サービス取組み事例紹介
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北海道 特定非営利活動法人札幌チャレンジド

企業の信頼を得て進化を続けるITサービス事業所 札幌チャレンジド

企業との連携や、ユニークな事業を取り上げ、他にはない先進的な事業を展開する事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)




パソコンスキルの修得が障害者の自立を支援


パソコン講習会の様子
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 「札幌チャレンジド」は自立を目指す障害者たちがパソコンスキルを身につけることで、社会参加と就労が進むよう支援しています。初代代表の森田麻美さんと北海道難病連の職員だった現代表の杉山逸子さんが、神戸にあるプロップステーション(竹中ナミ代表)の取組みを知り、「札幌でも同様のことをやってみよう」と同志を募ってスタートしたのがきっかけです。
 創業メンバーが会を発足させた2000年当時、ITが急速に普及しはじめていたものの、「札幌チャレンジド」には、事務所もなければパソコンもない状態でした。そんな中、創業メンバーは、志ひとつで大学や企業の門を叩き、会場やパソコンを提供してもらいながら、障害者を対象にコツコツとパソコン講習会を開催してきたそうです。そして、このパソコン講習会が現在の「札幌チャレンジド」の礎を築くことにつながっています。

パソコンスキルを訓練している障害者
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 現在、「札幌チャレンジド」は札幌駅近くに拠点を構え、就労継続支援A型の事業者として、22名の障害者(身体19名、知的1名、精神2名)を雇用。朝10時から17時まで、技術を習得した利用者がパソコンを用いて企業や自治体から受注した仕事に取り組んでいます。
 また、通所の利用者だけではなく、在宅就労を希望する障害者(非雇用)の支援も行なっています。在宅就労を希望するかたは、「札幌チャレンジド」の登録システムに「パソコンで文字入力ができる」「エクセル表にデータを入力することができる」「ホームページの作成ができる」「CAD図面の作成ができる」といった自分のパソコンスキルを登録しています。「札幌チャレンジド」の職員は、登録者ひとりひとりとの面接を通じてスキルや実力を把握しており、仕事の発生の都度、その仕事を担当したいという人をメーリングリストや電話で募り、その中から適切なメンバーを選定し、仕事の品質や納期を管理しています。
 さらに、創業当時から実施しているパソコン講習会は現在も続けられており、2008年度は年間3000名が受講する規模にまで発展。かつては障害のない人に講習会の講師をお願いしていましたが、現在は就労継続支援A型の利用者を筆頭に、すべて障害者が担当しているそうです。障害者にパソコンスキルを教えるには、その障害によって対応方法が異なります。例えば、視覚障害者の場合、音声読み上げソフトはもちろん、弱視であれば、その人が一番読みやすい文字の大きさや画面の色に合わせる必要があります。一般のスクールでは受講者側がそこまでの対応を要求しにくいですが、障害者が講師になることで、気兼ねなく要望を伝えることができ、受講者にも好評のようです。
 その他、「札幌チャレンジド」は、札幌市など自治体からもコンスタントに事業を受託しており、法人全体の事業規模は06年度4,027万円、07年度5,531万円、08年度5,929万円と、着実に成長を続けています。


一人ひとりのやる気と能力を引き出す環境づくり


事務局長の飯村富士雄氏
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 札幌チャレンジドでは、当初から利用者のことを「神からチャレンジすべき課題や才能を与えられた人」という意味を込めて「チャレンジド」と呼んでいます。
 「最初は不安を抱えた表情の方もいらっしゃいます。でも、ここで働きはじめ、仕事を任せていくうちに目がキラキラしてきます。この目の輝きの変化を見るのが何よりの楽しみです」と語るのは、札幌チャレンジドの運営委員の一人として、彼らの仕事を支える佐藤美貴さんです。
 佐藤さんは、チャレンジドの一人ひとりが持っている力を引き出せる環境づくりが、自身の重要な役割だと考えています。具体的には、彼らの表情や仕事に取り組む姿勢にいつも目配りし、余計なストレスがかかっていないかを見極め、声をかけ、あるいは必要に応じて、一人ひとりとじっくりと話し合う機会をもつのだそうです。

運営委員の佐藤美貴氏
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 現在、「札幌チャレンジド」が企業や自治体から受注する仕事は、パソコン講習会の講師、ホームページ製作・更新業務、字幕製作、データベース構築、写真加工、ウェブモニタリング業務、キーワード付与業務など多岐に渡っており、チャレンジドにとって、豊富な選択肢があり、より自分の特性やスキルにあった仕事を選べるようになっています。
 また、ウェブの監視のように時給制のものもあれば、キーワード付与業務のように「1ワードに付き、いくら」といった出来高制のものもあります。さらに、経験を重ねていけば、メンバーと役割を分担しながらホームページを作成するなどプロジェクトのリーダーとして仕事を切り盛りする機会も用意しています。
 ですから、チャレンジドは、スキルを身につけ、より多くの仕事量をこなせば、収入を上げることができます。また、業務の知識や経験をもった準職員が補助としてサポートにつくので、安心して新しい仕事に挑戦することもできます。
 このように、札幌チャレンジドでは、チャレンジド一人ひとりのメンタル面に配慮するとともに、スキルを高め、収入を上げる機会を用意することで、彼らのやる気と能力を最大限に引き出しているのです。
 就労継続支援サービスA型の利用者の平均賃金は月額43,700円ですが、月額工賃10万円を超える利用者も存在します。とりわけ、パソコン講習会の講師を担当する利用者は、月額15〜16万円の収入を得ているそうです。


