サービス取組み事例紹介
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大分県 社会福祉法人シンフォニー

一般雇用への明確な道筋で就労を支援するシンフォニー

企業との連携や、ユニークな事業を取り上げ、他にはない先進的な事業を展開する事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)




緑と白のコントラストが印象的な「ネバーランド県庁店」


スタッフのみなさんと村上理事長  2007年6月現在、大分県内の障害者雇用率は2.16%で、全国平均の1.55%を大きく上回り、全国で2番目に高い水準にあります。その一方で、障害別にみると身体障害1.83%という高い水準にあるのに対して、知的障害は0.31%に過ぎません。
 こうした背景もあって、県が進める知的障害者の就労支援策の一環で、大分県庁の別館9階に今年4月オープンした喫茶レストランが「ネバーランド県庁店」です。
 現在、4名の障害者(利用者)が5名の職員とともに働くこのお店は、ファサードの緑と白のコントラストがとても印象的で、店内は明るく清潔感にあふれています。 「ネバーランド県庁店」には、昼時ともなると県庁職員を中心にたくさんのお客さまが詰めかけます。取材に訪れた日も、57席あるテーブル席とカウンター席がほぼ満席の状態で、レジには何度も行列ができるほどでした。


行列ができても仕事がスムーズに流れるために


立て札とコースター  店内に入り、最初に目がついたのは、レジに行列ができるものの、料理の提供までお客さまにストレスを与えるほど待たせずに、スムーズに流れていく点です。この秘密は、「ネバーランド県庁店」のオペレーションにあり、利用者と職員が連携をとりながら無理なく接客応対できるように工夫がなされています。
 具体的には、まず、お客さまがレジ(主に職員が担当)で注文し支払いを済ませると番号の付いた立て札が手渡されます。すると、厨房と面したカウンターには、注文票と立て札と同じ番号のコースターがセットされます。出来上がった料理はそのトレーに載せられ、係(主に利用者)が立て札の番号を目当てに、注文品を待つお客さまのテーブルに運ぶ仕組みになっています。
 このオペレーションの工夫によって、注文ミスを限りなくゼロに近くし、また、障害があっても無理なくホールを担当することを可能としたのです。


整理整頓や清掃が行き届いた店内


整理整頓された食器類  「ネバーランド県庁店」では、いわゆる5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を意識して、仕事が進められています。床は天井の蛍光灯が映るくらいにピカピカに磨かれゴミ一つ落ちていない状態で、レジやカウンター周りも、どこに何が置いてあるか一目でわかるように整理整頓されています。また、食器類が引き上げられてくると、洗い場にまわす前にきれいに仕分けされます(写真)。
 これなら洗い場の作業効率も上がるはずです。
 ここでは、当たり前のことが当たり前にできていて、一つひとつの仕事にムダがないのです。仕事がスムーズに流れていく秘訣は、オペレーションだけではなく、こうした点にもありそうです。 「ネバーランド県庁店」は、基本を徹底すればうまくいくという接客サービス業のお手本を示してくれています。


重箱で出来立てのお弁当をお届けします


重箱につめられたお弁当  もちろん、売上を伸ばす工夫も忘れていません。県庁舎内には競合するレストランが少ない反面、12時15分から午後1時の45分間に来客が集中するため、店内での食事提供だけでは売上の上限が決まってしまいます。そこで、「ネバーランド県庁店」では、可愛らしいおしゃれな重箱(ミニ丸250円、ミニ角350円、角400円)を用意して、県庁舎の各フロアにお弁当の出前サービスも行っています。お弁当の数は、県庁の各課で取りまとめられ、午前10時までに電話で注文が入ります。その注文数を調理、盛り付けを終えた後に、利用者がワゴンに乗せて各課に運ぶようにしています。この日も38個のお弁当の注文が入りましたが、この提供スタイルであれば、出来立てのあたたかいお弁当を効率よくお客さまに届けることができるわけです。


