負担、部品受取以降の在庫・仕掛・輸送中のリスクは研進が負担しています。そのことによって、進和学園は研進と加工賃決済のみを行い、リスク負担を回避できる仕組みになっているのです。


福祉工場と通所授産施設の一体化


利用者と従業員の作業力を示すボード

 「しんわルネッサンス」には、福祉工場(この4月より就労継続支援A型)と通所授産施設(同じく4月より就労継続支援B型・就労移行支援)が併設されています。現行制度では、福祉工場従業員(雇用型)と通所授産利用者(非雇用型)が同一施設内で一緒に作業することは想定していませんが、「しんわルネッサンス」では、バッテリープレート、キャニスター、サブフレーム、ブレーキホースなど、それぞれの組立ラインを福祉工場従業員(雇用型)の検査員1人と通所授産利用者(非雇用型)6〜9人がチームを組んで作業を進めています。
 福祉工場従業員は、部品メーカーからの部品受入・準備・搬入・組立検査、出荷チェックなど主として部品の組立作業前後の判断力を要する検査・管理業務を、また、通所授産利用者は部品組立作業を担当し、それぞれがチームワークを発揮して、はじめて、一つの部品が完成されます。
 チームとして一緒に働くことで、福祉工場従業員にとっては、管理的業務を行なっているという自信やプライド、責任感が生まれ、通所授産利用者にとっては福祉工場従業員と一緒に働くことで、身近な目標ができ、福祉工場の従業員にステップアップする動機付けにつながります。
 単純作業が続いても正確にこなしていくことができる人、判断力を求められる検査・管理業務ができる人、どちらが欠けても部品は完成しません。福祉工場と通所授産施設を一体的に運営することは、従業員と利用者がチームワークを発揮する点、一緒に働くことが双方の成長につながる点を鑑みても、現実的で合理的な方法といえるでしょう。


日本初!! 知的障害者を含めた全員での「ISO9001」を取得


技術顧問の加藤さん

 前述した通り、ホンダとの取引は、故・出縄光貴氏がホンダの社員だったことがきっかけですが、30年以上にわたって取引が続いているのは、進和学園がホンダの社会貢献マインドに甘えることなく、ビジネスパートナーに取引上要求される「価格・品質・納期」の条件に応え続けてきたからに他なりません。
 進和学園では、ホンダの要求レベルに応えられる品質の標準化、作業の確実性を図るために、単純作業が連続しても正確に業務を進めていく知的障害者の特性を活かして、原則「一人一工程」をベースに組立ラインを構成し、「効率」よりも「正確性」を優先した作業体制を取っています。また、山武ハネウェル梶i現 且R武)の藤沢工場長だった加藤義幸氏を研進の技術顧問として迎え入れ、部品の数量過不足・異品混入・誤組等の不具合を防止するための独自の冶工具を開発しています。
 そして、さらに品質管理を徹底させるために、2007年3月には、非雇用型の障害者を含めた全員でISO9001の認証を取得しました。このISO9001の取得は一般企業と同様に製品の品質・工程保証等のQC活動に焦点を当てたもので、障害者も含めた全員での認証は知的障害分野では日本初のケースです。
 「ISOの認証取得への挑戦は、“(ホンダから要求されたわけではなく)少しのサポートがあれば、健常者と同等の生産ができることを証明したい”という内部から声が上がったものです。認証を取得したことで、品質・工程管理に対する意識が一層高まりましたし、
 人が替わっても品質・工程が保たれる体制ができた点が大きい」と「しんわルネッサンス」の久保寺一男所長は笑顔で語ります。
 また、進和学園では、「雇用型」の従業員と「非雇用型」の利用者は、共に働く仲間として捉えて来ました。現行制度では、従業員は「労働者」ですが、「非雇用型」の利用者は「訓練生」であり「労働者」としての権利は保障されていません。出縄貴史社長は「雇用が叶わない福祉的就労に身を置く人たちにも、欧米先進国と同様に労働者としての権利を認めるべきであり、ISO認証を全員で取得した「しんわルネッサンス」の事例が、労働者性の問題を考える際の参考となれば・・」と述べています。