受注の秘訣は「仕事をやってみせること」


パソコンに向かう利用者
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 これまで行政や企業や大学に対し積極的な提案活動を行ない、仕事の創造に力点を置いて「札幌チャレンジド」は活動してきました。マスコミに数多く取り上げられたこともあって、最近では知名度が高まり、新規のお客様から問い合わせが入ることも珍しくありません。また、既存のクライアントからリピートやご紹介で仕事を受注することが多く、ITの利便性から、北海道の企業ばかりではなく、東京の企業がクライアントになるケースも増えているそうです。
 「札幌チャレンジド」が、こうした問合せや紹介案件を確実にゲットするために心がけている点は、実際に「仕事をやって見せること」だそうです。「新規のクライアントにとっては、“実力が未知数“ということもあると思いますが、軽作業的な業務の依頼をイメージしがち」(佐藤美貴さん)であるため、依頼をそのまま受けるだけでは仕事の広がりがありません。そうではなく、クライアントのニーズをしっかりヒアリングした上で、依頼業務の一部を先行してやってみせ、仕事のスピードや出来栄えを実際に見てもらうようにします。こうすれば複数の発注先を検討し迷っているクライアントでも、納得した上で「札幌チャレンジド」を選んでくれるようになります。

ブースで秘匿性の高い仕事を担当する利用者
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 現在、定期的・継続的な仕事については、主に就労継続支援サービスの利用者(通所の障害者)が担当し、大量のアンケート入力やテープ起こしなど、単発的な仕事については、主に在宅就労の障害者が担当することで仕事量の増減に対応しています。また、チャレンジドのリーダーとその分野で業務経験のある準職員が一緒になって品質と納期の管理を行なうことで、クライアントの信頼に応えています。






ITを活用した障害者就労支援の可能性


「やさしいブラウザ協賛賞」の盾
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 「インターネット白書2008」(インプレスR&D発行)によると、日本のインターネット人口は8227万人を突破、ブロードバンド世帯普及率も57.1%と、6割に迫る勢いで、自宅でインターネットを利用するのが当たり前という社会になりつつあります。社会のブロードバンド環境が整ったことで、ネットショッピングなどeコマースを筆頭にしたネットビジネスも着実に成長を続けています。
 「札幌チャレンジド」においても、かつては、データ入力などの簡単な作業の依頼が多かったそうですが、最近は、ネットショップ向け画像加工、ネット上で不適切な書き込みを監視する業務などの依頼が増えているそうです。


手話と筆談で障害者を訓練するスタッフ
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 「札幌チャレンジド」は、こうしたIT・ネット業界の市場成長の追い風に乗ると共に、利用者のパソコンスキルを磨き続けて仕事の領域を広げること、また、ITの利便性を活かし、東京まで商圏を広げたり、在宅障害者の就労支援にも成功しています。さらには、視覚障害者など複数の障害者がアクセシビリティのチェックを行ない、ユニバーサルデザインに対応したホームページを製作するなど障害者の強みを活かした仕事も増えてきているようです。
 今後、ウェブのデザイナーやプログラマーなど様々な専門職員がサポートにつくことで、さらに仕事の領域を広げたり、重度障害者でも操作できるようなツールを用意することで、より重度の障害者の社会参加を支援するなど、事業の発展が期待できます。ITを活用した障害者の就労支援に、大きな可能性を感じさせる事例でした。


取材日 : 平成21年6月

今回のポイント


@ パソコンスキルという武器を明確にし、講習や業務を通じて利用者のスキルを磨き続けることで、仕事の領域を広げている
A 仕事の一部をやってみせ、実際の仕事のスピードや出来栄えをみてもらうことで、企業の信頼を獲得し、受注につなげている
B 障害特性に関係なく、利用者のメンタル面に配慮することで、余計なストレスを排除し、高いモチベーションや生産性の維持に努めている


経営コンサルタント 石田 和之

施設概要


施設名 札幌チャレンジド
設置者名 特定非営利活動法人札幌チャレンジド
所在地 札幌市中央区北5条西6丁目
札通ビル8F
電話番号 011-261-0074
代表者 杉山 逸子 氏
施設種別 就労継続支援A型
障害種別 身体、知的、精神
開所時期 平成8年2月
利用者数 22名
職員数 常勤5名
FAX 011-219-1811
連絡担当者 飯村 富士雄 氏
事業内容 パソコン講習講師、ホームページ製作、写真加工、ウェブ監視等
平均工賃 43,700円