一般就労に向けたシンプルでわかりやすい道筋


なかお店で接客の練習をする男性  「ネバーランド県庁店」を運営する社会福祉法人シンフォニー(村上和子理事長)は、「ネバーランド県庁店」の他にも就労継続支援A型の喫茶・レストランを街の中で3店舗展開しています。
 「施設で働いていると、どうしても自分たちのペースになり、笑顔や挨拶が少なくなりがちです。でも、街の中に事業所を構えてお客さまの応対をしていると、自然と利用者も職員も意識が変わり、笑顔や挨拶が多くなります」(村上理事長)という言葉の通り、単に利用者の働く場所を確保するのではなく、障害者が街の中で働くことを強く意識しています。地域住民の方々に障害について理解してもらうためには、福祉側が積極的に街に出て、仕事を通じて一般の人々が障害のある人と交流する場所や機会を増やすことが大切だと考えているからです。
 ただ、そうは言っても知的障害のある利用者たちが、接客サービス業に従事するのは容易なことではありません。そこで、社会福祉法人シンフォニーは、デイサービスセンターと合築された多機能型事業所「コンチェルト」内の「なかお店」をはじめとする3ヵ所の就労継続支援B型の事業所で、まず利用者を相手に接客やレジの使い方などを習得する場を用意しています。
 「コンチェルト」では、昼食時間になるとデイサービスの一室が「昼食喫茶なかお店」に衣替えされ、先に紹介した「ネバーランド」と同様のオペレーションで昼食が提供されます。「コンチェルト」の利用者たちは、単に食事を取るのではなく、レジに並び、自分で食べたいものを注文し、自分で料金を払います。つまり、この仕組みが、「コンチェルト」の利用者にとっては街の中で外食することを想定した生活訓練になり、「なかお店」の利用者にとっては接客サービスの訓練となるわけです。


一般就労に向けてトライアル雇用へ


なかお店でレジの練習をする女性  「(トライアル雇用された利用者に)県の職員の方がお祝いのプレゼントをしてくれた時は、本当にその気持ちが嬉しかったですね」と、笑顔で語る村上理事長。今年に入り、「ネバーランド県庁店」で働いていた利用者が、あるレストランチェーンにおいて、トライアル雇用で採用されたそうです。
 このように社会福祉法人シンフォニーでは、就労継続支援B型の昼食喫茶から就労継続支援A型の「ネバーランド」を経て、レストランなどでトライアル雇用される、という一般就労までのシンプルでわかりやすいステップアップの道筋が用意されています。利用者にとってみれば、目標が明確になり、就労意欲の向上につながっているようです。また、反対に、もしも、どこかでつまづいたり、年を重ねたとしても「いつでも戻ってこられるように」(村上理事長)という意味合いもあるようです。
 今回、取材させていただいた社会福祉法人シンフォニーのシンプルでわかりやすい、かつ、知恵と工夫に富んだ小規模多拠点展開のしくみは、他の施設でも取り入れやすく水平展開しやすいノウハウだと感じます。チェーンストアが約30年かけて、日本全国に広まり、街でチェーンストアを見かけるのが当たり前になったように、このノウハウが全国に広まり、街で働く障害者を見かけるのが当たり前になる日がくるのもそう遠くはないことかもしれません。

取材日 : 平成20年8月

今回のポイント


@ 挨拶・クリンリネス・整理整頓など、基本を徹底している
A 利用者の方が無理なく接客サービスできるように、オペレーションが工夫されている
B 喫茶・レストラン事業とメンテナンス事業のいずれも、就労継続支援B型から就労継続支援A型を経て一般就労までステップアップしていくためのわかりやすい道筋が用意されている

経営コンサルタント 石田 和之

施設概要


事業所名 ネバーランド県庁店
運営者名 社会福祉法人シンフォニー
所在地 大分市大手町3丁目1番1号
電話番号 097-586-5577(本部)
代表者 理事長 村上 和子 氏
施設種類 就労継続支援A型
障害種別 知的障害・精神障害
開所時期 39546
従業員数 ユニット支援実施。当ユニットは4名。(ネバーランド全利用者18名)
職員数 正規1名、パート3名(ネバーランド全体:正規7名、パート13名)
FAX 097-586-5578(本部)
連絡担当者 理事長 村上 和子 氏
事業内容 喫茶・レストラン
給料 時給 〜631円
URL http://www9.ocn.ne.jp/~never55

平成21年12月現在

事業所コメント


オープンして早2年目をむかえますが、おかげさまでたくさんのお客様にご来店頂き、従業員の就労への意欲につながっています。
従業員、職員一同、皆様のご来店を心よりお待ち申し上げております。