企業に対する発注奨励策を


部品を加工する利用者

 「しんわルネッサンス」の福祉工場の従業員には、原則として最低賃金以上、平均月額171,000円(2007年度実績)の賃金が支払われています。また、通所授産施設の利用者には、平均月額57,000円(2007年度実績)と、全国平均の3倍以上の高い工賃が支払われています。
 このように進和学園は、ホンダの理解と協力を得て、また、ホンダの要求する「価格・品質・納期」の条件に応え続けることで、高い工賃実績を上げてきました。しかしながら、学園全体の作業収入の約85%がホンダとの取引の収入によるもので、両社に30年以上の取引関係があるとはいえ、恒久的に保障されているわけではありません。
 出縄貴史社長は「法人全体として自主生産事業の多角化を推進するとともに、みなし雇用制度や調整金・報奨金の給付、税制を優遇する制度など、企業に対する発注奨励策を充実させるように行政に働きかけていきたい」と話しています。
 ようやく2008年度税制改正で障害者施設に仕事を発注した会社に対する優遇税制が盛り込まれましたが、現行の法定雇用率制度ではホンダが進和学園に仕事を発注しても、雇用率にカウントされず、障害者雇用納付金制度上のメリットもありません。
 進和学園では、2006年に改正障害者雇用促進法で導入された「在宅就業障害者支援制度」を活用し、研進が「在宅就業支援団体」となって発注事業者であるホンダに対して、特例調整金を支給できるように行政と協議を重ね、4月1日付で認められ神奈川県で登録第1号(全国では18番目)となりました。
 また、欧米で実施されているように、企業が就労移行支援事業や就労継続支援事業を実施する事業者に、仕事を発注した場合、それを一定の基準でその企業の雇用率にカウントできるいわゆる「みなし雇用制度」が実現すれば、多くの企業が発注に前向きになるでしょうし、本気で「障害者の工賃を引き上げたい」と考える施設にとっては、進和学園のように発注事業者の要求期待に応えていくことで「良質な仕事」を確保するチャンスが増えるはずです。
 最近は、進和学園と研進の試みが注目を集め、県内外から取材や視察を受ける機会が増えてきました。企業と福祉施設をつなぐ好事例として、研進モデルがスタンダードとして知られるようになれば、多くの企業や施設からも制度の見直しの声が上がり、また、「在宅就業障害者支援制度」のような調整金・報奨金制度が活用されるケースがより増え、それに伴って障害者の就労の場も増えていくに違いありません。


取材日 : 平成20年3月

今回のポイント


@ 授産事業推進管理を担う「研進」という会社をつくり、ホンダと30年以上もの長期にわたる取引を続けている。(企業と福祉施設をつなぐ先進的で現実的な手法を示している。)
A 独自の冶工具を開発する等、数量過不足・異品混入・誤組等の不具合を防止するためのQC活動を実践し、一般事業者にひけを取らない品質管理を誇っており、障害者を含めた全員でISO9001認証を取得している。


経営コンサルタント 石田 和之

施設概要


施設名しんわルネッサンス
設置者名社会福祉法人 進和学園
所在地神奈川県平塚市上吉沢1520-1
電話番号0463-58-5414
代表者所長 久保寺 一男 氏
施設種類就労継続支援A型 定員30名
就労継続支援B型 定員65名
就労移行支援 定員15名
障害種別知的障害
開所時期平成18年3月1日
平成20年4月1日 新体系移行
利用者数A型27名  B型67名
就労移行支援 17名
        計111名
職員数A型8名  B型15名
就労移行支援 5名
       計 28名
FAX0463-58-5329
連絡担当者出縄 貴史 氏
(褐、進 代表取締役)
事業内容自動車部品組立 、清掃業務、しいたけ栽培、植樹用ポット苗作り、封入梱包
平均工賃(A型)月額167,788円
(B型・移行支援)月額 55,076円
URLhttp://www.shinwa-gakuen.or.jp/

平成21年9月現在

事業所コメント


「福祉的就労」の底上げを通じて、付加価値の高い「働く場」を創出して参りたいと思います。